107 御堂筋イルミネーション (日本)

107 御堂筋イルミネーション

107 御堂筋イルミネーション
107 御堂筋イルミネーション
107 御堂筋イルミネーション

107 御堂筋イルミネーション
107 御堂筋イルミネーション
107 御堂筋イルミネーション

ストーリー:

 大阪の南北の都市軸である御堂筋。この梅田からなんばへと至る全長4キロメートルの街路には年末から年始にかけて、煌びやかなイルミネーションが施される。これは2009年に始まり、2014年には「最も多く街路樹にイルミネーションを施した通り」として世界記録に認定された、世界レベルでのライティングによる都市の演出プロジェクトである。
 毎年、そのデザイン・コンセプトは変わるのだが、2016年度のそれは「大阪を訪れる人々を優しく包み込む光のシンボルストリート」であった。そして、テーマは「世界でここだけのあかり:〜御堂筋でしかできない、御堂筋ならではの上等イルミネーション〜」。具体的には、御堂筋を8つのエリアに分類し、それぞれのエリアのテーマ・カラーを設定し、キタ、船場、ミナミと御堂筋が結ぶそれぞれのエリアの物語を多彩な色で表現した。例を挙げると、キタのコンセプトは「水都大阪の玄関口」でテーマ・カラーは「水都ブルー」、船場のコンセプトは「上等が似合う大大阪」でテーマ・カラーは「シャンパンゴールドミックス」、なんばのコンセプトは「なにわの祝祭」でテーマ・カラーは「御堂筋パープル」といった具合である。
 御堂筋の夜を艶やかに演出しようという企画が生まれた背景には、橋下徹氏が大阪府知事になり、「大阪を代表する大動脈が寂しすぎる」「圧倒的な都市魅力が必要だ」という問題認識のもと、大阪を代表するランドマークの御堂筋のアイデンティティを強化しようという行政的な意図があった。そして、御堂筋の鳴り物入りのコンペが企画され、その流れの中から、現在の「大阪光のまちづくり構想」や府市相乗りの組織「水と光のまちづくり推進委員会」などが形成されていく。 
「大阪光のまちづくり構想」は、照明デザイナーの面出薫がシンガポールですすめてきた「光のマスタープラン」を参考とし、都市の魅力を恒久的にプランニングすることを意図した。そして、中ノ島地区では、シンガポールをひな型に「橋梁のライトアップ」を次々と実施してきたのだが、そのような流れの中から御堂筋のイルミネーションは生まれていく。これは、橋下知事の肝煎りのプロジェクトであったため、多くの寄付金も民間から集まり、資金の半分が寄付で賄えたそうである。そして、その理念は、これをイベントで終わらせないで、都市を魅力化させるトリガーとして位置づけるというものであった。
 2009年は大阪府単独の事業であったのだが、その後、知事が替り、運営組織も変わったりするが2016年には再び大阪府主導となり、2009年から3年間照明デザインを手がけた長町志穂が再びデザイナーとしてコンペで選ばれている。そのコンペの仕様書は「その都市・場所の意味をいかに最大化できるか」という問いへの解答を求めたそうだが、この問題意識が、御堂筋イルミネーションの成功の大きな要因だったのではないかと考えられる。
 2016年度の開催日程は11月20日から年明けの1月9日まで。点灯時間は17時から23時である。

キーワード:

ライトアップ, ブルバード

御堂筋イルミネーション の基本情報:

  • 国/地域:日本
  • 州/県:大阪府
  • 市町村:大阪市
  • 事業主体:大阪府(大阪光の饗宴実行委員会)
  • 事業主体の分類:自治体 
  • デザイナー、プランナー:長町志穂+LEM空間工房
  • 開業年:2009年

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

 大阪は東京に次ぐ大都市である。正確にいえば、人口は既に横浜市の方が多いので人口面では第三の都市であるが、東京の衛星都市としての性格を有する横浜市と違い、大阪は関西地方の中心都市であり、その都市の格は横浜ではとうてい及ばない。
 その大阪の都市のシンボルともいえるのが御堂筋である。御堂筋のような立派なブルバードは、日本では東京をはじめ他都市には存在しない。パリのシャンゼリゼ、ニューヨークのブロードウェイ、ウィーンのリングシュトラッセ、メキシコシティのリフォルマ通りとも比肩できる数少ない本格的な象徴性のあふれるブルバードである。
 しかし、この御堂筋はミナミの地区は華やかではあったが、中央部分はビジネス街で、特に夜間になると人通りも少なくなり、どこか寂しい印象を人々に与えていた。そういう意味で、この御堂筋をライトアップという空間を艶やかに演出する事業を始めたことは、大阪の魅力を表現し、それを人々に広く認識してもらうためには効果覿面であった。
 単に道路空間だけでなく沿道の建物や寺社、またはランドマーク等もライトアップすることで、御堂筋という回廊全体の夜間景観を見事に演出している。特に村野藤吾設計の梅田吸気塔、1933年につくられ大阪大空襲の被害を免れた歴史的建築物ガスビル、南海ビルは昼とは異なった、ある意味で新しい大阪の景観を創出したといえるような効果をイルミネーションはもたらした。都市の魅力を向上させるために、夜間照明という方法論がまさに「都市の鍼治療」であることを示した優れた事例であると考えられる。

類似事例:

162 シンガポール中心市街地照明マスタープラン
・ 中之島地区「光のマスタープラン」、大阪市(大阪府)
・ 光の祭典、リヨン市(フランス)
・ 税関線(フラワーロード) のライトアップ、神戸市(兵庫県)