ビルバオ・グッゲンハイム美術館

ビルバオ・グッゲンハイム美術館1

ビルバオ・グッゲンハイム美術館2
ビルバオ・グッゲンハイム美術館3
ビルバオ・グッゲンハイム美術館4
ビルバオ・グッゲンハイム美術館5
ビルバオ・グッゲンハイム美術館6
ビルバオ・グッゲンハイム美術館7


キーワード:

アイデンティティ ,ウォーターフロント ,スペイン ,都市観光 ,鍼レベル 大 ,集客施設

鍼レベル:

ストーリー:

 スペインは北東部に位置するバスク州の首都ともいえるビルバオ。スペイン第4の都市である。20世紀初頭から鉄鋼業や造船で栄えるも、1970年代以降、これら産業が衰退すると同時に人口も縮小しはじめる。そして、工業都市からサービス産業へと産業構造の大転換を図ることになり、そのために大きく都市開発を推進するのだが、その起爆剤となったのがビルバオ・グッゲンハイム美術館であった。
 ビルバオ・グッゲンハイム美術館は、アメリカのニューヨークにあるグッゲンハイム美術館の分館のひとつであり、そこでは内外の作家による常設展示および特別展示が行われている。しかし、この美術館は、その本来的な美術館としての役割よりも、都市アイデンティティを発現させるメディアとしての建築物としての役割を大きく担っており、そして、それ故にビルバオを再生させるトリガーとなったのである。
 ビルバオ・グッゲンハイム美術館はバスク州政府によって構想された。1991年にその提案をグッゲンハイム財団にし、世界分館構想を持っていた同財団が承諾し、そしてそれはフランク・ゲーリーが設計することになった。1997年秋に落成式が行われたが、その建物は時代の最先端の技術を利用して設計されたゲーリーらしい曲線が多用されたとらえ所のない造形のもので、開館と同時に20世紀の建築の傑作として評価されることになる。そして、それは多くの観光客を集める人気観光地となり、最初の3年間で予想をはるかに上回る400万人を集客し、その経済効果は約1.7億ユーロにも及ぶとされている。建設費は1億ユーロ(約8900万ドル)にも及ばなかったことから、その費用対効果は相当、大きなものがあったと言えるであろう。初年度から集客を数え、現在でも年間100万人規模の動員数を誇っている。その結果、それまで工業地区であった同館のあるネルビオン川沿いの鉄道操車場跡地だけでなく、アバンドイバラ地区全体において土地利用を転換させ、都市再開発を推進させることになった。グッゲンハイム美術館が開館した以降、エウスカルドゥナ国際会議場・コンサートホールの開館、サンティアゴ・カラトラバによる空港そしてスビスリ橋の開通、ノーマン・フォスターによるメトロ・ビルバオの開業、ビルバオ・トラムの開業、イベルドローラ・タワーの竣工、ソロサウレの開発計画などが続いた。これらの現象をひっくるめて「グッゲンハイム効果」と言われている。

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

 ビルバオは鉄鋼業の都市として第二次世界大戦後の急速に発展した工業都市である。しかし、1982年をピークに人口は減少しはじめ、1990 年にはピーク時から14%も人口が減少した。工業都市としての未来がみえない中、バスク州政府、そしてビルバオ市は新しい都市の将来像を描くことにする。それは、サービス都市への変貌であった。
 そして、そのためには、工業時代の象徴であったネルビオン川と港を、新しい時代の象徴へと変換させることが必要であった。その役割を担ったのが、グッゲンハイム美術館である。それは単なる文化施設以上の結果を残し、完成するとほぼ同時に、新しいビルバオのアイデンティティとして、象徴として内外で認められるようになる。そして、ビルバオ市の素晴らしいところは、同美術館の卓抜した存在感を周辺の地区に及ばせるような都市デザインを実施したことである。その都市デザインをシーザー・ペリに委託し、例えば、同美術館の南の地区は商業施設ではなく子供のための公園を整備するなどして、市民が親しみを持てるような豊かな公共空間を創造することに成功する。同美術館は、その強烈な個性によって、ビルバオの新しい将来を大きく創造するトリガーとなった。
 レルネル氏の『都市の鍼治療』に、「自信を持つことは、都市の鍼治療」という章がある。そこで、幾つかの例を紹介している中にビルバオのグッゲンハイム博物館も含まれている。レルネル氏は言う。「最も重要であることは、将来へ向けた正しい方針であり、正しい責任の共有化である。必要なものは、一つの象徴的なプロジェクトである。そして、そのプロジェクトに対してのしっかりした考え、将来の望ましいデザインを市民に提示すれば、ほとんどの市民がそれを実現するように力を合わせる。そして、その実現へ向けて力を協働させた過程こそが、市民の自信を育み、都市を前進させる推進力となるのである。」
 グッゲンハイム博物館はまさに、ビルバオの市民に自信を育み、その都市の将来を大きく変革させる、その象徴となったのである。サービス産業都市へと変貌しようとした工業都市の見事な「都市鍼治療」事業であると同時に、都市を再生するうえでの梃子としての建築の持つ凄まじいほどの力を理解させる事例でもある。

事業主体:

バスク州政府、ビルバオ市

事業主体の分類:

自治体

デザイナー、プランナー:

フランク・ゲイリー

開業年:

1997年

類似事例:

009 ツォルフェライン、エッセン(ドイツ)
・ノイヤー・ツォールホフ・ビルディング、デュッセルドルフ(ドイツ)
・緑の砦、マグデブルク(ドイツ)
・グッゲンハイム美術館、ニューヨーク(ニューヨーク州、アメリカ合衆国)
・科学博物館、ヴォルフスブルク(ドイツ)
・サグラダ・ファミリア、バルセロナ(スペイン)
・クライスラー・ビル、ニューヨーク(ニューヨーク州、アメリカ合衆国)
・エッフェル塔、パリ(フランス)
・金門橋、サンフランシスコ(カリフォルニア州、アメリカ合衆国)
・ユダヤ博物館、ベルリン(ドイツ)
・デンバー美術館、デンバー(コロラド州、アメリカ合衆国)
・舞州工場、大阪市(大阪)
・踊るビル、プラハ(チェコ)
・ウォルト・ディズニー・コンサート・ホール、ロスアンジェルス(カリフォルニア州、アメリカ合衆国)
・オンタリオ美術館、オンタリオ(カナダ)
・スペース・ニードル、シアトル(ワシントン州、アメリカ合衆国)
・EPM博物館、シアトル(ワシントン州、アメリカ合衆国)
・フンデルトヴァッサーハウス、ウィーン(オーストラリア)

参考ページ

ビルバオの都市再生戦略に関しては、ハイライフのレポートにて整理されているので、より詳細の情報は、そちらを参照してください。
アイデンティティを発露する人間中心の都心空間の創造
http://www.hilife.or.jp/wordpress/?p=4073

このページのトップに戻る


ハイライフ研究所のメールマガジン
公益財団法人ハイライフ研究所のウェブページにアクセスくださりありがとうございます。
ハイライフ研究所では新しい報告書や連載記事、無料セミナーのご案内を毎月2回メールマガジンにて配信しております。ぜひ購読をご検討ください。無料お申し込みはこちらから。

国:スペイン
州・県:バスク州ビスカヤ県
市町村:ビルバオ市