ツォルフェライン(Zollverein)

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トーク解説:

キーワード:

アイデンティティ ,ドイツ ,世界遺産 ,産業遺産

ストーリー:

ルール地方の中核都市の一つであるエッセン市の北部に18世紀に開発されたツォルフェライン炭鉱は、19世紀末にはドイツ最大の炭鉱であり、最盛期には5000人もが働いていた。また、その後、20世紀前半に建設されることになるバウハウス様式の建築物である「換気坑12」は、石炭採掘の「合理化の傑作」、「世界でもっとも美しい炭鉱」として高く評価され、ルール地方の石炭採掘の象徴として広く知られるところとなった。 しかし、1986年には石炭採掘が中止され、その数年後にはコークス製造工場も閉鎖された。
 その閉鎖直後、ノルトライン・ヴェストファーレン州政府がこの土地を購入し、「換気坑12」を歴史建築物として指定した。その結果、この建築物はしっかりと保全しなくてはならないということが義務化されたのである。
 それ以外のコークス坑などは、中国の製鉄所に売られる話もあったが、それらも含めて保全する方針がその後、策定される。これは、1988年からIBAエムシャーパークの10年事業がルール地方で実施されることになり、1991年からIBAの一プロジェクトとしてツォルフェライン炭鉱敷地の活性化プログラムの検討がされることになったからであった。
 その結果、炭鉱敷地の様々な跡地利用のアイデアが提案され、具体化した。ちょっとした広場となれるような空間は、コンサートや劇場ホールとして活用され、また観覧車やプールやアイススケート・リンクなどもつくられることになった。150メートルの長大なるアイススケート・リンクはコークスを1000度まで熱する竈として使われていたところであり、冬期には多くの人がスケートをここで楽しむようになった。
 このような試みは、2001年末にツォルフェライン炭鉱と隣接するツォルフェライン・コークス製造工場敷地合わせて約100ヘクタールがユネスコ世界文化遺産のリストに加えられるという成果へと繋がる。
 さらに、2002年にオランダの建築家であるにレム・コールハスは、旧炭鉱エリアの今後の発展の基礎となる、経済と文化の発展のためのコンセプトを提案した。これに従って、2006年には観光案内所が歴史的な旧炭鉱施設内に設けられた。
 さらには、ノルトライン・ヴェストファーレン州のデザイン・センターがノーマン・フォスターの設計によって新たにつくられ、ツォルフェライン、そしてルール工業地域を展示する博物館もつくられた。この博物館のアクセスに関してのデザインは、クールハウスがデザインをし、オレンジ色に蛍光するエスカレーターや階段は、訪れる者に強烈な印象を残す。また、妹島和世と西沢立衛のユニットであるSANAAが設計したツォルフェライン・スクールも建設された。
 その他の場所も、カフェやバー、レストランとして使われ、その広大なスケールの非日常的な空間は人気を博している。現在5つの飲食店がこのツォルフェラインにて開業している。また、ホテルやオフィス、さらには、クリエイティブな分野の新しい会社が立地してくれるような魅力の創出に努めている。

ロケーション:


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都市の鍼治療としてのポイント:

 IBAエムシャーパークは工業地域としての長い歴史を有するルール地域を大胆に再生するきっかけを提供した。ルール地方は550万人を擁する大都市圏ではあるが、それは53の市町村にまたがっており、お互いが協働することを避けていたために、広域行政はないに等しいような状態であった。しかしIBAエムシャーパークによって一つの地域として意識されるようになり、ルール地方は汚染された工業地域というイメージを持たれていたのだが、産業遺産を活用した斬新なプロジェクトを展開する先端的で創造性溢れる地域といったイメージへと変容した。その象徴が、世界文化遺産に指定されたエッセンにあるこのツォルフェライン炭鉱である。
 ツォルフェライン炭鉱の年間観光客数は年々増加傾向にあり、IBAエムシャーパークが終わった1990年には24万人にしか過ぎなかったが、2009年には100万人、さらにエッセン市が欧州文化首都に指名された2010年には221万人の観光客がここを訪れることになった。また、ツォルフェラインは観光産業だけでなく雇用の創出にも寄与している。現在旧炭鉱エリアは100を越える企業と、石炭採掘最盛期の5分の1にあたる1000人を超える従業員数をかかえるまでに成長し、デザインと芸術に重点を置いた経済と観光の活気ある立地としての地位を確立しつつある。
 産業遺産を公園等に活用した事例は、シアトルのガス・ワーク・パークなどあるが、それを保全し、再活用したことで世界遺産としての指定を受けたことは、その再活用のポテンシャルの高さを人々に認識させることとなった。日本も夕張の炭鉱跡地など、間違いなく世界遺産となるポテンシャルを有した事例もあったのだが、遊園地やスキー場を整備してしまったことで、その価値を自ら喪失させてしまった。その後の顛末などを考えると、大変もったいないことをしたということがツォルフェラインの成功を知るにつけ痛感する。

事業主体:

Zollverein Foundation

事業主体の分類:

財団

デザイナー、プランナー:

Fritz Schupp (Shaft 12)、OMA (マスタープラン)、Norman Foster (デザイン・センター)

開業年:

1847年 (再利用1991年)

類似事例:

055 ビルバオ・グッゲンハイム美術館(スペイン)
044 フィニックス・ゼー、ドルトムント(ドイツ)
023 ランドシャフツ・パーク、デュースブルク(ドイツ)
013 ローウェル・ナショナル・ヒストリック・パーク(ローウェル、アメリカ合衆国)
001 ガス・ワークス・パーク(シアトル、アメリカ合衆国)
088 ジズコフ駅(Zizkov Station)の再生プロジェクト
096 カルチャーセンター・ディーポ、ドルトムント(ドイツ)
・軍艦島(長崎、日本)

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国:ドイツ
州・県:ノルトライン・ヴェストファーレン州
市町村:エッセン市