2025年度  研究レポート
「都市生活者意識調査2010-2024から得られる示唆」
都市生活者意識調査 今昔物語

第3回
「飲食の今昔」

今年度のメルマガレポート「都市生活者意識調査 今昔物語」も3回目...
第1回はコロナ前後での生活者の行動や意識の変化の有無を取り上げました。
第2回は、デジタルの普及が都市生活者の行動をどう変えたのか見ていきました。

第3回は「飲食の今昔」と題して、都市生活者の食事の行動、飲酒の行動、食品の買い物についてご報告したいと思います。

今号のもくじ

Ⅰ. 食事と料理の今昔

Ⅱ. 飲酒の今昔

Ⅲ. 食品の買い物の今昔

Ⅳ. まとめ

尚、今回のレポートは、
① 2019年度版  コロナ前 
② 2021年度版  コロナ感染拡大2年目の調査
③ 2024年度版  2025年6月25日公表の最新版
という3回の調査を比較します。

※「都市生活者意識調査」  参照ホームページ
2019年度  https://www.hilife.or.jp/pdf/201902.pdf
2021年度  https://www.hilife.or.jp/pdf/data2021.pdf
2014年度  https://www.hilife.or.jp/pdf/data2024.pdf

Ⅰ. 食事と料理の今昔

第1章は「都市生活者意識調査」から見る「食事と料理の今昔」です。

「都市生活者意識調査」の中から、「食事と料理」に関する調査結果を見てみましょう。

下のグラフは「食に対する意識・態度」の結果を、今回のテーマに合わせて項目の抜粋を行ったものです。

公益財団法人ハイライフ研究所「都市生活者意識調査」2019/2021/2024
報告書・データ編:2019年度 P.37、2021年度 P.38、2024年度 P.41

3回の調査結果では、顕著な差異は現れていないものの、その中で2つの傾向があるように思われます。
一つは、
・コロナ拡大時に行動変容が見られたものの、その後、元に戻った項目
もう一つは
・コロナ拡大・収束に関係なく、食に対する意識・態度が一貫している項目
です。

(1)コロナ拡大時に行動変容が見られたものの、元に戻った項目

①コロナ収束で元に戻った項目1 「誰と食事をするか」

コロナ時の行動変容が元に戻った項目の1つは「誰と食事をするか」です。
・左から3番目 「家族揃って食事をするようにしている」:コロナ拡大時のみ増加
・4番目 「食事は外で買ってきた惣菜もよく利用している」:コロナ拡大時のみ増加
・5番目 「一人で食事をする方が好き」:コロナ拡大時のみ減少
という調査結果になりました。

「家族揃って食事をするようにしている」は、コロナ拡大時はテレワーク等で在宅時間が長くなり、自然と家族が揃って食事をする人が増えたものの、コロナ収束後は、テレワークも減り、自ずと家族での食事機会が減って、コロナ前に戻った、と思われます。
逆に5番目「一人で食事をする方が好き」はコロナ時は減りました。コロナで家族と共に食事をするようになり、一人の食事が好きな人も、家族と一緒に食事をする機会が増え、一時的に、「一人で食事をする方が好き」という評価は減りましたが、コロナ収束で、やはり一人での食事が好き、という気持ちに戻ったのではないでしょうか?

4番目の項目「食事は外で買ってきた惣菜もよく利用している」も、コロナ時に一時的に増加しています。惣菜を買って帰って食事に利用している人は元々一定数いたところに、コロナで一時的にその割合が増えていますが、コロナ後は元に戻っています。惣菜の持ち帰りで増えた層はコロナ収束後にその行動を止めてしまったのでは、と考えられます。

②コロナ収束で元に戻った項目2 「何を参考にして料理を作るか」

コロナ時の行動変容が元に戻った項目のもう1つは「何を参考にして料理を作るか」です。
・10番目 「ネットやソーシャルメディアの情報で料理を作る」
・14番目 「料理番組や新聞・雑誌の料理記事で料理を作る」
の2項目はコロナ時に一時的な増加がありました。

コロナで自宅での調理時間が増えた生活者が、ネットやソーシャルメディア、もしくは料理番組や新聞・雑誌の料理記事を参考にして料理を作るという行動変容が見られるものの、コロナ後は料理を作らなくなった、という風に読み取れます。

この2つが、コロナ時に一時的に行動変容した生活者の姿ではないでしょうか?

(2)コロナ拡大・収束に関係なく、食に対する意識・態度が一貫している項目

「食に対するこだわり」のある人は増減なし

コロナ時、一時的に行動や態度に変容が見られた項目は多かったですが、その一方で、コロナの影響を受けず、3回の調査で数字がほとんど変わらなかった項目も存在します。
その項目にはある共通性が見られました。それは、「食に関するこだわり」が強い人、という点です。

調査項目
・左から8番目 「味にうるさい方である」
・9番目 「栄養成分表示を見て購入することが多い」
・11番目 「家で食べるより外食する方が好き」
・12番目 「地元の産地のものを選ぶようにしている」
といった項目は、コロナ時でもほとんど数字に変化がありませんでした。

これらはみな、「食に対してこだわりを持つ」人の調査項目と考えられます。
産地や栄養成分にこだわる人、外食好きで味にうるさい人達は、コロナ感染拡大の影響をほとんど受けませんでした。
こうした人々には、食に対する強い意志が感じられました。

Ⅱ. 飲酒の今昔

第2章は「飲酒の今昔」です。

「都市生活者意識調査」から見る「飲酒の今昔」

次に「都市生活者意識調査」の中から、「飲酒」に関する調査結果を見てみましょう。
まず、外部データによる飲酒行動の推移をご覧ください。

(1)外部データによる飲酒の実態

そもそもお酒を飲む人口は増えているのでしょうか?
それには下のグラフが参考になると思います。

国税庁 酒のしおり 令和7年7月

この調査によりますと、成人人口の横ばい状態もあってか、お酒の国内市場は全体として縮小傾向にあります。
特に令和2、3年(2020年、2021年)はコロナ拡大で、飲食店の営業が抑えられ、外での飲酒が難しい時期で、その期間に成人酒類消費数量は大きく減少しました。
令和4、5年には酒類消費数量が上向いているものの、平成3、4年と比較すると4分の3程度に落ち込んでいて、コロナがその傾向に拍車をかけた、と言えると思います。

(2)都市生活者意識調査によるお酒の実態

では、それを踏まえつつ、「都市生活者意識調査」を見ていきます。
下のグラフは「お酒に対する意識・態度」の結果を、今回のテーマに合わせて項目の抜粋を行ったものです。

公益財団法人ハイライフ研究所「都市生活者意識調査」2019/2021/2024
報告書・データ編:2019年度 P.46、2021年度 P.47、2024年度 P.50

この調査結果では2つの特徴が現れていると思います。

①飲酒に対する肯定的評価の減少

・上から1番目 「お酒を飲むのが好きだ」:3回の調査で87.8%に減少(2024年度/2019年度)
・2番目 「お酒はストレス解消や癒しになる」:79.3%に減少
・6番目 「お酒そのものよりも、飲んでいるときが楽しい」:76.7%に減少
・10番目 「お酒を飲む機会を通じて交流を始めたり深めたりしている」:76.4%に減少
・11番目 「色々なお酒の種類を楽しんでいる」:69.7%に減少
これらは「お酒を肯定的に評価している」という調査項目になると思われますが、各項目とも、3回の調査で大きく数字を減らしています。
先ほどのグラフのような「飲酒人口の減少」も要因の一つかもしれませんが、お酒を楽しむ人々が減っているのが見て取れます。
楽しく過ごす時間はお酒と共に...という態度は徐々に変わりつつあるのかもしれません。

②ノンアルコール、低アルコール飲料の増加

・上から8番目 「アルコール度数の低いお酒を飲むことが増えた」:36.5%増加(2024年度/2019年度)
・12番目 「ノンアルコールのビール・チューハイ・カクテルを飲むことが増えた」:37.5%増加
日本人は約3分の1の人がアルコール解毒能力が弱く、急性アルコール中毒に陥りやすい、と言われているそうですが、低アルコールやノンアルコールの飲料を飲むことが増えた、という回答が増えているのも、「都市生活者意識調査」の結果で分かります。
以前は、「おいしくない、自分だけノンアルコールはばつが悪い」などの理由でためらわれたノンアル・低アル飲料ですが、この数年で生活に浸透してきているようです。
各メーカーの商品開発や運転手への配慮など、ノンアルコール・低アルコール飲料の摂取機会は更に増加するかもしれません。

Ⅲ. 食品の買い物の今昔

続いて、日常生活における、「食品の買い物」の意識・態度を見ていきます。

(1)「都市生活者意識調査」に見る「食品の買い物」動向

まず、「都市生活者意識調査」の調査の中で、「食品の買い物について」を見ていきます。
下のグラフは「食品の買い物について」の調査結果を、今回のテーマに合わせて項目の抜粋を行ったものです。

公益財団法人ハイライフ研究所「都市生活者意識調査」2019/2021/2024
報告書・データ編:2019年度 P.64、2021年度 P.65、2024年度 P.68

この調査結果では3つの特徴が現れていると思われます。

①食品の買い物についてこだわりを持つ人の減少

・上から2番目 「ポイントカード会員になっているスーパーをよく利用する」
・5番目 「スーパー、コンビニ、ドラッグストア、商店街など、購入商品で使い分けている」
・11番目 「価格は関係なく、お気に入りの馴染みの店がある」
これらの項目は、3回の調査で徐々に数字を減らしています。
食品の購入の際、「お店の選択に関してこだわりのある生活者が減っている」ということだと思います。食品の買い物について、自分なりのルールを持っていた人が、そのルールに余りこだらわなくなってきたのではないでしょうか。
第1章で、「食に対するこだわり」のある人はコロナ前後で増減なし、という報告をしましたが、この章の①の調査結果では「こだわりが減っている」という逆の結果になりました。「食そのものへのこだわり」はコロナに影響されず、「食品の買い物へのこだわり」は減っています。「食そのもの」と「食品の買い物」で各々意識を別にしている、という風に捉えるべきなのでしょうか...

②「安さ」に対する積極性の低下

・上から3番目 「特売品や〇〇円引きのシールが貼られた商品をよく買う」
・7番目 「スーパーでの買い物は、特売日やタイムセールスに行くようにしている」
は、3回の調査で若干減っている傾向が見受けられます。この調査結果では、物価高が続く昨今でも、生活者は「安さ」に対して積極的行動を取っておらず、むしろ若干消極的とも思える回答です。①の結果=「食品の買い物についてのこだわりの減少」は、「値段についてもこだわりが少なくなっている」、ということでしょうか...

③セルフレジ利用の増加

・上から4番目 「客が自分で商品をスキャンするセルフレジは便利である」:増加
・6番目 「レジは従来通り、店員さんによる会計の方が安心できる」:減少
・12番目 「店員さんが話しかけてくれることは楽しいし、助けられることが多い」:微減
3つ目の特徴は「セルフレジの増加」です。セルフレジは最近スーパーマーケットで台数が増えているように思われますが、「都市生活者意識調査」でも「利用する」と答えた生活者は増えています。それに反比例して、6番目の項目=「店員さんによる有人レジの使用」は減っています。当初はその操作の抵抗感でセルフレジを選ばなかった人々も、次第にセルフレジを利用するようになったと考えられます。セルフレジを利用すると、エコバッグへの袋詰めが一度にできるので、それを便利だと感じる生活者が増えたという可能性もあるのでは、と感じます。
また、店員さんとのコミュニケーションを楽しいと思っている生活者も僅かですが減っています。食品の買い物について、スーパーマーケットでの店員さんとのコミュニケーションのあり方は、新たな段階に来ているのかもしれません。

(2)外部データによるセルフレジの設置状況

ちなみに、先ほどセルフレジが増えているという記述をしましたが、外部データを見ながら、実際どうなのかを見ていきましょう。

下のグラフはスーパーマーケットにおけるセルフレジの設置状況です。

セルフレジの設置状況(経年比較)/業界推計値

2022年「スーパーマーケット年次統計調査報告書」

やはりセルフレジの設置店舗は増えています。恐らく2023年度、2024年度とセルフレジの普及は更に増加しているのではないでしょうか。
そもそもセルフレジの設置店舗が増加していますので、おのずと生活者の利用機会も増えてくる...この増加傾向は更に続くものと思われます。

Ⅳ.まとめ

今回は「都市生活者意識調査」の調査報告の中で、「飲食の今昔」と銘打ち、都市生活者の食事の行動、飲酒の行動、食品の買い物について、3回の調査を見てきました。

今回も、人々の意識や態度について、具体的な設問の多い「都市生活者意識調査」には興味深い調査結果がありました。

1.「食事と料理に関する今昔」では、生活者が、コロナ時に増加した家族との食事やネットや料理番組を参考に行った料理が、コロナ収束後に元に戻ってしまったことを知ることができました。その一方で「味にうるさい方だ」とか「栄養成分表示を見て購入することが多い」という「こだわり派」はコロナ前後で増減がなかったことも分かりました。

2. 「飲酒の今昔」に関しては、お酒を好きだとか、お酒を飲んでいる時が楽しい、という回答が2024年度/20年度比較で4分の3にまで減り、飲酒に対する肯定的回答が大きく減っていることが見て取れました。片や、ノンアルコール/低アルコールを飲む機会が増えたと答える生活者は35%以上増加し、広義での「お酒」の飲み方への多様性が現れていました。

3.「食品の買い物の今昔」については、お店の選択にこだわりを持つ人(「ポイントカード会員の店によく行く」・「購入商品でお店を使い分けている」)は減少し、更に、安さに対してこだわりを持つ人(特売品やタイムセールスをよく利用する)も減少していました。第1章の「味や成分にこだわる」人に増減がなかったことと比べると、お店の選択や安さのこだわりが少なかったということが分かりました。セルフレジの利用増加も知ることができました。

このように、「都市生活者意識調査」では、思った通りの調査結果、意外な調査結果を知ることができます。

https://www.hilife.or.jp/report-toshi

「今号のもくじ」でもお知らせしました通り、最新版2024年度の報告書も6月25日に公表されております。 是非、各年度の報告書をご覧頂き、都市生活の気付きになればと願っています。