迪化街の歴史保全

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キーワード:

アイデンティティ ,マーケット ,台湾 ,景観デザイン ,歴史保全

ストーリー:

 迪化街は、19世紀中頃の清朝末期におもに船荷を扱う商店が集積してつくられた街区である。この地区に隣接して貿易港がつくられたこともあり、清朝時代は樟脳、その後の日本統治時代には台湾の特産品となった烏龍茶を取り扱う店がここに立地していく。
 日本統治時代の20世紀初頭には、この烏龍茶をはじめとして漢方薬や布、乾物などを取扱う商店が集まってきた。また、街並みも商人の豊かさを象徴するかのような煉瓦造りの趣のある建物が立地するようになる。これらは街屋と呼ばれ、河港の商業形態として台北の独特な建築形態として発展してきたものである。街屋の一階は商業として、二階、三階は居住用の生活空間として利用された。迪化街にはかつての豪商の邸宅が並び、ここから有名企業も生まれている。商業都市台湾の豊かな歴史を認識できるような個性ある素晴らしい空間である。それと同時に現在でも、多くの人出で賑わう商業エリアではある。特に旧正月前は台北市が主催する「年貨大街」として賑わっている。
 さて、しかし、この地区も放っておいて、このような歴史性を感じる商業空間が維持できた訳ではない。この地区も再開発の危機に晒された時期がある。迪化街は台北市が急速に発展していく中で、1977年頃、道路の拡幅計画に直面し、迪化街の12メートルの街路は20メートルに拡張されることになる。これは、迪化街の街屋を破壊することになる。当時は歴史地区を守るべき法令も整っていなかった。そのために、これを阻止するための動きが国立台湾大学の夏教授を中心として展開する。この運動は、1988年には実を結ぶ。そして、この迪化街は台湾で最初の容積率移転を活用して、その街並みを保全する事例となった。具体的、には迪化街の地主が所有する坪数をデベロッパーに販売して他の土地にその容積分の建物を建設できるようにした。現在、28棟ほどの古い家屋が歴史建築に登録されている。赤い斜め屋根の清代に遡る建築群とバロック式の洋館が建ち並ぶこの一帯は、台北市のアイデンティティを表現する素晴らしい都市景観をつくりあげている。

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

 迪化街は、台北101などの未来的な都市景観とは極めて対照的な、台北の歴史的なアイデンティティが感じられる貴重な都市景観を呈している。しかし、そのような歴史的街並みも何もしないで現在に残っている訳では決してない。このような街並みが保全されるためには、いくつもの障害を乗り越えることが必要であった。1970年代後半、台北市の拡張とともに道路拡張計画が提案される。この道路拡張によって、街屋からなる歴史的街並みも破壊されてしまう。しかし、当時はそのような歴史的街並みを保全する法令がしっかりと整備されていなかった。そこで、大学の教員を中心として住民組織がつくられ、この街並みを保全するように行動する。
 その手段として、容積率移転制度を導入したところは、まさに都市計画的知恵、都市の鍼治療的アプローチであった。容積率移転は、ニューヨークはマンハッタンにあるトリニティ協会を保全するために導入された都市計画的手法である。これは、シティの超高層ビル群にあるトリニティ協会を開発圧力から保全するために考案された手法であるが、その後、その手法の有効性から世界の都市に応用されている。
 この制度によって、保全された迪化街では、新たな工芸文化をインキュベートするための施設なども台北市の「都市再生漸進基地計画」に基づいてつくられている。迪化街のような台北のアイデンティティが濃縮された都市空間においてこそ、そのような創造性が発揮されることが期待されているのであろう。
 また、この迪化街の歴史的街並み保全活動は、他の同様な資産を有している地区、都市においても多大なる影響を与えている。都市のアイデンティティを保全し、かつその都市の将来にも大きな可能性を継承させた素晴らしき都市の鍼治療事例であると考えられる。

事業主体:

台北市

事業主体の分類:

自治体, 市民団体

デザイナー、プランナー:

夏鑄九

開業年:

1988年

類似事例:

・ 052 ベルン旧市街地の景観規制(ベルン、スイス)
・ 031 剝皮寮、台北(台湾)
・ 008 テンプル・バー、ダブリン(アイルランド)
・ 005 パイク・プレース・マーケット、シアトル(アメリカ合衆国)
・ 歴史的街並み保全のための容積率移転、クリチバ市(ブラジル)
・ 東京駅・丸の内駅舎の容積率移転、千代田区(東京都)
・ 083 明治学院大学の歴史建築物の保全

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国:台湾
州・県:台北市
市町村:大同区