049 ヒンター・デム・ツォールの壁画(ドイツ連邦共和国)

049 ヒンター・デム・ツォールの壁画

049 ヒンター・デム・ツォールの壁画
049 ヒンター・デム・ツォールの壁画
049 ヒンター・デム・ツォールの壁画

049 ヒンター・デム・ツォールの壁画
049 ヒンター・デム・ツォールの壁画
049 ヒンター・デム・ツォールの壁画

ストーリー:

 アッシャースレーベンという都市がドイツのザクセン・アンハルト州にある。ここは人口が3万2千人弱の中都市である。1990年には3万3700人はいた人口が、2000年には2万7千人まで減少してしまった自治体である(最近では多少、増加傾向にある)。
 この町は、人口減少に伴い、建物などの空き家が増えるようになった。そして、環状道路沿いの建物が壊されて駐車場に置き換わった場所が増えたのだが、これらを道路から見られないように巨大な看板で視界を遮るようにしたのである。
 これらの看板は、6.5メートルの高さもある。ちょっとポップな絵が描かれており、お洒落である。家が壊されて駐車場になることで、街並みの連続性が視界的に遮断されてしまうことをこれらの看板は回避している。また、家のファサードの看板も立てられている。一見すると、家のような印象を与える。特に自動車で移動している際に、それらがただの看板であるとは分かりにくいであろう。
 看板は家ではないので、用途面という観点からは連続性は途絶えてしまうが、景観面では少なくともスカイラインの連続性は確保できる。それが駐車場であるか看板であるかでは大きな差がある。
 このプロジェクトは2010年からは、IBAザクセン・アンハルト事業の一環として継続されて行われるようになった。そして、円滑にこれらの事業が進められるように、アッシャースレーベン市が積極的に空き家となった土地、もしくは倒壊される家の土地を購入するようにした。これらの壁絵は200メートルの距離の長さがあり、4つの分節から構成されている。夜には照明もなされ、空き地があることが分かりにくいようになっている。

キーワード:

ランドスケープ,景観,縮小都市,IBAザクセン・アンハルト

ヒンター・デム・ツォールの壁画の基本情報:

  • 国/地域:ドイツ連邦共和国
  • 州/県:ザクセン・アンハルト州(Sachsen Anhalt)
  • 市町村:アッシャースレーベン市
  • 事業主体:アッシャースレーベン市
  • 事業主体の分類:自治体 その他
  • デザイナー、プランナー:Christopher Winter, Andree Volkmann 等
  • 開業年:2003

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

 街並みの景観的な連続性に関しては、ドイツだけでなくアメリカなどでも強く意識していることである。自動車から見る時の景観のリズムといった観点から都市空間のデザインを考える。これは、古くはマサチューセッツ工科大学の都市デザインの教員であったケビン・リンチがカリフォルニア大学バークレイ校の環境デザインの教員であったダン・アップルヤードとともに「自動車からの景観」といった内容の論文を書いたことで広く知られることになる。都市景観において、空間のリズムを考えることが重要であるという指摘である。
 ドイツにおいても都市デザインの考えがしっかりしているので、アメリカよりもさらに強く景観の継続性を意識しているのであろう。そうでなければ、縮小している中小都市にこんな巨大な看板を設置しようなどとは考えないと思われるからである。
 この事業は、都市が縮小することのダメージを安上がりに軽減している優れた施策であると考えられる。少年がブランコをしている女の子のパンツを覗き込んでいる図柄は、ちょっと理解しにくいが、全般的には興味深い試みであり、日本でもシャッター商店街などに適応できそうだ。テナント等が入らないと中心市街地でも駐車場に転用する地主が多いが、それによって櫛が抜けるように周辺にもマイナス効果を及ぼす。それらに対応するためにも、このアッシャースレーベンの試みは興味深い。また、これらの沿道は夜にはライトアップしている。

類似事例:

286 ポティの壁画
305 遷都1000年記念モザイク壁画
・小布施街並みづくり、小布施町(長野県)
・デッサウ赤い道、デッサウ(ザクセン・アンハルト州、ドイツ)
・家守の家、ライプチッヒ(ザクセン州、ドイツ)