ヨーロッパから学ぶ「豊かな都市」のつくりかた

ヨーテボリ(スウェーデン)


連載|ヨーロッパから学ぶ「豊かな都市」のつくりかた

第3回 公共空間の豊かさの創出によるアメニティの向上

明治学院大学経済学科准教授 服部圭郎

 ヨーロッパに訪れた日本人の多くは、その都市の豊かさ、美しさに感銘を受ける。そして、それに比して日本の都市の多くの貧相なる都市景観、なんかゆとりがない都市空間を嘆き悲しむ。そして、人によっては、そのような違いは根源的な民族性の違いであるとばかり、日本という国そして日本人に劣等感を抱いてしまったりする。私自身、ヨーロッパで暮らし、確かにヨーロッパの都市空間は豊かであるなと感じる。そして、日本の都市空間は貧困であるなとも思う。

 しかし、その違いは超克できないものでは決してないとも思う。ヨーロッパの多くの都市でも都心部が自動車に蹂躙されて中心市街地が衰退したことがあった。ウォーターフロントと市街地を縦断する道路が整備され、素晴らしい公共的空間が分断されてしまっていたこともあった。素晴らしき広場が駐車場として人間から自動車のために使用されてしまったこともあった。また、その都市の宝のような資源であるウォーターフロントには工場、倉庫などが密集して建ち、人々がそこにアクセスすることも難しいような状況にあったりもした。戦災で瓦礫と化し、歴史的痕跡が都心部から消失してしまった時もあった。

 そのような都市の荒廃を経て、その状態をどうにか戻そう。自動車に奪われた都心を再び人間の手に取り戻そう。倉庫や工場、港湾などの産業機能に偏っていたウォーターフロントを豊かなものへと変容させよう。そして、ウォーターフロントに自由にアクセスし、その豊かな空間を楽しむことができるようにしよう。失われた歴史を再生し、人々が共有する都市の記憶を読み戻し、人々が都市への愛着を共有できる象徴となるような空間を再現しよう。我々が豊かだなあと観察しているヨーロッパの都市の多くは、歴史の重みに由来する伝統的なものでは決してなく、都市住民が情熱と不屈の精神をもってしてつくりあげたものなのである。

 つまり、現在、我々が目にしているヨーロッパの都市の豊かさは、政策的につくられているということを理解してもらいたいのである。それは、経済的に多くの投資がなされたためにつくりあげられたものというよりかは、問題がどこにあるかをしっかりと分析して捉え、その問題を改善させるために知恵を絞り、その結果、導き出された改善策をしっかりと地道に遂行させてきた成果なのである。

 そして、ここでヨーロッパの都市の豊かさを演出しているのが「公共空間」であることを理解することは重要である…

事例)
デュッセルドルフ(ドイツ)
ヨーテボリ(スウェーデン)
コペンハーゲン(デンマーク)
ハンブルク(ハーフェンシティ)(ドイツ)
ブリュッセル(ベルギー)


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取材・構成
服部圭郎 明治学院大学准教授

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公益財団法人ハイライフ研究所

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