
東京の人付き合いが「東京砂漠」と歌われたのが1976年のことですが、それ以来今日に至るまで、東京には人間関係の希薄さや冷淡さがあると言われ続けてきているように思われます。それに拍車をかけるように、コロナ禍ではソーシャルディスタンスや三密回避など、会話や対面での人付き合いを極力避けるように呼びかけられました。一方で、SNSを通じたコミュニケーションは緊密かつ24時間行われており、仲の良い知り合い同士の距離はかつてないほど縮まっています。
このような友人かそれ以外か、というウチとソトの境界線の強さは、コロナ禍で強められたのでしょうか。
まず最初に、人付き合い自体を望んでいるか見てみましょう。

固定的な人間関係ではなく、オープンにお付き合いを増やしていきたいという意思の表れとして「いろいろな人と知り合いになりたい」と答えた人の割合を見てみます。
コロナ前の19年が最も高く、翌20年も同程度だったものが、コロナ明けの21年度以降毎年下落し、4ポイントほど下がったところで落ち着いたように見受けられます。
最も高い年度でも、全体の15%ほどしかオープンに知り合いを増やしたいと思っておらず、多くの人にとっては知人を増やしたい気持ちがない、という結果になっています。
その背景にある原因を探ってみましょう。

人付き合いは面倒くさいと答えた人の変化を見ると、コロナ前の19年度では約27%が面倒くさいと答えていましたが、コロナ禍の20年度は33%と6ポイント上昇しています。
その後水準は下がりますが、およそ30%前後で安定しているようですので、コロナ前に比べて3ポイントほど多くの人が人付き合いに面倒さを感じていることになります。
この2項目から見えてくることは、多くの知り合いを得るメリットよりも、面倒さのほうが勝っている、という状況です。
何かと面倒を感じるお付き合いの代表といえばご近所づきあいではないでしょうか。狭い都会暮らしを送る上での不便や不満を「お互いさま」として助け合ってきた伝統がありますが、高度成長期を経てドライになった都市での近所づきあいはコロナの影響をどのように受けたのでしょうか。

コロナ前は約15%の人が近所づきあいが減っていると答えていましたが、コロナ禍で8ポイントほど増えて約23%まで上昇しました。20年当時は、不足したマスクや保存食を融通しあったといった話もありましたが、全体としては近所づきあいの減少を引き起こしたようです。その後各種の制限が撤廃されましたが、19年度当時の水準に戻ることはなく20%前後で安定しています。
コロナ禍をきっかけにうすうす面倒に感じていたご近所づきあいを減らす正当な理由ができ、そのまま定着した※1、という図式ではないでしょうか。
※1:それでも全体の2割程度のみが減ったと回答しており、大多数はそうは回答していないことも付言しておきます。
それでは、友人との関係はどうなったのかを見てみましょう。

つきあう友人の数にも、コロナ禍の影響が見て取れます。19年度には約30%の人が友人が減ったと答えていますが、コロナ禍でその割合は5ポイント程度上昇しました。その後も元には戻らず、30%前後で推移しています。
SNSなどの非対面コミュニケーション手段が浸透している時代ではありますが、コロナ禍の各種制限の影響で、比較的薄い関係の友人とのつきあいが途切れてしまった、ということなのかもしれません。
一方で、親密な友人とは引き続き同じようなつきあい方をしているのでしょうか。

コロナ禍の期間にはステイホームの掛け声で外出制限があったにもかかわらず、おつきあいの程度が高い友人がいる人の割合が増えています。
つきあいの範囲が狭められたため、もともとの友人との関係が濃くなったためかもしれません。
一方、コロナ後の期間には割合が低下し、約17%になっています。
ここまでで確認したように、「いろいろな人と知り合いたい」人が減り、「友人の数が減っている」人が増えている中で、さらに「親密なつきあいをする友人がいる」人も減っているというのは、どんどん人間関係の輪が狭まっている状況にあるといえるでしょう。このことは、都市生活者が他人との関係をどんどん希薄にしていっている状況を示しています。
他人同士の関係として最も親密なもののひとつとして、恋愛関係があります。都市生活者の恋愛関係はどのように変化したでしょうか。

恋愛したいと答えた人は一貫して減少していました。少子化の背景にある要因は様々ですが、恋愛意向が低下しているという状況はそれに拍車をかけるようで心配になります。
こちらは全年代トータルの数字ですので、年代別に分解してみていくことにします。

20代~40代に絞って年代別に傾向を確認しました。
20代が高く、30代と40代が同じ水準になっています。
いずれの年代でも、年を追うごとに数字が下がってきており、「若者の恋愛離れ」といった様相を示しています。
さらに20代のみに絞って、男女別の傾向を確認してみました。

男性より⼥性のほうが恋愛したい意向が⾼かったものの、20年度をピークとして男⼥どちらとも下落傾向となり、直近2年では20%にまで落ち込んでいます。2009年に「草⾷男⼦」という流⾏語が⽣まれたように、恋愛への意欲が低い傾向は特に若い世代の男性で注⽬されてきましたが、このデータからは、現在は性別を問わず広く⾒られる現象であることを⽰唆しています。
ここまで都市生活者の人づきあいについて見てきましたが、人づきあいの面倒さから、コロナ禍をきっかけに人間関係をコンパクト化してきた、という様子がうかがえました。その矛先は恋愛にまでも向かっているようにも見えます。
希薄な人間関係でも生活を送っていくことができるのが都市の良いところとも言えますが、人の性として、毎日の生活の中で誰かに頼りたくなる時もあるのではないでしょうか。そのような時、都市生活者はどのようにしているのか、それともそもそもそのような気持ちになることが少ないのか・・・。今後掘り下げていくべきテーマとしたいと考えます。