旭川駅

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キーワード:

再開発 ,場所(Places) ,日本 ,鉄道駅

ストーリー:

 旭川駅は人口30万人以上の大都市の玄関口であるのだが、北側に集中して発展をしており、南側は忠別川に妨げられ、また国鉄用地であったこともあり、まったく利用されずに片側飛行のような状態で長らくいた。
 そこで、この忠別川サイドの開発も含めた駅を中心とする再開発事業を旭川市は1990年頃から手がけ始める。その規模は85ヘクタールと極めて広大なものであったが、その中核に据えられたのが旭川駅であった。そして、再開発事業によって豊かな都市空間を実現させるために、鉄道の新しい線形を極力忠別川に寄せ、北側駅前広場をアメニティ溢れる公共空間として整備するとともに、新しい駅舎を、忠別川をはじめとする雄大なる自然環境の中に置くこととした。これによって、第四代旭川駅は「川のある駅」という、ちょっとユニークな特性を有する駅となった。
 駅舎の基本デザインは、検討当初よりガラスによるファサードにすることになっていたが、そのフォルムは四叉柱(4本の鋼管で構成)による大屋根を採用した。これは、フラットな大屋根を四叉柱20基により支えるということで、全長180メートル、幅60メートル、高さ12.5メートルというダイナミックな内部空間を実現することができている。
 新しい旭川駅は、他都市の駅に見られるような商業利用をメインとするものではなく、公共的な利用がされることを優先した。そして、駅に設置される公共施設は、情報発信の場でもあり、交流の場でもあるような広義としての広場として機能することが強く意識された。これは、駅の中心に商業施設ではない公共施設を立地させることで、より多様な人に利用してもらい、それによって賑わいが創出され、市民にも愛着を持ってもらえると考えたからである。
 感動的なのは、北側の東口の軸線はそのまま昭和通りの軸線と重なり、西口の軸線はそのまま平和通り買物公園の軸線と重なるように線形計画が為されていることである。特に、西口の軸線は、何の障害もなく一直線に歩行することができる。さらに、駅側に振り向けばたまごのような印象的なオブジェが置かれている。このように空間に秩序をしっかりともたらせることは、都市デザインの極めて重要なことであるにも関わらず、再開発事業などでは、いろいろな既得権などもあり実現が難しい。線路の線形を変更させるなど、空間整序を優先的に捉え、短期ではなく長期的なビジョンから、この駅を設計した。それは、多くの妥協を許さないデザイナー達の胆力が問われるような交渉を経て、初めて実現できたことなのではないかと推察する。そして、その結果は、旭川市の象徴として素晴らしい公共施設であった。
 この建築を設計した内藤廣は、「ガラスを通して見える忠別川の美しい風景、買物公園の人のにぎわい、それらとともに、大きな木の壁を基調とした内部空間は、全国的にも類を見ないまったく新しい駅の空間である。手前味噌になるが、これだけの空間密度を持った駅舎は、世界的にみても例がないと思う」(『川のある駅』北海道旅客鉄道(株)・旭川駅に名前を刻むプロジェクト実行委員会)と述べている。日本が世界に誇れる素場らしいプロジェクトである。
 駅舎は2011年11月に完成した。

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

 旭川駅は、その事業規模、またそれが完成するまでの期間の長さを考えれば「都市の鍼治療」と呼べるようなものではない。しかし、旭川駅はさらに大規模な「北彩都あさひかわ」という巨大プロジェクトの一事業であり、この巨大プロジェクトにおいてはまさに肝、外すことのできない「ツボ」であり、それを強く意識した都市計画的な観点から計画は遂行された。
 建築としての象徴性もさることながら、それは旭川という30万都市の象徴であり、そのシンボルとして機能するためには、建築として素晴らしさだけではなく、市民に愛着をもってもらうこと、自分との関係性があることを理解してもらうことが必要である。そのために旭川駅では「旭川駅に名前を刻むプロジェクト」を実施した。
 これは、駅舎内装壁材の下見板に名前を刻印するという事業で、2009年7月に実行委員会が設立され、2009年10月から2010年1月まで市民に広く募集を行った。そして、1万人の応募者は、タモ板材へレーザーによって名前を刻印し、駅舎建設現場で一枚ずつ板を張る工事を行い、2010年10月には除幕式が行われた。
「北海道広葉樹の貴公子」ともいわれる旭川の木材「タモ」を利用した温かみのある空間は、旭川のヴァーナキュラーが感じられる、また、四叉柱による構造は柱を少なくし、大聖堂のような大空間を生み出した。設計、意匠、構造のすべてが極めて高いレベルに位置づけられ、しかもマクロ面での都市計画的にも、さらには地域文化的にも正解を導き出した。
 そして、この旭川駅が、旭川の持つ様々な都市の課題に対して正解を出したことによって、「北彩都あさひかわ」という100年の計の大事業が見事に動き出したのである。そのように捉えると、規模は極めて大きい事業ではあるが、「都市の鍼治療」の事例として加えたい、絶妙なツボ押しプロジェクトであると考えられる。

事業主体:

旭川市、JR北海道

事業主体の分類:

自治体, 民間

デザイナー、プランナー:

内藤廣(建築意匠)、加藤源(都市デザイン)、川口衛(構造設計)

開業年:

2011年

類似事例:

・ セント・パンクラス駅、ロンドン(イギリス)
・ 由布院駅、由布院町(大分県)
・ グランドセントラル・ステーション、ニューヨーク(ニューヨーク州、アメリカ合衆国)
・ キングス・クロス駅、ロンドン(イギリス)
・ ユニオン・ステーション、セントルイス(ミズーリ州、アメリカ合衆国)
・ ライプツィヒ中央駅、ライプツィヒ(ドイツ)
・ ショッピング・エスタソン、クリチバ(ブラジル)
・ 新・岩見沢複合駅舎、岩見沢市(北海道)
・ 東京駅、千代田区(東京都)
・ アンダーグランド・アトランタ、アトランタ(ジョージア州、アメリカ合衆国)

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国:日本
州・県:北海道
市町村:旭川市