
今年度のメルマガレポート「都市生活者意識調査 今昔物語」も4回目...
第1回は、コロナ前後での生活者の行動や意識の変化の有無を取り上げました。
第2回は、デジタルの普及が都市生活者の行動をどう変えたのか見ていきました。
第3回は、「飲食の今昔」と題して、都市生活者の食事や飲酒、食品の買い物についてご報告いたしました。
今回の第4回レポートでは、「定年・老後とお金・仕事の今昔」というタイトルで、中高年の仕事、お金、老後の生き方を見ていきます。
尚、今回のレポートも、
① 2019年度版 コロナ前
② 2021年度版 コロナ感染拡大2年目の調査
③ 2024年度版 2025年6月25日公表の最新版
という3回の調査で比較します。
※「都市生活者意識調査」 参照ホームページ
2019年度 https://hilife.or.jp/pdf/201902.pdf
2021年度 https://hilife.or.jp/pdf/data2021.pdf
2014年度 https://hilife.or.jp/pdf/data2024.pdf
第1章は「都市生活者意識調査」から見る「中高年のお金の今昔」です。
ここでは、
(1)中高年がいくら資産を保有しているか
(2)中高年が今後の暮らしでひと月いくら必要だと考えているか
(3)現在の資産がリタイア後の生活を送るのに十分なのか
の順に調査結果を見ていくことにします。
(1)中高年がいくら資産を保有しているか
下のグラフは、中高年のお金に関する調査の結果を、今回のテーマに合わせて項目の抜粋を行ったものです。
尚。この章のレポートでは、中高年の意識・実態をご報告するため、以下の4つのクラスターに注目してグラフ化しております。
・60代男性
・70代男性
・60代女性
・70代女性
※「都市生活者意識調査」の調査結果を棒グラフに置き換えました。
※適宜、全体(回答者全体)なども比較参照としてグラフ化しました。

公益財団法人ハイライフ研究所「都市生活者意識調査」2019/2021/2024
報告書・データ編:2019年度 P.110、2021年度 P.93、2024年度 P.110
これが世帯が保有する金融資産の保有額です。まず「全体」の調査結果です。
・3回の調査では、いずれも30%の世帯が1,000万円から4,999万円を保有しています。
・「それ以上」の世帯は10%前後、残り60%が999万円以下の金額幅の中に分散しています。
・「ほとんどない」世帯は増加傾向で、最新の2024年調査では10%を越えました。
では中高年の調査結果を見てみます。

まず60代男性、結果はこの通りです。
・全体調査では30%弱だった1,000万~4,999万円の割合は30%を超えました。
・また、「全体」の時に10%だった「それ以上」の割合は20%超となっています。(2021年調査のみ10%となりました)
・それ以下の保有額の世帯は「全体」より少なく、この層の資産額は「全体」と比較して増加が見られます。

70代男性はこうなりました。
・60代男性では30~40%だった1,000万~4,999万円の割合は更に増え40~50%となりました。
・それ以下の保有額の世帯は60代男性の調査より減っており、60代、70代と、老後に向けての蓄えは順調に増加しているようです。

次に女性、60代の調査結果です。
・1,000万~4,999万円の割合は30~40%辺りで60代男性とほぼ同じ割合となりました。
・気になるのは保有資産の比較的少ない200万~499万円の割合が減り、「199万円以下」と「ほとんどない」層が増えていること。保有資産の減少傾向があるのもしれません。

最後は70代女性です。
・結果は70代男性と余り変わりませんでした。
・60代女性で比較的多かった499万円以下の割合が減っています。
・他の性年齢別調査に比べて調査年ごとの上下が少ないことも特徴です。
中高年は老後のため、概ね着実に蓄えを増やしているようです。
2つ目の調査結果は、「今後の暮らしでひと月いくら必要だと考えているか」の調査結果を、年代別にまとめたグラフです。
※「都市生活者意識調査」の調査結果を棒グラフにしました。

公益財団法人ハイライフ研究所「都市生活者意識調査」2019/2021/2024
報告書・データ編:2019年度 P.173、2021年度 P.168、2024年度 P.200
40歳以上の層では3回の調査いずれも20万円となりました。
それに対して、中高年においては、男性・女性の間で微妙な差が生じています。
まず男性、60代・70代とも20万~24万円の範囲なのに対し、女性は18万~20万円の範囲になっています。女性の方が生活費のやり繰りがうまいのでしょうか?
また、60代男性の金額が調査年ごとに減っています。少ない金額で生活しなければならない、という覚悟をする生活者が徐々に増えているのかも、と思ってしまいます。
ここまで、
(1)で、保有資産はいくらあるか
(2)で、老後の生活費は月額いくらと考えているか
を見てきましたが、それを受けて3つ目は、「現在の資産がリタイア後の生活を送るのに十分なのか」の意識を見ていきましょう。
※「都市生活者意識調査」の調査結果を棒グラフにしました。
<現在の資産がリタイア後の生活を送るのに十分なのか>

公益財団法人ハイライフ研究所「都市生活者意識調査」2019/2021/2024
報告書・データ編:2019年度 P.173、2021年度 P.168、2024年度 P.200
まずは「全体」の調査結果です。
「かなり不足している」と感じているのは約40%、「やや不足している」は約30%ですが、「かなり不足」の割合が減少しているに対して「やや不足」の割合は徐々に増加しつつあります。
「だいたい足りると思う」は25%弱、年ごどの推移も少なく、一方、「十分である」という答えは5%足らずです。
「かなり」と「やや」を合わせた「足りない」と思う生活者は70%、「足りている」と感じている生活者は30%、ということになるのでしょうか。
ではこちらも中高年の性年代別調査結果を見てみます。

まず60代男性、結果はこの通りです。
「かなり不足している」と感じているのは約30%前後で減少傾向です。「やや不足している」は約35%前後ですが、コロナ前の2019年調査より明らかに増加しています。
一方、「だいたい足りると思う」は25~35%弱で「全体」での割合より10%程度増えています。老後の準備が進み始めているのかもしれません。

次に70代男性の結果です。
「かなり不足している」は増ましたが、それでも30%程度、また、「やや不足している」が直近2回の調査で25~30%の間となりました。
「だいたい足りると思う」は、60代男性より多くなり、老後の蓄えは更に増えているようです。

60代女性はこのようになりました。
「かなり不足している」は30%超で、同世代の60代男性より厳しい認識です。
「不足している」の2つの項目でも、「かなり」が「やや」を上回っていて、60代女性の老後の蓄えに対する不安が見て取れます。

これが70代女性になると、60代女性と比較して「不足」の認識は一気に減っています。
「だいたい足りると思う」も40%前後になり、60代女性から5%以上増えています。60代から70代に移るにつれて蓄えを増やしているのでしょうか?
第2章は「都市生活者意識調査」から見る「中高年の仕事の今昔」です。
ここでは、
(1)何歳まで収入をともなう仕事をしたいのか
(2)その年まで収入をともなう仕事をしたい理由
の順に調査結果を見ていくことにします。
(1)何歳まで収入をともなう仕事をしたいのか
下のグラフはその調査の結果です。「現在収入をともなう仕事をしている人」が対象です。
※「都市生活者意識調査」の調査結果を棒グラフに置き換えました。
<何歳まで収入をともなう仕事をしたいのか 「現在収入をともなう仕事をしている人」>

公益財団法人ハイライフ研究所「都市生活者意識調査」2019/2021/2024
報告書・データ編:2019年度 P.124、2021年度 P.109、2024年度 P.130
これが「現在収入をともなう仕事をしている人」の「全体」の調査結果です。
61歳から64歳の割合は極端に低くなっています。この年齢幅の時には仕事はやめにくいと考えている生活者が多いようです。
「60歳以下」、「65歳」、「66歳以上」、「働ける限り働く」は、どの項目も20~25%で、調査年ごとの大きな変化もありません。
日本の企業が、定年=60歳、雇用延長=61歳~64歳となりつつなる中、何歳まで働くかについて、生活者が様々な考え方をしているのが分かります。
(2)その年まで収入をともなう仕事をしたい理由
「都市生活者意識調査」では、(1)の質問に続き、「その年まで収入をともなう仕事をしたい理由」を調査しています。その結果が以下のグラフとなります。
※今回のテーマに合わせて項⽬の抜粋を⾏いました。

公益財団法人ハイライフ研究所「都市生活者意識調査」2019/2021/2024
報告書・データ編:2019年度 P.125、2021年度 P.110、2024年度 P131
「日常の生活費を稼ぐため」が70%と非常に多く、生活費事情により働く、という理由がはっきり見えてきます。
その他、「年金支給だけでは生活費が不足するため」、「老後(今後)の生活資金を蓄えるため」、「年金が支給されるまでの生活費を稼ぐため」等があり、いずれも30%前後のパーセンテージで、「生活費事情のため」という項目が高い割合になっています。
では、生活費事情以外で働く理由はどうでしょうか?
調査結果によると、「健康のため」、「老化防止のため」という「身体的事情」が上位になっており、こちらも30%前後となっています。
それ以外の回答では、「社会とつながっていたい」、「世の中や人の役に立ちたい」という「自己実現希求型」も見られました。また、「生活費」ではなく「趣味・娯楽費」が必要という回答も10~20%ありました。
まず生活費、その次に健康...自己実現や娯楽はその次、という結果になりました。
第3章は「都市生活者意識調査」から見る「老後に関する意識や現状と見通しの今昔」です。
ここでは、
(1)老後に関する意識
(2)老後に関して現状や今後の見通し
の順で調査結果を見ていきます。
(1)老後に関する意識
下のグラフは、その調査の結果です。「老後をどう生きたいか」、40歳以上に質問しました。
※今回のテーマに合わせて項目の抜粋を行いました。2024年調査のみ50歳以上への質問となっています。

公益財団法人ハイライフ研究所「都市生活者意識調査」2019/2021/2024
報告書・データ編:2019年度 P.164、2021年度 P.159、2024年度 P190
2024年調査のみ50歳以上が対象でしたが、結果を見てみると、調査年ごとの極端な差はありませんでした。
昔から言われる「悠々自適」の志向が高いことが分かります。「自由な時間を楽しみたい」、「のんびりできることが幸せ」が調査の1位・2位でした。
また、「人並みであれば良い」や「今の生活の延長で楽しみたい」、「今まで通り、特に変わったことはしない」と言う「日常生活をそのまま継続する」項目も高い割合となっています。
その次に健康維持やジム通いなど、身体のケア関係の項目が続きます。
悠々自適に今までの生活を健康で続ける...それが老後の生活イメージのようです。
(2)老後に関して現状や今後の見通し
下のグラフはその調査の結果です。
「老後の見通しを考える上で現状をどう認識しているか」、40歳以上に聞きました。

公益財団法人ハイライフ研究所「都市生活者意識調査」2019/2021/2024
報告書・データ編:2019年度 P.167、2021年度 P.162、2024年度 P193
調査結果では、(1)の時と異なり、圧倒的にパーセンテージの高い項目はありませんでした。
その中で比較的高い割合になったのは「家族」や「友人・仲間」に関する項目です。2024年調査(50歳以上)も含めてた3回の調査で、常に20%を越えていたのは6項目...うち2つが「家族や配偶者を肯定的に評価する」もので、もう2つが「旧友・親友の存在を肯定的に評価する」ものでした。それ以外に、「好きな趣味の存在」や「将来に向けての蓄え」、「病気への対応」等がそれに次ぐ割合を獲得しています。
まず、信頼できる家族の存在があり、更に老後も共に過ごせそうな友人の存在があり、その上で趣味の充実や健康の維持をはかる...この辺りが生活者にとって、「老後の見通しを考える上での現状の認識」ではないでしょうか?
今回は「都市生活者意識調査」の調査報告の中で、「定年・老後とお金・仕事の今昔」というテーマで、中高年の都市生活者のお金・仕事・老後の意識を見てきました。
1.「中高年のお金の今昔」では、中高年の生活者が60代、70代と徐々に資産を増やしており、老後の資産が足りないと答える割合は減っていきました。老後の備えはかなり順調のようです。
また、老後に必要と認識している生活費の月額は中高年の男性で20~24万円、女性で18~20万円と差があるものの、60代男性は調査年を追うごとに減っていることも分かりました。
2.「中高年の仕事の今昔」に関しては、「何歳まで収入をともなう仕事をしたいか」という質問に、生活者は「60歳以下」とか、「65歳」とか、様々な回答が分散しており、「仕事を何歳まで続けるか」の目途に対する多様化が感じられました。
但し、「その年まで仕事をしたい理由」の多くが、生活費や老後への蓄えが必要、というもので、健康・老化防止より多くの割合を占める結果となりました。
3.「老後に関する意識や現状と見通しの今昔」については、昔から言われる「悠々自適」の志向が高いことが分かりました。「日常生活をそのまま継続する」志向も高い割合となっています。その次に健康維持関係の項目が続きました。
一方、 「老後の見通しを考える上での現状をどう認識しているか」の質問に関しては、とび抜けて割合の多い項目はありませんでした。その中で比較的高かったのは「家族」や「友人・仲間」を肯定的に評価する項目で、それに続くものとして、「好きな趣味の存在」や「将来に向けての蓄え」、「病気への対応」等がありました。
このように、「都市生活者意識調査」では、思った通りの調査結果、意外な調査結果を知ることができます。
https://www.hilife.or.jp/report-toshi
再度のご案内になりますが、「都市生活者意識調査」の最新版2024年度の報告書は6月25日に公表されております。
是非、各年度の報告書をご覧頂き、都市生活者意識の気付きになればと願っています。
次回の「今昔物語」はいよいよ最終回、そちらも是非ご一読頂ければと願っております。
