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2023年度第7回
Z世代のドラッグストア購買動向
(2022年3月~2023年2月)

2023年度の第7回は、最初のデジタルネイティブ世代として社会的にも注目されるZ世代の購買行動を、近年食品・飲料の購買チャネルとしても成長しているドラッグストアにおける購買データを利用して分析いたします。今回の Z世代の定義としては2022年12月31日現在で満20歳から29歳の男女(1993年~2002年生まれ)とし、分析期間は2022年3月~2023年2月といたしますが、この1年は2019年末から始まったコロナ禍がアフターコロナに向かった一年であり、ドラッグストアにとってはマスクや消毒液の特需が落ち着いた時期となります。集計には、Segment of One Only株式会社が管理運営している、SOO加盟ドラッグストアから収集したID-POSデータをJICFS分類で統合したSOOパネルデータにおけるドラッグストアの購買実態を用いています。

1.ドラッグストア顧客のZ世代比率

最初に、ドラッグストア会員顧客のZ世代比率を見てみます(図表1)。

図表1 ドラッグストア会員顧客のZ世代比率

図表1 ドラッグストア会員顧客のZ世代比率

ドラッグストア会員顧客の構成比は、男性Z世代が2.2%、女性Z世代が4.6%で合計6.8%となります。この世代は日本の人口では約10%を占めるので、人口よりも比率は少ないと言えます。 Z世代男女同士の構成比で比べれば女性は男性の倍以上となり、Z世代においても男性よりも女性に支持されている業態と言えるでしょう。

次に、ドラッグストア会員購買回数全体に占めるZ世代の購買回数の構成比を見てみます(図表2)。

図表2 ドラッグストア会員購買回数のZ世代比率

図表2 ドラッグストア会員購買回数のZ世代比率

ドラッグストア会員購買回数の構成比で見ると、男性Z世代が1.8%、女性Z世代が3.6%で合計5.4%となり会員数構成比より低くなります。男女Z世代とも同じ傾向で一人当たりの購買回数が他世代よりも少ないようですね。

次に、Z世代構成比の前年比を見てみます(図表3)

図表3 ドラッグストア会員数、購買回数のZ世代比率前年比

図表3 ドラッグストア会員数、購買回数のZ世代比率前年比

前年比で見ると、会員数、購買回数共に男性Z世代構成比が増加し、女性Z世代は減少しています。男女計にすると会員数構成比がほぼ変化なし、購買回数構成比では若干の上昇となり、構成比の男女差は縮小しているということになります。

2.Z世代ドラッグストア顧客の購買指標

続いて、会員一人当たりの各種購買指標を見てみます(図表4)。

図表4 ドラッグストア会員一人当たりの購買指標

図表4 ドラッグストア会員一人当たりの購買指標

前年比で見ると男女ともに購買金額が増加しています。購買点数以上に購買金額が増加していることは単価の上昇を示しており、各商品の値上げの影響と考えられます。
Z世代の会員一人当たり購買指標で見れば、購買回数、金額、点数の各指標の実数は他の世代に比べて低くなっていますが、対前年比でみると購買金額の伸びが大きくなっています。また会員数比率では前年より低下した女性Z世代も、会員一人当たりで見れば購買回数、金額、点数の各指標で増加しており、購買点数や購買金額では男性Z世代より高くなっています。

3.Z世代ドラッグストア顧客の購買カテゴリー

このZ世代がドラッグストアでどんなものを購買しているのかを、各カテゴリーの購買金額構成比で分析してみます。 まずは比較的大くくりのカテゴリーであるJICFS中分類で見てみます(図表5)。

※JICFS:「どの事業者の、どの商品か」を表す国際標準の商品識別コードの日本版「JANコード」とこれに付随する商品情報を管理するデータベースサービスで使用されている分類体系。一般財団法人流通システム開発センターが管理運営。

図表5 ドラッグストアにおける購買金額構成比(全体1%以上。JICFS中分類)

図表5 ドラッグストアにおける購買金額構成比(全体1%以上。JICFS中分類)

Z世代男女ともに他世代に比べて高いカテゴリーは「日用雑貨」「化粧品」です。Z世代での男女差に注目すると、男性Z世代は「加工食品」「菓子類」「飲料・酒類」など食品・飲料全般で女性に比べ構成比が高くなっています。一方、女性Z世代は「日用雑貨」と「化粧品」に集中しており、ドラッグストアで買うものに男女で違いがあります。

金額の前年比で見ると以下のようになります(図表6)。

図表6 ドラッグストアにおける購買金額前年比(全体購買金額比率1%以上。JICFS中分類)

図表6 ドラッグストアにおける購買金額前年比(全体購買金額比率1%以上。JICFS中分類)

顧客数の構成比が伸びた男性Z世代は、全てのカテゴリーで購買金額を伸ばしています。カテゴリーの金額比率の大きい「日用雑貨」「化粧品」で男性の伸長率が高いようです。 Z世代女性も顧客構成比こそ減少したものの一人当たり金額の上昇により男性ほどではないですが多くのカテゴリーで購買金額を伸ばしています。

Z世代で男女ともに構成比が高い「日用雑貨」の内訳をもう少し細かく見てみます(図表7)。

図表7 ドラッグストアにおける「日用雑貨」購買金額構成比(JICFS小分類)

図表7 ドラッグストアにおける「日用雑貨」購買金額構成比(JICFS小分類)

Z世代男女ともに高いカテゴリーは「衛生医療用品」「衣料用洗剤類」などです。「衛生医療用品」にはマスクなどが含まれるのですが、コンタクトレンズ用品やカット綿、避妊用具など様々なものが含まれるカテゴリーです。また「衣料用洗剤類」だけでなく「石鹸類」「住居用洗剤類」もZ世代男女で高く、清潔意識が高い世代なのかもしれません。 Z世代男女の差に注目すると、女性Z世代は「衛生紙用品・用具」と「育児用品・用具」が男性に比べ高くなっています。これは「衛生紙用品・用具」には生理用品が含まれるためと考えられます。「育児用品・用具」はおむつが大きいですが、育児も女性が主に携わっている割合が高いということが理由と考えられます。

これもZ世代で男女ともに構成比が高い「化粧品」の細かい内訳も見てみます(図表8)。

図表8 ドラッグストアにおける「化粧品」購買金額構成比(JICFS小分類)

図表8 ドラッグストアにおける「化粧品」購買金額構成比(JICFS小分類)

多くのカテゴリーでZ世代の比率が高くなっており、化粧品はZ世代に特徴的なカテゴリーと言えるでしょう。更に多くのカテゴリーで女性Z世代の方が男性Z世代より高くなっていますが、特に男女差があるカテゴリーとしては「メイクアップ化粧品」があります。男性Z世代の化粧品購入は伸長しており、基礎化粧品やヘアケア、化粧小物などでは男女差は少なくなってきていますが、メイクアップ関連はまだまだ男女の差があるようです。

最後に、男女で差があるカテゴリーとして「飲料・酒類」を見てみたいと思います(図表9)

図表9 ドラッグストアにおける「14:飲料・酒類」購買金額構成比(JICFS小分類)

図表9 ドラッグストアにおける「14:飲料・酒類」購買金額構成比(JICFS小分類)

Z世代における飲料の男女差はアルコール飲料の差もありますが、更に清涼飲料の差が大きいようです。今回のZ世代の定義では全員20歳を超えているのですが、Z世代を各々の性別で全体と比べるとアルコール飲料の構成比は全体の半分以下となり、Z世代はアルコールをあまり買わない世代と言えると思います。
アルコール飲料よりも清涼飲料の方が比率が高いため、飲料・酒類カテゴリーの男女差に対するインパクトも清涼飲料が大きくなっています。但し、アルコール飲料の構成比同士を比較するとZ世代女性はZ世代男性の6割程度にとどまり、Z世代でもやはり男女差はあります。

 今回は2022年3月から2023年2月のドラッグストアにおけるZ世代の購買行動を分析した結果をご紹介しました。最後に内容をまとめますと以下のようになります。

  • ドラッグストア顧客数の割合では男性Z世代が2.2%、女性Z世代が4.6%で合計6.8%。特に男性Z世代で人口比率よりも少ない。
  • 顧客構成比を前年と比べると男性Z世代が比率で6.2%と大きく増加している一方で女性Z世代が減少したためZ世代の男女差は縮小した。
  • 顧客の一人当たり購買金額は男女Z世代とも8%以上上昇し、Z世代の購買金額は特に顧客数自体も伸びた男性Z 世代で大きく上昇した。
  • Z世代で購買金額構成比の高いカテゴリーは、加工食品、日用品、化粧品など。日用品、化粧品は特に男性で伸長率も高い。

Z世代は1歳当たり120万人ほどで、200万人以上生まれていた団塊Jr世代など上の世代と比べると人口が少ない世代と言われてきましたが、それでも年間出生数が80万人を切った現在、今後相対的に人口比が増えていく世代とも考えられます。購買データから見ても既に育児用品の購買層となっているなどライフステージの変化をうかがわせる兆候があり、Z世代は今後の市場変化をリードする世代と言えるのかもしれません。

今後もZ世代ショッパーの行動を継続して観察し、有益な洞察をご提供していきたいと考えております。