191 ブラジリアの大聖堂 (ブラジル連邦共和国)

191 ブラジリアの大聖堂

191 ブラジリアの大聖堂
191 ブラジリアの大聖堂
191 ブラジリアの大聖堂

191 ブラジリアの大聖堂
191 ブラジリアの大聖堂
191 ブラジリアの大聖堂

ストーリー:

 ブラジルを代表する建築家オスカー・ニーマイヤーの設計によるブラジリアの大聖堂。彼はブラジリアにおいて連邦議事堂、大統領官邸を含めて多くの作品を残すが、その中でも最初に設計したのがこの大聖堂であった。建設は1958年に始まったが、建物が完成したのは1970年である。建物の周辺には3メートルはある4つの銅像と巨大な4つの鐘からなる鐘塔が置かれた。鐘塔はスペインから寄贈されたものである。
 各90トンの重さの16のコンクリートの柱が双曲線を描いた構造をしている。これらは「祈りの手」を表現しているのだが、それまでの大聖堂の建築の概念を新たにするような斬新な意匠となっており、見た者に強烈な印象を残す。
 また、建物の周囲には12メートル幅、水深40センチメートルの円形のプールがつくられており、水が張られている。これは、光を反射することで大聖堂を美しく演出するといった効果だけでなく、気化熱による自然換気によって涼しさをつくりだすことを目的としている。
 大聖堂に入る際は、このプールの下をくぐる形で地下道からアプローチをすることになる。この地下道は暗く、そこから大聖堂の内部に入ると、そこに溢れるまばゆいばかりの光に感動する。それは、見事に宗教的な空間体験である。中央には3体の天使がワイヤーロープによって天井から吊されている。これらは最大のものは4メートル以上もあり、重さも300キログラムを超える。天井は青、緑、白、茶色の16のファイバーグラスによってつくられている。この天井を透過する光が、室内に荘厳なる雰囲気をつくりだしているのだ。
 この見事な大聖堂は完成と同時にブラジリアのランドマークとなり、毎年100万人を集める観光地ともなった。ブラジリア建設50周年の2012年には、大規模な修繕が行われ、特に建設当初の天井のステンドグラスは新たに置き換えられた。

キーワード:

宗教施設, 都市観光, アイデンティティ

ブラジリアの大聖堂 の基本情報:

  • 国/地域:ブラジル連邦共和国
  • 州/県:ブラジリア連邦直轄区
  • 市町村:ブラジリア市
  • 事業主体:ブラジル連邦共和国
  • 事業主体の分類:
  • デザイナー、プランナー:オスカー・ニーマイヤー(意匠)、ホアキム・カルドーソ(構造)
  • 開業年:1960年

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

 ブラジルの首都ブラジリアの都市計画案は1957年に実施された公開コンペによってルシオ・コスタが提案したものが選ばれる。コスタは、モダニズムの伝道師であるル・コルビジェの影響を強く受けており、その案も都市を飛行機の形状で表現したもので、都市計画におけるモダニズムの理念を具体化したものであった。都市のコンセプトは南北の行政軸と弓のように湾曲する東西の生活軸、という二つの交差する軸によって定義され、軸が交差する場所に主要行政施設を配置した。その案は明瞭で、極めて直接的であり、そのため強く人に訴えかけるメッセージ性を有していた。
 そしてコスタの描いた青写真に、モダニズムの命を吹き込んだのがオスカー・ニーマイヤーである。大統領官邸、国会議事堂や大聖堂などの主要建造物を始め、多くの大使館、集合住宅を手がけた。そして、遷都が発表されてから5年も経たない1960年にブラジリアの供用は開始される。コスタの大胆な空間配置と、それをニーマイヤーの巨大な彫刻のような建築群が彩るブラジリアは、世界的にみても極めてユニークな都市となり、そのユニークさから、この都市が建設されてから30年も経っていない1987年に世界遺産として指定された。
 これら多くのニーマイヤーの作品の中で、もっとも人々に強烈なインパクトを与え、ブラジリアの都市のアイデンティティの形成に貢献したものは、このブラジリア大聖堂であろう。ブラジリアの都市機能ということを考えると連邦議事堂をあげる人もいるかもしれないが、その建築的造形の美しさとカトリック国としての存在を強く新首都において主張するこの大聖堂の存在は、ブラジルという国のアイデンティティを強烈に主張し、その都市の象徴としての役割を見事に果たしている。
 ブラジリアという構想を抱いた当時の大統領であるジュセリーノ・クビチェック、それに形としての器を描いたルシオ・コスタ、そこに都市の魂を受け入れる箱物をつくっていたオスカー・ニーマイヤー。その中でも、大聖堂という都市においての特別な存在をいかにつくるか、というのはその後のブラジリアという都市の展開を規定することになる大きな課題であった。ニーマイヤーは伝統的な宗教的価値観を見事、新しい建築的スタイル、意匠に投影させることに成功した。この大聖堂がなければ、ブラジリアという都市の性格も変わったであろう。そういう意味では、見事につぼを押さえた事業であったと考えられる。

【参考資料】
Catedral Metropolitanaの公式ウェブサイト(https://catedral.org.br)

類似事例:

109 オスカー・ニーマイヤー博物館
159 聖母教会の再建
・ サグラダ・ファミリア、バルセロナ市(スペイン)
・ クライスラー・ビル、ニューヨーク市(ニューヨーク州、アメリカ合衆国)
・ シドニー・オペラハウス、シドニー市(オーストラリア)
・ シャルトル大聖堂、シャルトル市(フランス)
・ アルハンブラ宮殿、グラナダ(スペイン)
・ メスキータ、コルドバ市(スペイン)
・ タージマハル、アーグラ(インド)