研究レポート③少子化と結婚意識について

《はじめに》

 「少子高齢化社会」においては、日本の場合、団塊世代や団塊ジュニア世代といった人口ボリュームの大きい世代との関係で、逆ピラミッドの人口構成比が色濃くなる。個人において高齢、つまり長生きすることは本来望まれることであるが、「自らの子どもや社会に迷惑を掛ける」といったことを気にする高齢者も実は少なくない。
 少子化の進行は高齢者を支える人数の減少といった視点のみならず、日本全体の経済規模の縮小、地方での過疎化の進行による様々な社会問題を引き起こしていることは事実である。言い過ぎかもしれないが、日本人がいなくなる未来といったことが待ち受けていると感じる人もいるだろう。
 少子化について掘り下げて考えると、母集団となる親世代(ここでは団塊ジュニア以降の年代)が既に減少傾向にあり、少なくなった母集団の子どもの世代において、非婚化が進むこと、子どもを儲けたいと思わないこと…、これらについては、国家や地方自治体において大きな課題として位置付けられていることは間違いない。また、様々な施策が展開されていることも我々は知っている。
 しかし、どうだろうか、結婚することで幸福感は高まるのであろうか、子どもを儲けることは幸せなのだろうか。また、その子どもたちの未来には自分(親世代)よりも幸せな社会が待っているのだろうか…。人は今を生きることで精一杯と言っても、多少は将来の幸せ、子ども世代の幸せといったものに希望を持つものであると仮定すれば、果たしてそれらを満たす社会となっているのだろうか。
 少子化社会の根幹にある「結婚したい」という意識の低下改善について、現状における様々な施策を否定しているのではなく、根幹にある社会に対する受け止め方、 実態といったものについて今回取り上げ、考察を試みたい。

《少子化の実態》

少子化の要因として、以下の4つについて簡単に触れておきたい。

1.親世代から続く子ども世代の減少

 日本の総人口が減少傾向にあることは周知の事実であり、この母集団となる人口減少を重く受け止めなくてはならない。ただ、東京都に限って言えば、「東京一極集中」とも言われるように、転入者(外国人も含む)が転出者を上回る。特に、進学や就職での地方からの若い転入者が多いため、死亡者数が多くなる自然減を他県からの流入、つまり社会増が上回っている。但し、これも2030年がピークではないかと予測されている(東京都の人口予測【令和5年公表】)。

2.非婚化

 非婚化に関しては様々なデータがある。その中で、国立社会保障・人口問題研究所のデータ「男女、年齢、配偶関係別人口割合」より抜粋して作表したものが図1である。

 30代前半、40代前半、50代前半と3つの年代を1950年から2020年まで10年単位のスコアを比較しているが、一目瞭然、非婚化は進んでいる。
 非婚化の要因とは何であろうか、バブル経済の崩壊、失われた30年といった時代や社会を形容する言葉もあれば、パソコンや携帯電話・スマートフォンの社会への浸透といったことなど、社会事象やパーソナルな世界観やコミュニティの在り方など、急速な変化が我々に押し寄せたという事実にも着目すべきであろう。

3.子どもの数の減少

 図表2は、2021年社会保障・人口問題基本調査(結婚と出産に関する全国調査)『現代日本の結婚と出産』(国立社会保障・人口問題研究所)より抜粋して作成したものである。

 図表2の中の数値は、調査時において結婚持続期間15~19年、初婚どうしで妻の年齢が45~49歳の夫婦の出生子ども数である。2002年以降、減少傾向にあることを示している。同調査の2021年調査において、最も多い子ども人数は変わらず二人であるが、一人が2002年の8.9%に対して19.7%と倍増している。子どもがいない夫婦も3.4%から7.7%へと増加している。結婚をしている世帯において、子ども二人が多数派ではあるが、子ども一人、もしくは子どもを儲けないといった世帯の構成比が増加中である。この要因は様々であると思われるが、子育てが大変だという声には、時間の問題、経済的な問題、そして社会的な構造(支援)の問題、これらは容易に想像されることであろう。

4.婚外子の少なさや移民受け入れ

 国の文化的な背景の違い、移民の受け入れ状況によっても、出生率は影響を受ける。
 「出生率の高いフランスではパクス(PACS、連帯市民協約)、スウェーデンではサムボ(同棲)といった結婚よりも関係の成立・解消の手続が簡略で、結婚に準じた法的保護を受けることができる制度がある」、「我が国では、外国人住民の方が自国出生者よりも、出生率が低い傾向にあるが、諸外国では逆に外国人住民の方が出生率の水準が高い傾向がある」といった記述もある。【引用:令和5年度年次経済財政報告 第2章少子化と家計経済2-1コラム『出生率を国際比較する上での留意点』】
フランスのパクスは、1999年11月に民法改正によって施工された。四半世紀が経過しており、社会的な評価、必要性などが定まりつつあると思われる。同性間においても異性間においても利用できる制度であるが、現在は圧倒的に異性間での利用がなされている。

《研究テーマ:「いずれは結婚したい」という意識を高めるもの》

日本における少子化という視点からは、選択の自由はあるものの、やはり結婚しているという母集団を増やすことが重要であると言わざるを得ないだろう。そこで、結婚意向に関する現状について調べることとする。
 都市生活者意識調査(2024)の質問に、未婚者を対象にして「いずれは結婚したい」についてYes、Noの回答を求めているものがある。この項目を目的変数とし、いくつかの仮説をもとにそれに影響を与える変数(独立変数)をもうけて、二項ロジット分析を行うこととする。
 仮説検証という形式ではなく、性別、年代(18歳~29歳、30歳~39歳、40歳~49歳、50歳~59歳の4段階)、正規社員か否か(正規社員ダミー)、異性の友人の数(量的変数)、そして中流意識(上流を5とする5段階:下流→中流の下→中流の中→中流の上→上流)の影響について分析した。これらが「いずれは結婚したい」という目的変数に影響しているかは図表3の通りである。黄色の網掛けが5%水準で有意と言える。
男女における差は有意ではなく、親しい異性の友人知人の数も有意ではない。
 つまり、性別や異性の交遊関係の量的な側面における違いは、「いずれは結婚したい」という意識には有意な影響は与えていない。
 年代を4つに分けて比較すると、年代が上がるとともに結婚意識が低下している。表現が適切かどうか分からないが、年齢を重ねることで、結婚をしなくてもいいという意識が高まるという傾向にある。また、正規社員であるかどうかも結婚意識に影響している。正規社員であることによってというより、正規社員でなければ、結婚ということを遠ざけるような意識が働いていると推察される。また、中流意識を5段階で自己評価したものの影響をみている。個人年収の比較を試みるかどうか悩んだが、個人年収は年齢(年代)に比例するところもあるので、主観的な指標となるが、中流意識を用いてその影響をみた(また、アンケートにおいて個人年収について無回答者も増えることもあり、中流意識を選択した)。結果的には、中流意識が有意に影響していることが分かった。中流意識のオッズ比[Exp(B)]をみると、1段階上昇すると1.229倍結婚意識が高まる、2段階だと1.229×1.229で1.510となり、正規社員のオッズ比1.461を上回る。つまり、例えば中流の下から中流の上へと自己評価が変わることで、正規社員であるということよりもその影響は高いこととなる。
 総合的にみると、やはり若い時に正規社員で採用され、自己に対する中流意識(≒平均以下ではないという意識)が高まることで、結婚意識(「いずれは結婚したい」)も高まると言えそうだ。