非常用保存食購入にみる災害の備えについて

■非常用保存食購入のタイミングは?

毎年9月1日の「防災の日」。この日は全国各地で訓練が行われ、ニュースやSNSでも防災に関する話題が取り上げられます。
私たちにとっても「今年は何を備えているか」を振り返るきっかけになる日です。実際に非常用保存食は、こうしたタイミングを皮切りに購入がじわじわと増える傾向があります。さらに個々人が防災を意識するタイミングも無視できません。1月は阪神淡路大地震、3月には東日本大震災を思い起こし、7月〜10月は台風シーズンも想起します。ここ最近は年々台風の被害も大きく、かつ何度もという印象をもちますね。このように暮らしの中に点在する「不安な瞬間」が、人々の備えを後押しして、“なだらかな山”が形成されます。
一方で、災害発生時には大きな跳ね上がりも見られます。2024年1月の能登半島地震の時は全国レベルでPI値が281.5まで急上昇し、日向灘地震と台風のあった同年8月には531.2と直近2年間で“もっとも高い山”になっています。まさに「いざ」という時に人々の防災への意識が高まり非常用保存食を一気に求める動きが数字にも表れます。
つまり非常用保存食の需要には二つのリズムがあります。防災の日や季節的なリスクをきっかけに防災意識が静かに高まり、非常用保存食の購入が伸びていく局面。そして災害が実際に起きた際に急激に高まる局面です。その両方の局面に防災意識の高まりとともに非常用保存食の購入を形づくっていることがグラフからも確認できます。

出典元:real shopper SM

■普段食に近い商品の存在感が拡大

次に注目されるのは、「いつ備えるか」だけでなく「何を備えるのか」という点です。昨年と今年の防災の日に購入されている非常用保存食商品のランキングを比較してみました。

出典元:real shopper SM

安心の主役として、“カンパン”は今年も1位を維持し、非常用保存食の代表格となっています。
また一方で今年は多様化の様子も見られます。
その代表格といえるのが“えいようかん”です。昨年は下位にとどまっていたものが、今年は2位に浮上しました。災害時に甘いものを摂る安心感や、持ち運びやすいサイズ感が支持されたと考えられます。さらに今年は、“デニッシュパン缶”や“レトルトカレー”といった、普段の食事に近い商品が上位に入りました。
これまでランキングの多くを占めていたのは、カンパンなど「非常時専用」として作られた商品でしたが、そこに普段食の延長線にある商品が加わることで、構成が変化してきています。昨年と今年を比較すると、定番の非常用保存食が安心感を与え続けながらも食べ慣れた味が存在感を増してきていることがわかります。
防災の日をきっかけに、人々の備え方は着実に変化・更新されているのです。

※本レポートでのPI(Purchase Index)値とは、購入金額、購入点数、バスケット数等を購入客1000 人当たりの指数にした値のこと。
※購買データの出典について、「出典元:real shopper SM」と記載されているものは、株式会社ショッパーインサイトが保有する食品スーパーIDPOSデータベース「real shopper SM」の購買履歴データを、本コンテンツ向けに独自に集計・加工したものです。