314 エアフルトのクリスマス・マルクト(ドイツ連邦共和国)

314 エアフルトのクリスマス・マルクト

314 エアフルトのクリスマス・マルクト
314 エアフルトのクリスマス・マルクト
314 エアフルトのクリスマス・マルクト

314 エアフルトのクリスマス・マルクト
314 エアフルトのクリスマス・マルクト
314 エアフルトのクリスマス・マルクト

ストーリー:

 エアフルト市は1,300年近くの歴史を有する都市で、第二次世界大戦の被害が少なかったために、旧市街地の歴史的建築物や街並みが保全されている(「都市の鍼治療」113 クレーマー橋参照)。そのエアフルトの旧市街の中でも、最もランドマークとして際立つのは聖メリー大聖堂と聖セベレス教会であろう。この二つの宗教建築がつくるスカイラインは素晴らしく、そのスカイラインはエアフルトのシンボルとさえなっている。
 このランドマークの前のドーム広場でエアフルトのクリスマス・マルクトは開催される。2023年のクリスマス・マルクトは172回目の開催である。毎年200万人の人が訪れる大イベントである。これはクリスマス・マルクトの集客数ではニュルンベルクとほぼ同じで、その規模はドイツ最大であると考えられている。そこには、200近くの木でつくられた屋台小屋が出ており、それらではクリスマス商品(例えばクリスマス・ツリーのためのオーナメントやシュトーレンといったクリスマス・ケーキ、地元の藍染めの商品、陶器類、木彫りの人形等)や、地元名物のチューリンゲン・ソーセージやビール、砂糖が入ったグリュン・ワインなどが売られている。
 その開催期間は11月28日から12月22日(2023年の場合)であり、開催時間は日曜日から水曜日までが午前10時から午後8時、木曜日と初日は午前10時から午後9時まで、そして金曜日と土曜日は午前10時から午後10時までである。
 エアフルトのクリスマス・マルクトで印象的なのはクリスマス・ピラミッドとクリスマス・ツリーの立派さ、そしてキリスト生誕シーンを木彫りの像で再現した見事なジオラマである。クリスマス・ピラミッドは高さが12メートルで、そこにはエアフルトの歴史的な人々とクリスマスの物語のシーンが演出されている。クリスマス・ツリーは25メートルの高さを誇る。
 エアフルトのクリスマス・マルクトはエアフルト市役所によって運営されており、ここに出店したい場合はエアフルト市役所が所有する移動店舗を借りることになる。その運営ルールなどもエアフルト市役所が作成している。

キーワード:

クリスマス・マルクト,イベント

エアフルトのクリスマス・マルクトの基本情報:

  • 国/地域:ドイツ連邦共和国
  • 州/県:チューリンゲン州
  • 市町村:エアフルト市
  • 事業主体:エアフルト市
  • 事業主体の分類:自治体 
  • デザイナー、プランナー:N/A
  • 開業年:1850年前後

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

 11月の終わりからクリスマスにかけて、ドイツ中の都市の広場はクリスマス・マルクトが開催されて都市は華やいでいく。ちょっと前のデータになるが、ドイツでは2,500のクリスマス・マルクトが開催され、そこで働く人達は18万8,000人にも及ぶ。その総支出額は不明であるが、シュピーゲルの記事(Himmelreich, 2009)によると、およそ30億ユーロから50億ユーロぐらいであろうと推計されている。日本円でいうと、大雑把ではあるが4,800億円から8,000億円ぐらいであろうか。クリスマス・マルクトの来訪者は大体27ユーロから30ユーロ支出すると推測される。出店している多くの商店は、1ヶ月に満たないクリスマス・マルクトのシーズンで年間の半分の収入を稼ぎ出しているそうだ。
 しかし、そのクリスマス・マルクトはピンキリであり、その内容も地元志向であったり、観光客対応であったりして様々である。例えば、ベルリン市のホームページでは、同市内で開催されている100箇所のクリスマス・マルクトを紹介している。それらの中には日本の縁日のような規模のものから、入場料を徴収する観光客対応のものまで玉石混交の状況であることが分かる。
 そのような状況であるため、クリスマス・マルクトを「都市の鍼治療」として考えた場合、このデータベースに加えるのにふさわしいものは必ずしも多くない。クリスマス・マルクトはその都市を活性化し、そのアイデンティティを発現させるうえでも効果的な戦略であるが、その効果もピンキリであるからだ。そおで、それを選考するうえで考える基準としては、それがその都市のアイデンティティにも繋がり、シビック・プライドを醸成しているかどうか、ということになるであろう。また、自治体がしっかりと運営に関与していることが重要である。というのも、現在、自治体がしっかりと運営しているのは1/3にしか過ぎないからである。例えばハンブルク市の市役所広場で開催されるクリスマス・マーケットはドイツのサーカス興行主であるロンカリ(Roncalli)が運営を行っている(Himmelreich, 2009)。そのような条件から考えると、ニュルンベルク、ドレスデン、エアフルトが候補に上る。ドレスデンは最古のクリスマス・マルクトと言われているが、会場の一端は大通りに接しており、また会場の規模も12,700㎡とそれほど大きくない。ニュルンベルクはなかなか魅力的であるが、会場が分散されており、主会場のハウプト広場はほどよく囲まれた雰囲気のいい広場ではあるが規模が6,600㎡と相当、狭い。それらに対して、エアフルトの主会場であるドーム広場は25,000㎡と圧倒的に広い。そして、背景の大聖堂と教会が宗教的イベントであるクリスマス・マルクトの雰囲気を見事に演出している。一方で規模が大きいこともあって、観覧車やゴーカートといった移動遊園地的なアトラクションもあり、そういう点では風情には欠けるが、その集客力の多さ(年間200万人はほぼニュルンベルクと同じ)なども考え、ここを選ばせてもらった。
 ドイツのお家芸ともいえるクリスマス・マルクトであるが、現在ではドイツ以外でも広範囲で開催されるようになっており、特にブダペストのクリスマス・マルクトは本家ドイツよりも旅行評論家の評価は高かったりする。
 ビジネス面でもそれをやる意義は大きいが、しっかりと本事例のように市役所が管理して、シビック・プライドを醸成する機会として活用したり、それを活かしたプレース・メーキング的なアプローチで取り組むことでしっかりとした「都市の鍼治療」的な効果が期待できると考える。

【参考資料】
エアフルト・クリスマス・マルクトの公式ホームページ
https://weihnachtsmarkt.erfurt.de/wm/en/index.html
Laura Kiniry (2018): “Could Erfurt Be Germany’s Most Magical Christmas Town?” in Smithonian Magazin Website
https://www.smithsonianmag.com/travel/could-erfurt-be-germanys-most-magical-christmas-town-180971095/
Von Laura Himmelreich (2009): “Germany’s Christmas Market Generate Billions in Revenues” in Spiegel International
https://www.spiegel.de/international/business/noel-and-gluehwein-germany-s-christmas-markets-generate-billions-in-revenues-a-666286.html

類似事例:

123 アジタゲダ
125 カルチャーナイト
・ ニュルンベルグのクリスマス・マルクト、ニュルンベルク(ドイツ)
・ ドレスデンのクリスマス・マルクト、ドレスデン(ドイツ)
・ ドルトムントのクリスマス・マルクト、ドルトムント(ドイツ)
・ ブダペストのクリスマス・マルクト、ブダペスト(ハンガリー)
・ 瀬戸内国際芸術祭、直島等(香川県)
・ ドクメンタ、カッセル(ドイツ)
・ ヴェネチア・ビエンナーレ、ヴェネチア(イタリア)
・ ミュンスター彫刻プロジェクト、ミュンスター(ドイツ)
・ 札幌オータムフェスト、札幌市(北海道)
・ シエナのパーリオ、シエナ市(イタリア)