研究レポート②家庭意識におけるジェンダー比較

《はじめに》

 ジェンダー比較といえば、ジェンダー・ギャップ(指数)を想起する人も多いのではないだろうか。世界経済フォーラム「グローバル・ジェンダーギャップ報告書」(2025年6月12日)によると、日本の順位は148か国中、118位と低位である。経済参画と政治参画の比率が低く、特に政治参画の低さ(例えば国会議員の男女比など)が明らかであり、誕生したばかりの高市総理に期待するところは大きいことは間違いない。
 政治や経済といった側面における女性活躍が重要であることは間違いない。ただ、本研究では、もっと身近な家庭に関する意識についてのジェンダーによる違いをみてみようと考えた。それには、その前提となる事実、実態を認識する必要がある。令和3年社会生活基本調査1によると、家事関連(家事、育児、買い物、介護・看護)に充てる時間(週単位の1日平均の時間)が男性51分に対し、女性3時間24分と大きな差がある。更に、6歳未満の子供を持つ夫は育児時間が伸びて1時間54分、妻は7時間28分となり、更に差は拡大する。これらの事実を認識しておく必要があるだろう。
 本レポートにおいては2024年に実施した都市生活者意識調査の中で、「家庭に対する意識・態度」に関しての質問項目を利用した。質問文は「家族について、あなたの考えにあてはまるものをすべてお知らせください」であり、26の設問についてマルチアンサー方式で回答を求めている。調査の有効回答数は1477サンプルである。対象は東京30㎞圏内に在住の18歳から79歳の一般男女である。

1 総務省統計局:5年おきの調査(回答者数は約18万人、次回は令和8年実施予定)

《本レポートの目的》

 ジェンダー・ギャップ指数や生活時間の格差を認識したうえで、ジェンダーによる違いを特に身近な家庭、家族観にフォーカスをあてて分析を行い、考察を試みることとする。
 上記に記したように、都市生活者意識調査2024の中の「家庭に対する意識・態度」を使用する。26の選択回答項目の中で全体の30%以上が該当すると回答している11の項目を用いて、それらにおけるジェンダー比較を試みる。基本的には、全体(18歳~79歳:男性737名女性740名)で比較、有意差検定を行っている。フォーカスした項目については、年代間の差もみており、18歳~39歳(男性265名女性266名)、40歳~59歳(男性289名女性280名)、60歳~79歳(男性183名女性194名)の3グループである。
 以下に用いた11の項目を列記する。また、その内容から2つに分類している。「子育て」「家事、家族観」の2つである。後者は老後の生活なども含んでいる。この2つのカテゴリーを紹介し、それぞれの中でのジェンダー比較の結果から考察を行いたい。

1.「子育て」に関する項目
・子どものしつけは親の責任だと思う
・子どもは、それぞれの個性を発揮して育つのが良いと思う
・子どものネット利用について、親はきちんと教育すべきだと思う
・男性も責任をもって子育てをするべきだと思う
・子どもを育てにくい世の中になっていると思う

2.「家事・家族観」に関する項目
・家事は家族で分担するべきだと思う
・老後は子どもには迷惑をかけたくないと思う
・自分の生きてきた時代より、これからの子どもたちの環境は厳しいと思う
・夫婦でも性格が合わなければ無理して結婚生活を続ける必要はない
・高齢になっての単身生活は不安である
・初婚や再婚を問わず、年老いてからの結婚も良いと思う

《調査結果と考察》

1.「子育て」に関する項目

図表1 「子育て」に関する項目(調査対象者全体)

 上記5つの項目において、各々男女の違いに有意差はあるかを検定(Pearsonのカイ2乗検定)を行った。図表1の男女の差異からも分かるように、「子どものしつけは親の責任だと思う」以外の4項目で有意な差がみられた(5%水準)。特に「男性も責任をもって子育てをするべきだと思う」は男性34.19%、女性45.54%と10%以上の差があり、女性の数値が大きく上回っている。ジェンダーの違いによる性別分業の実態を直視している女性の意識が伺えるのではないだろうか。時間的には男性の子育てに参加する時間は伸びているものの2、依然として女性の負担が大きい(時間的にも長い)ことによる結果と類推される。男女が同じ意識に立ち、子育て時間(≒子育て責任)において同レベルになるには、まだ時間を要するということだと思われる。言うまでもないが、そういった状況を導くためにも、社会全体や企業内の仕組みなどにおいて、価値意識や就業スタイルの更なる変革が必要とされていると思われる。
 図表1の「男性も責任をもって子育てをするべきだと思う」を年代別に分け、図表2を作成した。図表2は若い年代(18~39歳)、実際に子育てや老後を意識し始める年代(40~59歳)、老後生活の中にある、もしくはその直前にある年代(60~79歳)の比較である。各年代の違いによって、育った環境の違い、親子関係の違い、子どもの独立など、子育ての終了による環境変化などの影響が想定されるが、図表2の通り、どの年代においても、男女差はみられるが、年代間の差はみられない(有意差はなかった)。特に女性に関しては、全て45%台であり、年齢間の違いがほぼない。

 図表2 「男性も責任をもって子育てをするべきだと思う」の回答【性・年代別】

2 前出の「令和3年社会生活基本調査」による

2.「家事・家族観」に関する項目

 図表3 「家事・家族観」に関する項目(調査対象者全体)

  図表3が示すように、合計値で30%以上が回答(該当)した項目は上記の6つである。折れ線が示す男女の差異からも分かるように、女性の該当率が高く、全ての項目で有意な差がみられた(5%水準)。最も男女の差が大きいのが「夫婦でも性格が合わなければ無理して結婚生活を続ける必要はない」である。次いで「初婚や再婚を問わず、年老いてからの結婚も良いと思う」である。男女差の大きい1位と2位が結婚や離婚に関する考え方とでも言おうか、皮肉な結果とも思える。女性においては、結婚観が現実的というべきか、男性においては保守的とも言えるかもしれない。そこで、「夫婦でも性格が合わなければ無理して結婚生活を続ける必要はない」において、年代間の比較を示したのが図表4である。ご覧になってわかるように、男性は年代間の差が少なく平坦である(青色の折れ線)。それに比較して、女性(赤色の折れ線)は40歳~59歳において高く、60歳~79歳との間では有意な差(5%水準)がみられた。参考までに付け加えると、未婚者(一度も結婚していない人)の占める割合は18歳~39歳で女性66.2%、男性73.6%、同様に40歳~59歳で女性33.6%、男性45.0%、60歳~79歳で女性14.9%、男性14.2%である。

図表4 「夫婦でも性格が合わなければ無理して結婚生活を続ける必要はない」の回答【性・年代別】

3.まとめ

 全11項目中、10項目において女性の該当率が有意に高いという結果が示された。子育てや家事の役割り、ある意味では責任感の強さとも言える。そして、結婚や離婚といったことにも敏感であり、やがて老後においては子どもに迷惑をかけたくないという意識・自覚も強い。ジェンダーを研究すると女性の置かれている状況の厳しさを感じさせられる。女性活躍推進法の成立は2015年であり、それは事業主に向けたもの、職業生活にフォーカスしていることは間違いない。ただ、今回の分析結果をみるだけでも、職場以外での活躍や生活スタイルの根本的な面での活躍(責任の重さかも知れない)を認識させられる。『女性活躍』といった形で女性に多面的な何らかの変革をもとめるのであれば、『男性活躍』という必須要件のようなものを満たすことが先ではないかといった思いに突き当たってしまう。