067 シュヴェリーンの連邦庭園博覧会(ドイツ連邦共和国)

067 シュヴェリーンの連邦庭園博覧会

067 シュヴェリーンの連邦庭園博覧会
067 シュヴェリーンの連邦庭園博覧会
067 シュヴェリーンの連邦庭園博覧会

067 シュヴェリーンの連邦庭園博覧会
067 シュヴェリーンの連邦庭園博覧会
067 シュヴェリーンの連邦庭園博覧会

ストーリー:

 連邦庭園博覧会は、ドイツで開催される庭園の博覧会であり、斬新なランドスケープ・アーキテクチャーのアイデアが展示される場でもある。1951年にハノーファーで第一回目が開催されて以来、二年に一度のペースで、各都市で開催されている。ドイツの都市における公園は量・質ともに日本に比べて優れていると思われるが、その背景には、この庭園博覧会のような公園整備を推進させる仕掛けが存在するからだと思われる。
 23回目を数える連邦庭園博覧会2009は、ドイツのメクレンブルグ・フォオペメルン州の州都シュヴェリーンにて4月23日から10月11日にかけて開催された。同市は、ドイツ16州で最も人口規模が小さい州都であり、わずか9万6千人の人口しか擁していない。「七つの湖の街」とも呼ばれており、都市の周囲を7つの湖と森林が囲んでいる。最も有名なランドマークはルネッサンス様式のシュヴェリーン城である。
 連邦庭園博覧会は、この城をメイン会場として、その周辺に7つの異なる性格の庭園を配置した。会場の総面積は55ヘクタールと東京ディズニーランドの51ヘクタールよりも広大であるが、これまでの同博覧会の会場に比べると小規模の部類に含まれる。コンセプトは18世紀から現在にまで及ぶ庭園デザインの歴史を展示するというものである。それらは、それぞれ「21世紀の庭園」、「宮殿の庭園」、「城の庭園」、「キッチンの庭園」、「湖畔の庭園」、「自然の庭園」、「厩舎の庭園」と命名されている。シュヴェリーン城は、湖に囲まれており、したがってここを中心とする展示は必然的に湖を借景とした庭園デザインとなる。そのため、景観的にはドラマチックな演出がなされ、ユニークな空間体験をすることができる。 
 そして、シュヴェリーン市では博覧会に間に合うように道路ネットワークを整備し、「城の庭園」、「宮殿の庭園」が修復された。さらに、シュヴェリーン城のファサードも修復した。特に「宮殿の庭園」周辺は、道路も一部撤廃されたりするなど大規模な都市空間の改変が行われている。そして、何より重要なことは、それまで旧市街地から湖畔へのアクセスは極めて限定されていたのだが、この博覧会に合わせて湖畔を公共空間として整備することに成功した。それは、シュヴェリーン市民にとって大切なことであると同時に、新たな観光資源を開発するという観点からも極めて重要であった。

キーワード:

博覧会,景観デザイン,イベント,都市開発

シュヴェリーンの連邦庭園博覧会の基本情報:

  • 国/地域:ドイツ連邦共和国
  • 州/県:メクレンブルク・フォアポメルン州
  • 市町村:シュヴェリーン市
  • 事業主体:シュヴェリーン市
  • 事業主体の分類:自治体 
  • デザイナー、プランナー:Jäger Jäger 等
  • 開業年:2009

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

 連邦庭園博覧会は地域経済に大きな果実をもたらす。2009年はシュヴェリーンという交通が不便な場所で開催されたために集客力は大きくはなかったが、連邦庭園博覧会は6〜7ヶ月の開催期間で平均して300万人が訪問する一大イベントとなっている(表参照)。1951年以来、連邦庭園博覧会へ訪れた人は延べ1億4000万人にも及ぶ。
  連邦庭園博覧会の特徴は、数少ない事業採算面で成立する観光イベントであるということだ。博覧会開催中は様々なマスメディアを通じて報道されたこともあり、シュヴェリーンの国内外の認知度が向上し、マーケティング面では大成功をもたらした。特に会場を市内の中心に配置したことで、シュヴェリーン市における宿泊業の同博覧会の開催期間の7ヶ月間の売り上げは、年間の売り上げの80%を占め、また同期間の宿泊者数は前年に比べると2倍以上になったという。これはシュヴェリーン市だけではなく、周辺の地域でも前年よりは40%は増えたそうだ。市への観光客数も前年より80%ほど増えた。また、博覧会開催期間だけでなく、同博覧会を開催したことで都市のブランド価値が上がるという効果も期待できる。
 都市計画家達は、同博覧会を将来への投資とみている。この50年間、連邦庭園博覧会を開催した都市は、同博覧会を契機として空間を大きく変容させることに成功している。同博覧会が開催される都市は、通常多額の補助金を得ることができるので、これを契機として、将来的にその地域が発展するように都市計画を策定し、都市改造することが可能となるためである。
 シュヴェリーンでは、特に湖畔へのアクセス、ポテンシャルが高い城周辺の公園の整備、そして道路ネットワークの再編成といった都市計画的に重要な課題を、この博覧会という「鍼治療」で一挙に遂行してしまったのである。この博覧会によって、シュヴェリーンの都市としてのポテンシャルは一段階も二段階も上昇したのではないかと考えられる。

類似事例:

209 ノルドシュテーン・パーク
・ IBAエムシャー・パーク、ルール地方(ドイツ)
・ IBAハンブルグ、ハンブルグ(ドイツ)
・ ハノーファー万博、ハノーファー(ドイツ)
・ エリザベス・オリンピック・パーク、ロンドン(イギリス)