ハイライン (High Line)

ハイライン (High Line)1

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ハイライン (High Line)6
ハイライン (High Line)7


キーワード:

アイデンティティ, 市民参加, アメリカ合衆国, 都市公園

鍼レベル:

ストーリー:

 ハイラインはニューヨークに新しく出現した公共空間であり、また観光スポットである。それは、マンハッタンの西側、ハドソン川沿いにて放置されていた元高架貨物鉄道の跡地を公園として再生したものだ。ハイラインは既に1960年頃から使われなくなり、その後、雑草が生い茂り、なかなかワイルドな自然があることで一部の住民に知られるところとなっていた。この鉄道跡地をニューヨーク市は1999年に撤去することにしたのだが、この跡地を公園に転用するというアイデアを2人の青年(ロバート・ハモンドとジョシュア・デービッド)が実現させるために動き始め、同年にフレンド・オブ・ハイラインというNPOを設立し、多くの賛同者を募る。さらに、著名な写真家ジョン・スターンフェルドが「ハイライン」という写真集を2000年に発刊することで、この忘れられた場所は多くの人に知られることになり、遂に2人の青年の構想はニューヨーク市長も動かすことになる。その結果、2004年にはここを公共空間として整備するための予算(約50億円)が確保された。一般市民にハイラインが公開されたのは、2009年6月8日のことである。区間は12ストリートから20ストリートの8ブロックであった。
この歩行者中心の回廊型の新しいオープン・スペースは、マンハッタンの摩天楼のスカイラインを眺める絶妙なる視座を提供すること、また元高架鉄道跡であるために、まったく自動車に邪魔されずに自由に大都会の空中散歩ができるということもあって、大いなる人気を博し、10ヶ月で200万人が来訪した。2年後の6月8日には20ストリートから30ストリートまでの10ブロックが開業した。そして、2014年の秋には30ストリートから34ストリートまでの4ブロックが開業し、ジャヴィッツ・コンベンション・センターまで2.3キロメートル途切れることなく地上9メートルの高さを歩けるようになった。
このハイラインの完成によって、ここはメトロポリタン美術館に次ぐマンハッタン二番目の観光地となった。2014年の年間利用者は620万人にまでなっている。また、周辺地域の再開発を促し(2009年時点でも30箇所以上)、犯罪率を低下させている。結果、倒壊するより、公園として整備した方がずっと安上がりであったことが明らかとなった。
 現在のハイラインは、鉄道会社から市に寄付される形で、ニューヨーク市が所有している。その管轄は公園・レクリエーション部であるが、運営はフレンド・オブ・ハイラインが市と契約を結んで行っている。年間の運営維持管理費用は約1000万ドルに及び、その維持管理費の70%はこのNPOが供出している。

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

 ハイラインを訪れる。まずランドスケーピングの上手さに唸らされた。ランドスケープ・アーキテクトのジェームズ・コーナーは、この場所が持つ自然美をよく理解していると感心させられる。実際問題としては、このハイラインは土を50センチ以上の厚さで敷くことができず、植物が育つ環境としては相当、劣悪である。そのため、タフでない植物でないと生育させることも厳しいという条件があるのだが、そのような雑草のような植物の方が元ブラウンフィールドであったハイラインの景観にはマッチしていると思われる。
 お洒落というか意匠に凝ったベンチが多く設置されていたり、ちょっとした展望スポットなどもつくられるなどして、新たなる人々の憩いの空間が創出されたことで、ニューヨークの魅力がまた向上したのではないかと思わせる。このハイラインは最近、ナイトライフとして人気が出ているミート・パッキング地区を縦断する。これらとの相乗効果によって、この地域一帯の魅力がアップしている。ニューヨークの豊かさは公共空間に負うところが大きい。このちょっと風変わりでユニークな新しい公共空間は、またニューヨークの都市の格を向上させることに成功したのではないかと思う。
 そして、ハイラインからのニューヨークの高層ビル、そしてハドソン川とその対岸のニュージャージーの街の展望の素晴らしさに感心する。ハイラインのもう一つの魅力は自動車を気にせず、ちょっとした空中散歩気分でニューヨークの街並みとハドソン川を観ることができることだ。視座が変わるので、今までにはない視点で摩天楼が望めることができる。エンパイヤ・ステート・ビルが目立つが、時折顔を出すクライスラー・ビルもいい。また、沿道には興味深い建築が立つようになっており、それもこのハイラインの魅力を高めている。いかにもという感じのフランク・ゲーリーのオフィス・ビル、その後ろにはジャン・ヌーヴェルのビル、ニール・デナーリの集合住宅などである。
 興味深いのは犯罪率がニューヨークとしては極めて低いことである。公園のルール違反(例えば、犬の散歩、歩道での自転車走行)などもセントラル・パークに比べてもずっと少ないそうである。ジェイン・ジェイコブスが50年以上前に、都市空間は可視度が高いほど安全であると「A Death and Life of Great American Cities」で述べているが、まさにその仮説が実証できるような成果となっている。
 それまで使われていなかった鉄道高架跡地を、都市が絶望的に必要とする緑地空間、そして散歩ができる公園として整備することで、ニューヨークという世界的大都市の魅力をさらに向上することに成功した、絶妙なる「都市の鍼治療」であると思われる。

事業主体:

フレンズ・オブ・ハイライン

事業主体の分類:

市民団体

デザイナー、プランナー:

Robert Hammond (Planner), Joshua David (Planner), James Corner (Landscape Architect)

開業年:

2009年(第一期)、2011年(第二期)、2014年(第三期)

類似事例:

088 ジズコフ駅(Zizkov Station)の再生プロジェクト
096 カルチャーセンター・ディーポ、ドルトムント(ドイツ)
102 観塘工業文化公園(香港、中国)
136 プロムナード・プランテ、パリ(フランス)
・ロウライン、ニューヨーク(ニューヨーク州、アメリカ合衆国)
137 チェスターの城壁、チェスター市(イギリス)
・ルール地方バイシクル・ルート、ルール地方(ドイツ)

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国:アメリカ合衆国
州・県:ニューヨーク州
市町村:ニューヨーク市