
この6月、アイスの平均価格は166.2円と前年より約8.5円上昇しながらも、購買点数は227.1と前年(225.3)をわずかに上回る結果となりました。一見「高くても売れている」と見えるこの動き。実はその中心にあるのは単品アイスです。
点数PI値を見ると、単品アイスは直近1年の中でも高水準となる172.3を記録。一方のパックアイスは54.7と、ようやく前年並みに戻ってきた水準にとどまっています。
値上げ環境下でも、「その日1個のご褒美」として自分用に選ばれる単品アイスが再び支持されはじめている様子がうかがえます。一方で、パックアイスは家族全員でシェアする目的でまとめ買いされる傾向が強く、購買はやや慎重な動きが続いています。
なお、2024年12月はアイスが売れにくい季節とされるものの、平均価格は183.2円と年間で最も高く、購買数が少ない中でも高価格帯の単品アイスが動いていたことが示唆されます。
「安いから買う」から「価値を感じるから選ぶ」へ。アイス市場では今、そんな買われ方の変化が静かに進行しています。

出典元:real shopper SM
アイス市場が盛り上がりを見せるこの時期、購買点数の増加とともに、どんな味が選ばれているかにも注目が集まります。
実はこの「フレーバーの好み」、季節によって意外なくらい表情を変えているのです。

出典元:real shopper SM
年間を通して圧倒的な人気を誇るのが「チョコ系」。どの季節でも不動の1位を獲得しており、特に夏には点数PI値が65.8と最大値を記録。冷たさと濃厚さのバランスが、まさに夏に限らず、年間を通した「王道のアイスクリームスイーツ」としての地位を確立していることが伺えます。
一方、季節ごとに存在感を変えるのが「フルーツ系」。春・秋・冬はいずれも20点前後と控えめな数字ですが、夏だけは一気に54.4まで上昇し、チョコに次ぐ2位にランクイン。みずみずしさや酸味が、夏の暑さにマッチし、「さっぱり系アイス」のニーズを引き上げているようです。
また、秋になると顔を出すのが「和風系」。春や冬はやや控えめながら、秋には22.5と上昇し、3位にランクイン。栗・芋・抹茶といった季節の味覚に惹かれる消費者が増えることが、ランキングにもはっきりと表れています。実際、秋冬限定で登場する和素材のフレーバーは、「ちょっと特別」なご褒美アイスとして選ばれる傾向が強いようです。
このように、アイスの「味選び」は気温や気分と密接に連動しており、定番の人気に季節限定の好みが重なって、多様な選ばれ方をしていることがわかります。
価格が上がっても売れ続け、季節によってフレーバーの好みも変わるアイス市場。では実際に、どれくらいの頻度でリピートされているのでしょうか?
今回は、2025年6月の夏立ち上がり時期に、どの味が、どれだけ繰り返し選ばれているかをリサーチしてみました。

出典元:real shopper SM
まずは、購入回数1回の人が全体の56.2%。気温の上昇に背中を押され、「とりあえず一つ買ってみようかな」というライトな買われ方をしていることがわかります。
一方で、6月の1ヶ月間に「週1回以上(4回以上)」購入している人は全体の15%に達しています。
この数字は、たまたま暑い日に買うだけでなく、「気分転換」「ちょっとしたご褒美」として日常的にアイスが選ばれている証拠といえるでしょう。
選ばれているフレーバーとしてはバニラやフルーツ、そしてチョコ系です。とくにチョコ系は、「濃厚で満足感がある」「食後の楽しみになる」といった理由で、暑い季節でも安定して選ばれています。夏はさっぱり系が主流と思われがちですが、実際は「とろける濃厚系」にもしっかりとリピーターがついているのは意外な発見です。
「暑いから食べるもの」から、「気分を上げるための定番」へ。アイスは今、そんなふうにポジションを広げているのかもしれません。
※本レポートでのPI(Purchase Index)値とは、購入金額、購入点数、バスケット数等を購入客1000 人当たりの指数にした値のこと。
※購買データの出典について、「出典元:real shopper SM」と記載されているものは、株式会社ショッパーインサイトが保有する食品スーパーIDPOSデータベース「real shopper SM」の購買履歴データを、本コンテンツ向けに独自に集計・加工したものです。