第4回:都市生活者の
未来展望

2025年4月13日から10月13日までの184日間にわたり開催されたEXPO2025大阪・関西万博には一般来場者累計約2,558万人の方が訪れ、2,820万人と予想されていた来場者数には届かなかったものの、多くの話題や知識を提供してくれました。
「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに様々な展示やデジタルを活用した試みが行われましたが、1970年の万博で提案された「未来の社会やくらし」のような、未来が楽しみになるようなワクワク感や期待感といった感覚が得られた、という声はあまり多くないようにも感じられます。
背景には、1970年代に比べ圧倒的に増えた情報量や、情報伝達フォーマットが文字中心から画像・動画へと変化したことにより、「どこかで見たことがある映像表現」や「なんとなく知っていた」という感覚を抱かせられたことがあったのではないでしょうか。これまでに見たこともないようなあっと驚く提案を期待するのは、平和な環境下にある成熟社会ならではの贅沢な要望、なのかもしれません。
都市生活者意識調査でも、「近未来に社会がどのようになるか」として近未来の予測を聞いていますので、その結果を見ることにしましょう。

まず、どのような項目についての近未来予測を聞いているか一覧でご覧ください。

身近な生活に直結したものから世界全体の環境を含むものまで、全29設問で幅広く聴取しています。
各設問への回答は「なると思う・ならないと思う・わからない」の3択となっておりますので、その構成比の傾向で設問をグルーピングして確認していくこととします。

①「なると思う」人が多い選択肢

近未来にそうなるだろう、と考える人が多かった選択肢の回答を見ていきます。
実は、「なると思う」と答えた人が「ならないと思う」と答えた人より多かった選択肢は29設問あるうちの3つしかありませんでした。

一つ目の選択肢が、「AIの進化により人間の代わりに機械が働く社会になる」という選択肢で、全選択肢中最も高い割合で「なると思う」と答えられています。2022年に画像生成AIのDALL·E 2が登場、それとほぼ時を同じくして対話型生成AIのChatGPTが登場したことで、AIの利活用シーンが一気に変化し、利用ハードルが大きく下がったのも記憶に新しいところです。

AIと同様に「なると思う」と答えた人が多かった二つ目の選択肢が、「情報化社会になる」という選択肢でした。

回答傾向は「なると思う」の割合が毎年低下し、「ならないと思う」が増加していますが、2007年にiPhoneが登場してからもう18年経過しており、「世界とつながる」と聞いて感じるつながりの度合いが年々具体的になってきたため、などの影響があるのかもしれません。

そして、三つ目の選択肢は、「高齢者・障がい者が自由に移動ができる」という未来。なると思うと回答した人が多かった選択肢です。

しかし、22年度の回答から「ならないと思う」人が増えた結果、「なる」「ならない」がほぼ同率となっています。
東京30km圏ではバリアフリー化は進んでいるという印象がありますが、公共交通を中心にバリアフリー化が進んだ結果、よりきめ細かい対応が必要なポイントが目立つようになってきたから、というような、進化したからこその回答結果なのかもしれません。

②「ならないと思う」人が多い選択肢

そのような未来にはならない、と答えた人が多かったのはどのような選択肢だったでしょうか。29項目中、先ほど見た3項目以外の26項目は「そうならない」と答えた人のほうが「そうなる」と答えた人よりも多い回答でした。
「そうなる」と答えた率から「そうならない」と答えた率を引いた数値が高かったものトップ3を見ていくことにします。

「そうなる-そうならない」の値が最も低くなったのが、「税や社会保障負担が低い社会」です。手取り収入に直結する項目でもあり、そうならないという回答の割合がほぼ一貫して高い割合で推移しています。

次に「そうなる-そうならない」の値が低かったのが、「若者・子供に負担がかからない社会」でした。

3番目に「そうなる-そうならない」の値が低かったのが、「犯罪のない社会」です。

オレオレ詐欺、闇バイトなど毎年新しい犯罪が登場し、国境を越えた犯罪も目立つようになっている中、このような結果になるのも仕方がありません。

③世代間ギャップが大きい未来

若者層、中年層、年配層に分けた時、回答傾向が違うものを見ていきましょう。
若年層が「そうなる」と答えた割合が高く、それ以外の年齢層が「そうなる」と答えた割合が低かったもののトップ3をピックアップしました。

最も差が大きかったのが「道徳や規律・責任が重んじられている社会」です。

若年層に対し50-60代の年配層の値が低くなりました。若年層の考える道徳や規律と、年配層の考えるそれが異なっている、ということがあるのかもしれません。

次に差が大きかったのが「すべての人に機会が与えられる社会」でした。

若年層だけが「そうなる」と答えた率を大きく伸ばしています。
24年調査時にこの項目が大きく伸びるようなトピックスはなかったので、今後似た傾向が続くのか24年度のみ数字が高かったのかはわかりませんが、このような未来が来るという希望があるのはとてもよいことと思います。

3番目に大きな差が出たのが「経済的ゆとりがなくても、自分らしい暮らしのできる社会」です。

若年層だけが「そうなる」という割合を伸ばしました。
若年層には何か年配層とは違うチャンスが見えているのかもしれません。

ここまで都市生活者の未来予想を見てきました。
身近なところから世界レベルまで、幅広く未来予想を聞きましたが、「そういう未来にはならない」と答えた人が多い回答が大半でした。
提示された選択肢はどれも「明るい未来」ばかりでした。そうはならないと答えた人が多いということは、明るい未来が見いだせていないという意識の表れなのでしょうか。
もしくは、選択肢の中にはない「これまで考えられたようなものではない新しい未来の選択肢」を提示されることを望んでいるのかもしれません。