080 富山グランドプラザ (日本)

080 富山グランドプラザ

080 富山グランドプラザ
080 富山グランドプラザ
080 富山グランドプラザ

080 富山グランドプラザ
080 富山グランドプラザ
080 富山グランドプラザ

ストーリー:

 グランドプラザは、富山市の中心市街地である総曲輪にある屋根付きの公共広場。富山市が空洞化しつつあった中心市街地に人が集い、賑わいを取り戻すことを意図して、2007年にオープンさせた南北65メートル、東西21メートル、天井高19メートルの広場である。総曲輪通りと平和通りに挟まれており、富山市は天候が悪い日が多いので、天井はガラス屋根とした。
 それまでの富山市の中心市街地には、イベントが開催できたり、ちょっとした休息や待ち合わせに使えたりする広場が不足していた。グランドプラザは、そのようなニーズに対応するとともに、都心へ訪れる人を増加することも意図した。
 その整備にあたっては隣接する「総曲輪通り南地区市街地再開発事業」、「西町・総曲輪地区市街地再開発事業(立体駐車場)」と一体的に行い、既存の市道(幅約4.5メートル)に加え、両街区内にあった市道の付け替えや、市街地再開発事業によるセットバックなどで広場空間を創出した。
 イベント会場として多様な使い方ができる設備が多く設置されている。昇降式舞台は6メートル×6メートルの広さで、約1メートルまで自由な高さを設定することができ、ステージとしての使い勝手が優れている。また、約3.5メートル×6メートルの大型ビジョンも設置されている。さらに直径約2.5メートルの可動式花壇があり、これはホーバークラフトの原理で広場の中を簡単に移動させることができる。
 グランドプラザでは年間約100以上の各種イベントが開催されている。特にエコリンクという、フェンスを建てて、樹脂パネルの上をスケートリンクのように遊べるようなイベントは富山の冬の風物詩になっている。その稼働利用状況は初年度こそ、それほど高くはなかったが、2011年以降は休日ではほぼ100%、平日でも80%前後となっている。
 事業費は約15.2億円。そのうちの約8.9億円はまちづくり交付金でまかなった。運営主体はオープンから2010年3月までは富山市で、2010年4月からは指定管理者の「まちづくりとやま」が運営をしている。
 グランドプラザは日本建築家協会優秀建築選2008、平成21年度都市景観大賞、第七回日本都市計画家協会賞、第13回公共建築賞など様々な賞を授賞している。

キーワード:

広場,公共空間

富山グランドプラザ の基本情報:

  • 国/地域:日本
  • 州/県:富山県
  • 市町村:富山市
  • 事業主体:富山市、株式会社まちづくりとやま
  • 事業主体の分類:自治体 
  • デザイナー、プランナー:日本設計
  • 開業年:2007年

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

 日本の都市は欧州の都市と違って、広場がないとよく指摘される。しかし、なければ創ればいいだけである。創れば人も使うであろう、という発想でつくったのだろうと思われるのがグランドプラザである。そして、創れない理由があれば、それを取り払えばいいだけであるという前向きな姿勢でそれは具体化された。
 富山市は、グランドプラザをつくるために広場条例(富山市まちなか賑わい広場条例)を策定した。グランドプラザには富山市の狭い市道が通っていた。道路だとなかなか広場としての使い勝手はよくない。そこで、それを廃道にしたのだが、その空間の管理者を誰にするかなど新たに規定を設けなくてはいけなかったからだ。そして、道路交通法の規制を受けなくてもよくなったので道路使用許可申請などはいらなくなる。道路ではないので、道路法から解放されたことが、その空間の多様な活用を可能とさせているのだ。広場であるが、実は車が入れない訳ではない。道路交通法が適用される訳ではないが、車は通ることはできる。しかし、そこらへんは、車止めとして花壇を設置するなどして、運用で自動車の通行を防止している。
 都市にプラスのものはどんどんつくってしまおう、という森市長の柔軟でいて創造的な考え方が見事に反映したプロジェクトである。開業当初は、街中に突然、広場ができても、人々は戸惑ってどうやって使えばいいかが分からなかった。そこで、市役所の職員がバンド演奏をして、ここは何かやるべきところであることを人々に知らしめた。最初の市役所の職員のバンド演奏でサックスを演奏したのは市長であった。『都市の鍼治療』を発案したクリチバのレルネル市長を彷彿させるエピソードである。
 市民も徐々にこの広場空間の使い方を学び始め、現在まで、ワールドカップのパブリックビューイング、まちなかお絵かきプロジェクト、カジュアルワイン会、高校生ダンスイベント、結婚式などが行われている。
 グランドプラザが出来る前の2006年には路面電車の利用者は一日9779人であったが、出来た後の2011年には11476人へと増加している。また、都心部では2016年の2月の速報値だと、昭和30年代以来はじめて居住人口が増加した。
 広場のない日本の都市に、新たな広場空間のプロトタイプともなり得る、素場らしい「都市の鍼治療」であると同時に、いわゆる役所的なイメージとは正反対の創造的なプロジェクトである。
(取材:富山市都市整備部)

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