
4月からスタートしました「都市生活者意識調査 今昔物語」...
第1回はコロナ前後での生活者の行動や意識の変化の有無を取り上げました。
第2回は、「都市生活者意識調査」を通じて、都市生活者の行動の中で、デジタル端末がどう浸透し、オンラインが日常生活をどう変えたのか、変えなかったのかを見ていきたいと思います。
尚、今回のレポートは、
① 2023年度版 最新調査
② 2020年度版 コロナ感染拡大1年目の調査
③ 2017年度版 2020年度版の3年前
という、「3年間の等間隔」で3回の調査を比較します。
※「都市生活者意識調査」参照ホームページ
2017年度 https://www.hilife.or.jp/pdf/201702.pdf
2020年度 https://www.hilife.or.jp/pdf/202002.pdf
2023年度 https://www.hilife.or.jp/pdf/data2023.pdf
第1章は「買い物/キャッシュレスの今昔」です。
外部団体の発表したデータで、まず「キャッシュレスの実態」を見ていきましょう。

上のグラフは2022年度のタイプ別に見たキャッシュレス保有率です。
30代以上ではクレジットカードが他を引き離して第1位になっています。
一方、18-29歳ではスマートフォン決済がクレジットカードに迫っています。
クレジットカードには審査があり、入手までに時間が掛かる場合があります。
若い世代は、入手が容易なスマートフォン決済のアプリを多く利用しているように見受けられます。
あと、世間へのデビューが古い割には、デビットカード(オレンジ色のグラフ)のシェアが低いままなのも分かります。

また、上のグラフは2023年度のキャッシュレス決済の総額です。
ここではクレジットカードが105兆円で、
コード決済の10倍近い金額になっていることが分かります。
・高額な買い物はクレジットカードで
・日常の決済はコード決済や電子マネーでという使い分けがなされているのかもしれません。
では、「都市生活者意識調査」の中から、「買い物/キャッシュレス」に関する調査結果を見てみましょう。
下のグラフは「買い物に対する意識・調査」の結果を、今回のテーマに合わせて項目の抜粋を行ったものです。

2017年度の調査については、上記設問自体がなかった項目もあり、3年分のグラフが並んでいないカテゴリーもありますが、ある程度の状況把握はできると思います。
ここで分かるのは、
・「クレジットカード」や「電子マネー・プリペイドカード」の使用割合は減っている
・「スマホ決済」は増えている
・「デビットカード」はここでも低いパーセンテージのままになっている
・ネットの買い物の割合は横ばいになっている
ということです。
※「ネットで買い物をよくしている」は、2020年版のみ別カテゴリーでの調査となったため、参考資料として右端にレイアウトしました。
調査結果を見てみると、「1円でも値段の安い店に買いに行く」が2020年度から増えて、低成長時代に突入した日本において、人々が節約志向になったことも感じられます。
また、2020年度のみ「まとめ買いをするようにしている」が高くなっており、スーパーマーケットでも入店制限のあったコロナ1年目の生活者の声が聞こえてくるような気がします。
次に、日常生活において、デジタルメディアへの人々の接し方と信頼性を見ていきます。


この調査は、「都市生活者意識調査」で、メディアのうち、「慣れているメディア」かどうか、と「信用できるメディア」かどうかの調査を、今回のテーマに合わせて項目の抜粋を行ったものです。
既存メディアの中では、「テレビのニュースや情報」には慣れていて、かつ信用されていることが分かります。「新聞の記事」は、「慣れている」のスコアでは、「テレビのニュース番組」の半分以下ですが、「信用できる」スコアが、「慣れている」のスコアより高く、新聞記事の信頼性の高さを改めて知ることができます。
ラジオのニュースは、「慣れている」パーセンテージは低いものの、「信用できる」の割合は「慣れている」より下がっていません。新聞同様、ニュース番組の信頼性は高いようです。
一方、PCやスマホなど、デジタルデバイスで視聴するコンテンツ(動画配信、ネットのニュース記事、ネットのソーシャルメディア)は「慣れている」のレベルでは新聞、雑誌、ラジオを圧倒しているものの、「信用できる」のレベルは大きな低下が見られます。特に動画配信サイトの落差は激しく、閲覧者もその辺りを割り切って見ているのでは、と思われます。
あと、意外に高いパーセンテージを示したのが「家族や友人・知人の話」。身近な人とやり取りする情報に生活者は信頼を寄せているようです。
続いて、日常生活における、人づきあいとSNSの利用を見ていきます。

そもそもデジタルデバイスの利用実態はどのようになっているでしょうか?
上のグラフは、ここ10年のデジタルデバイスの利用動向です。
この調査によると、平成28年度(2016年度)にはパソコンとスマートフォン(スマホ)がほぼ同率となり、翌年には逆転しました。パソコンは微減状態が続いています。
固定電話は減少傾向ですが、タブレットも横ばいで、スマホのみ上昇を続けています。
(1)のデジタルデバイスの利用実態を踏まえて、「都市生活者意識調査」の報告を見ていきましょう。

「都市生活者意識調査」には「人づきあいに対する意識・態度」という調査があり、毎年調査が実施されています。その中にインターネット関連の項目が幾つかあります。
上のグラフは、今回のテーマに合わせて項目の抜粋を行ったものです。
この調査でこのような事が分かります。
・友人・知人との連絡はメールやLINEでほとんど済ませている
1/3の人々がメールやLINEで連絡を済ませているが、2020年度・2023年度は大幅減。
・ネットやソーシャルメディア上の人づきあいは面倒だと思う
2017年度は少なかったが2020年度、2023年度は倍増している。
・一度も会ったことのないネットやソーシャルメディア上の知人がいる
10%弱の生活者にネット上だけの知人がおり、その割合は年度別でも大きな差はない。
・ネットやソーシャルメディアを通じて知り合って会うようになった友人・知人がいる
こちらも10%弱の生活者にネット上で知り合った知人がおり、年度別でも差はない。
・ネットやソーシャルメディアを通じて古い友人・知人との交流が復活した
5%強の生活者がネットを利用して旧交を復活しているが、その割合は徐々に減少。
これらの結果をまとめるなら、
『ネットやソーシャルメディアの利用において、生活者は、2017年度はその半分が連絡をメールやLINEで済ませていたが、2020年度からその割合は大きく減少した。それに関連して、ネットやソーシャルメディア上の人づきあいは面倒だと思う割合も倍近くに増加した』
ということになるかと思います。
この理由を考える上で重要になるのは、2020年度から新型コロナの感染拡大が始まったことではないでしょうか。
第1回のレポートでも報告しましたが、新型コロナの感染拡大により、生活者の行動の中には大きな変化があった項目もありました。
その事実と照らし合わせれば、「生活者がコロナ拡大の2020年度から、メールやLINEでない連絡の方法を選択することが増えた」と考えられます。コロナ拡大で、出勤できず、家から出られない環境下で、人々は、「対面によるコミュニケーションの重要性」を感じたのかもしれません。
そしてそれは、新型コロナ感染症が第5類に移行した2023年度になっても戻ることはなかったということです。
だからこそ、コロナ前まで半数の人が行っていた「ネットやソーシャルメディア上の人づきあい」での、その独特の「面倒くささ」を感じる生活者が増した、のではないでしょうか?
確かにSNS等で連絡を取る場合、レスポンスはあったか、既読が付いていないけど大丈夫か、無視されていないか、等、気を遣うケースもあります。
コロナの感染拡大を経験して、生活者は、連絡を取る手段として、ネットやソーシャルメディアにコロナ前ほど依存しなくなったようです。
今度は「お金」=「支出の対象」という観点からデジタルデバイスを見てきましょう。
下のグラフは消費に占める通信費の推移です。

この集計によると、
・携帯電話通信料は2017年度まで徐々に増加しているが、それ以降は横ばい
・固定電話通信料は2017年度まで減少を続け、2018年度以降は横ばい
・最新の数字によると、1年間の携帯電話通信料は年間10万4,192円
・消費に占める電話通信料は4.35%で、その割合は年々少しずつ増えている
ということが分かります。年間約10万4,000円、月に8,700円近くも携帯通信料を払っているわけです。
しかも家計の中でその割合はちょっとずつ増加...
生活者としては携帯電話の通信料はかなりの負担になっているようです。
それを踏まえて「都市生活者意識調査」で「お金」=「支出の対象」という観点からデジタル関連の調査結果を見ていきましょう。下のグラフは消費に占める「通信費」の推移です。
※今回のテーマに合わせて項目の抜粋を実施

この調査結果によると、
・最近1年で増えたもの
物価高騰のあおりを受けたせいか、「食料費」、「水道光熱費」は大きく増えているが、コロナ拡大の2020年度は増えたと答えた生活者は一時的に減った。
「通信費」は増えたと答えた人が6年間で1/3になっている。
・増やしたいもの
増やしたいトップは「貯蓄」で、「趣味・娯楽費」、「食料費」がそれに続くが、「通信費」と「水道光熱費」は増やしたくない=「増やしたいスコアが低い」項目となっている。
・減らしたいもの
「増やしたいもの」で下位となった「通信費」、「水道光熱費」が、ここでは当然ながら上位になっている。
「食料費」は「増やしたいもの」と「減らしたいもの」が同じような割合になっている。
「貯蓄」や「趣味・娯楽費」は「増やしたいもの」で上位になっていたが、「減らしたいもの」では、「増やしたいもの」と裏表の関係になっており、その割合は低い。
ということが分かります。
これらの調査を合わせると、「通信費」に関して以下のような傾向が導き出せるのではないでしょうか?
・ここ3年間の支出調査の中で、「通信費」は「増えたもの」という認識は低くなっている。
・とはいうものの、家計に占める通信費の割合は増加傾向で、生活者は、通信費をこれ以上増やしたくない、できれば減らしたいと考えている。
このレポートが配信される2025年6月中旬時点で、米の値段はまだ高止まりしており、食料品や電気代、ガソリン代も高いままとなっています。
レポート作成時点で、備蓄米の販売が実施されつつありますが、まだ世の中に広く出回るには時間がかかりそうです。
スマホ通信費の格安プランも各社が競ってPRをしている昨今、生活者は「食料費」や「水道光熱費」で実現出来ていない支出の抑制を、「通信費」でと考えているのかもしれません。
今号の最後の章として、インターネット時代の象徴=テレワークを「都市生活者意識調査」から見ていきます。

上のグラフは国土交通省調査によるテレワーカーの割合の推移です。
これによりますと、首都圏では、コロナ拡大の4年前、平成28年度(2016年度)の段階で16.9%がテレワークを経験しています。コロナ拡大の1年目・2020年度でその比率は大きく上昇、翌年の令和3年度(2021年度)には更に増えて、42.1%がテレワーカーになっています。
既に一部で実施されていたテレワークは、コロナ拡大によって一気に増加したのが良く分かります。ただ、令和3年度(2021年度)以降は徐々に減っています。また、近畿圏や中京圏を始めとする首都圏以外の地域は、さほど増加しませんでした。
テレワークの増加を受けて、ハイライフ研究所では2017年度にテレワークに関する調査を実施し、テレワークに対するどんな期待感(ポジティブ)があるか、どんな不安感(ネガティブ)があるかを調べました。
そしてその3年後、コロナ拡大で多くの生活者がテレワークを実際に経験、更にその3年度、新型コロナウィルス感染症が第5類に移行して、コロナ生活の「振り返り」が出来るようになった2023年度、都市生活者にテレワークの「実際」(ポジティブ評価/ネガティブ評価)の調査を試みました。 その結果をご紹介します。(今回のテーマに合わせて項目の抜粋を実施)

報告書・データ編:2017年度 P.149、2023年度 P.119
ポジティブ評価ですが、全体的に「期待」(2017:青グラフ)より「実際」(2023:オレンジグラフ)の方が低いパーセンテージになっています。余り差がなかったのは2023年度第1位の「体力的に楽」と第3位の「仕事に集中できる」の2項目でした。
それ以外の項目は「実際」が「期待」を下回っており、特に「時間の有効活用」(2位)、「自分のペースで仕事ができる」(5位)、「家事を分担する」(6位)は「期待」より「実際」が大きく割り込みました。期待外れが多かったようです。
『テレワークは通勤がなくて楽で、仕事に集中できたものの、自分のペースで時間を有効活用することはできず、家事の分担もしなかった』
...これがテレワーカーの期待と現実ということになるのでしょうか。

報告書・データ編:2017年度 P.151、2023年度 P.119
では続いて、ネガティブ評価の方を見てみましょう。
こちらは「不安」(2017)より「実際」(2023)の方が、1つの項目を除き低いパーセンテージになっています。杞憂だった項目がほとんどということになります。
その中で「実際」が「不安」を上回ったのは「運動不足」...13%の人々が、テレワークに対して運動不足を不安材料に上げていましたが、「実際」はそれより多い22%が運動不足になったと答えています。
それ以外の項目は「実際」が「不安」を下回っています。特に「仕事に集中できない」(2023年度2位)、「仕事とプライベートの境界が曖昧」(5位)、「人と会えないのでニュアンスが伝わりにくい」(6位)、「家事をせざるを得なくなった」(9位)は「不安」より「実際」のパーセンテージが小さかったです。
『当初不安に思ってはいたが、意外に仕事には集中できたし、仕事とプライベートのメリハリもついていた。対面できないので、仕事のニュアンスが伝わりにくいかな、と思ったが、そんなでもなく、これらの不安は杞憂に終わった。
家事をせざるを得ないと思ったけど、これはやらなかった。
あと、運動不足は思った以上で、体重が増えてしまった』
...生活者はこのようにテレワークを評価したということです。
家事については、ポジティブ/ネガティブいずれの調査結果も「実際」には携わっておらず、「在宅勤務でも家事に貢献しない」生活者の実態が見て取れました。
今回は「都市生活者意識調査」の調査報告の中で、「パソコン/スマホ/キャッシュレス/SNS/通信費」の6年間の変化を3年刻みで見てきました。
今回も、人々の行動や意識について、具体的な設問の多い「都市生活者意識調査」には興味深い調査結果が多く読み取れました。
1.「買い物/キャッシュレス」では、生活者がクレジットカードや電子マネー・プリペイドカードの使用割合を減らし、スマホ決済を増やしている一方で、物価高の昨今、「1円でも値段の安い店に買いに行く」傾向が増えていることが分かりました。また、コロナ拡大の2020年度のみ「まとめ買いをするようにしている」が高くなっていました。
2.「信頼できるメディア」に関しては、テレビ・新聞・ラジオのニュースには高い信頼性を置いているのに対し、PCやスマホなどで視聴するコンテンツでは、「慣れている」割合に対して「信用できる」の割合は低く、特に動画配信サイトの落差は激しかったです。閲覧者もその辺りを割り切って見ている、と思われました。あと、意外に高かったのが「家族や友人・知人の話」で、身近な人とやり取りする情報に生活者は信頼を寄せているようです。
3.「SNSによる人づきあいの」については、ネットやソーシャルメディアの利用において、生活者は、2017年度はその半分が連絡をメールやLINEで済ませていましたが、2020年度からその割合は大きく減少、メールやLINEでない連絡手段を選ぶようになったようです。それに関連して、「ネットやソーシャルメディア上の人づきあいは面倒」と思う割合も倍近くに増加しました。この変化はコロナ拡大の影響が大きいと思われます。
4.「インターネット代金=通信費」に関しては、携帯電話通信料に当たる「通信費」は増えたと答えた人が6年間で1/3に減っていました。通信費が高止まる中、減らしたいものとして通信費はやはり上位になっていました。生活者は、食料費や水道光熱費で実現出来ない支出の抑制を、格安プランの増えた通信費で、と考えているのかもしれません。
5.「テレワーク」では、テレワークに対する「不安」と「期待」を「実際」とで比較しましたが、
「期待」の多くが「期待外れ」、「不安」の多くが「杞憂」という結果となりました。但し、家事については、期待も不安も関係なく、「在宅勤務時にでも事に貢献しない」生活者の実態が見て取れました。
「都市生活者意識調査」では、この他にも多くの調査結果が報告書に載せられています。
https://www.hilife.or.jp/report-toshi
是非、各年度の報告書をご覧頂き、都市生活の気付きになればと願っています。
