223 豊田市駅東口まちなか広場(とよしば)(日本)

223 豊田市駅東口まちなか広場(とよしば)

223 豊田市駅東口まちなか広場(とよしば)
223 豊田市駅東口まちなか広場(とよしば)
223 豊田市駅東口まちなか広場(とよしば)

223 豊田市駅東口まちなか広場(とよしば)
223 豊田市駅東口まちなか広場(とよしば)
223 豊田市駅東口まちなか広場(とよしば)

ストーリー:

 名鉄豊田市駅の目の前に豊田市駅東口まちなか広場が2019年9月にオープンした。その広場はToyota Creative Base Areaの頭文字をとった「toyocba」から“とよしば”との愛称がつけられたが、その名称は、豊田市のみんなの芝生というメッセージをも発信していると思われる。芝生広場の面積は560平方メートルと決して広くはないが、そこはまさに芝生しかないためにその使い方は無限の可能性を有している。
 この広場には芝生しかないと述べたが、正確には隣接して、カフェ、サロン等の収益事業とスタジオ、ラボ、アトリエといった公益事業が運営されている建物が設置されている。芝生は、天然芝を使用しており、維持管理は大変である。しかし、人工芝ではなくて天然芝にこだわりたいと豊田市役所の管理担当の方は主張する。それは、天然芝には人工芝にはない自然がもたらす温かみがあるからだ。
 都心部の駅前広場という一等地にこのような贅沢な空間がつくられた背景には、豊田市が2025年に多様な人々を集わせ、交わらせ、その結果、アイデアやまちに対する愛着が育まれるような場をここに整備することを計画していることがある。
 「とよしば」はそれに先立つ取り組みとして、将来、ここに人々が滞留して賑わいを創出してくれるような人材を育て、また豊田市の魅力を発信する場所、そして発信する方法論を学ぶ場所として機能することが期待されている。それは、シビックプライドを醸成させるような機会を提供する場所であり、本格的にこの地に「東口まちなか広場」が整備するうえでのウォーム・アップ的な暫定的な事業であり、事業の進捗過程を三段跳びで表現すれば、ホップ・ステップ・ジャンプのまさに「ホップ」に該当する事業であるといえよう。
 とよしばは2023年3月31日までの3年7か月間の実証実験として位置づけられており、終日利用ができる(占有利用は7時から23時で、音の出る行為は21時まで)。芝生広場は、子供達や親子連れがピクニックで利用できるようになっており、これはそれによって滞在時間、滞在機会が増えることで広場に愛着をもってもらい、それへの親しみを増すことを意図している。さらには、朝にはここで体操やヨガなどの健康増進に繋がるようなイベントも行われている。
 豊田市のまちなかの新たなイメージがここから新たにつくられるのではないか、と期待させる取り組みである。

キーワード:

ランドスケープ,公共広場,公共空間,公園

豊田市駅東口まちなか広場(とよしば)の基本情報:

  • 国/地域:日本
  • 州/県:愛知県
  • 市町村:豊田市
  • 事業主体:豊田市、有限会社ゾープランニング(豊田市からの公募により選定)
  • 事業主体の分類:自治体 民間
  • デザイナー、プランナー:株式会社エイバンバ(設計)
  • 開業年:2019

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

 「とよしば」は名鉄の豊田市駅のすぐそばにある広場である。交差点に面した芝生広場560平方メートルと決して広くはなく、簡易建築と芝生の広場から構成されている。
 筆者は、公共空間の維持管理を民間に委託するということに大いに違和感を覚えている。その空間は何をもって公共性を担保しているのか、そういう意識を持ちつつ、とよしばを訪れ、豊田市役所の方々に取材をし、とよしばは単なる公共空間の民間委託事業とは違うことを知ることになった。
 3年7か月間の暫定利用であるとよしばは、単に公共空間に集客を図るために民間と協働している訳ではない。そこでは、公共空間というフィールドに公共的な価値を生み出し、まちの魅力を高める人材育成の場として位置づけられている。ここの事業者は、事業年度ごとに評価会議によって事業が評価されるのだが、その項目は「世代、国籍を超えた多様な人々の集いと交流の場となること」、「豊田ならではの『おもてなし』を体現する憩いの場となること」、「市民の『やりたい』が生まれる自己実現の場となること」、「街への愛着や新たな活動の担い手が育まれる場になること」が評価項目として考えられているところが、まさにこのとよしばが公共性を担保している点であろう。行政が主体となり、市民が消費者のように行政サービスに期待するような時代はもう過去のものとなりつつある。その時代の転換期において、豊田市は公共空間を活用して、市民として積極的にまちづくりに関わる意識、まちへの責任感を生み出す愛情、そして実践的な経験を提供しているのだ。
 そして、この公共空間を利用する人達は、受動的にこの空間に関わるのではなく、能動的に関わることが要求される。いわば、公共空間の利用の仕方を鍛えさせるような広場なのである。このような試みが斬新に映るのは、これまで「公共性」、「公共空間」といった概念をしっかりと現在の日本人が理解していないことの裏返しかもしれない。そして、その問題点に真正面から取り組んだ豊田市のとよしばのプロジェクトには潔さを感じる。
 豊田市の担当者は私の取材に対して、運営業者に運営を依頼する際、市が向かうベクトルと同じ考えを有していないと難しいであろうとしていたが、このような経験を積み重ねることで、行政と市民の意識も徐々に近接し、お互いが豊田市の建設的な将来像を議論できるような日が来るかもしれない。とよしばは行政と民間のコミュニケーション・チャンネルの役割を担っているのだ。豊田市の将来の大きな可能性を期待させるような事業であると捉えられる。

【参考資料】
豊田市の報道資料
https://www.city.toyota.aichi.jp/pressrelease/1033148/1033163.html
豊田市役所職員への取材

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