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2023年度第4回
スポーツイベント開催時の購買行動変化

2023年度の第4回は、世界的なスポーツイベント開催時に食品スーパーの購買行動かどのように変化したかを分析します。2023年8月から10月にかけてFIBAバスケットボール・ワールドカップやラグビーワールドカップ2023フランスが行われており、2024年7月にはパリオリンピックが行われる予定となっておりますが、これらのスポーツイベント開催時にテレビ中継が非常に高い視聴率を獲得することも多く、様々な生活行動の変化が引き起こされていると考えられます。この生活行動の変化は食品スーパーにおける購買行動にも表れている可能性もあり、スポーツイベント開催時の購買行動変化を分析することで生活行動の変化を探るヒントとしてみたいと思います。
集計には、特に引用元の表示がない場合、近未来消費研究で使用した株式会社ショッパーインサイトの購買履歴データを用い、これらを本コンテンツ向けに独自の集計、加工を行い分析いたしました。

1.分析対象「ワールドベースボールクラシック2023」

今回分析対象とするスポーツイベントですが、2023年3月に行われた野球の国別対抗戦「ワールドベースボールクラシック2023」を対象とします(図表1)。日本チームの優勝という結果となり非常に高い注目度を得ていたことから驚異的なテレビ視聴率を獲得したこと、また日本国内での試合もあり夕食時となる19:00開始の試合も多かったことから生活行動の影響が大きかったと想定されることがその理由です。集計対象期間は2023年3月6日(月)~3月26日(日)の3週間とし、会員データを使用します。

図表1 「ワールドベースボールクラシック2023」 日本戦試合日程と結果

図表1 「ワールドベースボールクラシック2023」 日本戦試合日程と結果

※出典:ワールドベースボールクラシック2023公式サイト(https://www.wbc2023.jp/)及び気象庁

2.期間中の客数と販売金額の状況

集計期間中の日別合計客数、合計金額の推移を試合日程ごとに示します(図表2)。なお今後「試合」の表記は日本チームの試合を指すものとします。

図表2 試合日程と合計客数、合計金額の推移(会員のみ)

図表2 試合日程と合計客数、合計金額の推移(会員のみ)

※日付の赤網掛けは土日祝日を示します。
※緑の網掛けは日本時間19:00~の日本戦が、青の網掛けは8:00~の日本戦があった日を示します。

3月12日、3月19日に客数、金額ともに増えていますが、食品スーパーは週末特に日曜日に客数、金額ともに増加することが一般的なのでこれには試合だけが大きく関係しているとも思えません。同じく日曜日である3月26日はそれほど高くないですが、この日は東京をはじめとして雨だった地域が多いことがおそらく影響しています。やはり天候が悪いと客数、金額共に減ることが多いようです。 この推移を見る限り試合のあるなしで客数、金額共に顕著な差は見られないように感じられます。

図表3 夜に日本戦があった日とその他の日の平均客数、金額比較

図表3 夜に日本戦があった日とその他の日の平均客数、金額比較1
図表3 夜に日本戦があった日とその他の日の平均客数、金額比較2

最も影響が大きいと考えられるのは夕食時の夜に試合のある日だと考えられますが、平日で夜試合のあった日とその他の日で一日平均を比較すると、夜日本戦のあった日は客数で2%ほど多くなっていますが金額ではほぼ差はありません。一方土日祝で同じように比較すると夜試合ありの日が客数で9%、金額で10%近く多くなっています。ただこの数字は試合のなかった土日である3月25日、26日が雨の影響を受けて減少していると考えられるため、この増加は割り引いて見る必要があります。この数字からはスポーツイベントのある日に食品スーパーのお客様や売り上げには全体で見ればそれほど大きな影響はなさそうです。しかし、どちらかと言えば減るよりも増える方向に影響がある可能性があるということは言えそうです。

3.カテゴリ別の状況

次にカテゴリ別の比較をしてみます。夜に試合があった日数も多く天候要因の影響が少ないと思われる平日を対象としてまず大きいくくりでの比較をしてみます(図表4)。

図表4 平日に夜試合があった日のその他の平日と比べたカテゴリ別合計金額増減率比較

図表4 平日に夜試合があった日のその他の平日と比べたカテゴリ別合計金額増減率比較

これを見ると、夜試合のあった日は農産畜産など総じて生鮮食品が多少減少する反面、惣菜が増加しています。夕食の支度は料理をするよりも惣菜で簡単に済ませてテレビ観戦する人がいるということでしょうか。また、嗜好食品が増加しています。

増加した惣菜をもう少し細かいカテゴリで増減を見てみます(図表5)

図表5 平日に夜試合があった日のその他の平日と比べた惣菜カテゴリ別合計金額比較(増減額順)

図表5 平日に夜試合があった日のその他の平日と比べた惣菜カテゴリ別合計金額比較(増減額順)

「寿司惣菜」「米飯惣菜」「パン惣菜」といった主食系のカテゴリが増加額上位に目立ち、調理しないで応援するという意識の生活者の存在が伺えます。反面、簡単な調理を必要とする半惣菜の「半惣菜セット物」「スナック半惣菜」の増加率も高く、こちらは調理はするもののいつもより簡単に済ませたいという意識の表れでしょうか。

次に、惣菜とともに増加していた嗜好食品の内訳を見てみます(図表6)。

図表6 平日に夜試合があった日のその他の平日と比べた嗜好食品カテゴリ別合計金額増減率比較

図表6 平日に夜試合のがあった日のその他の平日と比べた嗜好食品カテゴリ別合計金額増減率比較

増加していた嗜好食品をさらに細かいカテゴリで増減率を比較すると、「酒類」が大きく増加していました。菓子は減少しているので、野球の試合中継の視聴者は大人が多く、お酒を楽しみながら応援するという見られ方がされていたと考えられます。スポーツイベントが家飲み増加に結び付くのであれば、夜の飲食業にはネガティブな影響があったかもしれません。この「酒類」を更にカテゴリ別に見てみます(図表7)。

図表7 平日に夜試合があった日のその他の平日と比べた酒類カテゴリ別合計金額増減率比較

図表7 平日に夜試合があった日のその他の平日と比べた酒類カテゴリ別合計金額増減率比較

酒類をカテゴリ別に見ると全カテゴリで増加していました。グラフでは示していませんが、率ではなく増加額で見ると「ビール類」が一番になります。

最後に、時間別客数の比較をしてみます(図表8)

図表8 平日に夜試合があった日のその他の平日と比べた時間帯別来店客数増減率比較(主要時間帯)

図表8 平日夜試合のあった日のその他の平日と比べた時間帯別来店客数増減率比較(主要時間帯)

これを見るとやはり試合のあった19時から21時台の来店客はその他の平日に比べて特に減少しています。それでも減少幅は1割行かないので、ガラガラとまでは行かずやや空いているかなと感じる程度の減少ではないでしょうか。

今回は「ワールドベースボールクラシック2023」開催期間中の食品スーパーにおける購買行動の事例としてご参考にしていただければ幸いです。最後に今回のレポート内容をまとめますと、平日夜に試合のあった日中心に分析した結果として以下のようになります。

  • 全体の客数や金額には顕著な影響は見られなかったが、若干増加方向の効果がある可能性がある。
  • 生鮮カテゴリの販売が減り、惣菜カテゴリと嗜好食品カテゴリの販売が増えていた。
  • 惣菜では調理不要の主食系カテゴリや簡単な調理が要る半惣菜も増加。
  • 嗜好食品の中でも酒類の販売増加が大きく、様々なカテゴリの酒類が増加した。
  • 試合中継が行われている時間帯の来店客は試合のない日に比べ減少していた。

テレビの試合中継が高視聴率となる分、その時間の在宅率は高まり、その時間帯における外食から内食へのシフトはあるはずですが、スポーツイベントはクリスマスやお正月などの季節のイベントとは異なり特定の料理や食材との結びつきがないこと、またみんなでおいしいものを食べて楽しむモチベーションもないことから財布の紐がゆるむ訳ではなく、大きな売上増加にはなっていないように見受けられます。むしろ試合中継を見るために準備も食事も簡単に済ませたいという意識があることで、生鮮食品が減り惣菜の売上が増加しているように見えます。
その中でも購入が増加するのは酒類で、家でお酒を楽しみながら試合中継を見て応援をしているのでしょう。
スポーツイベントと食には生活者の意識の中に結びつきがないので「今日はスポーツ中継あるから〇〇食べよう」とならず購入につながらないのであれば、メーカーや小売店から「スポーツ中継を見ながらの食卓」として惣菜や簡便調理メニューを提案することで販売を拡大する機会となりうる可能性もあるのではないかと感じました。

私共といたしましては、今後もショッパーの行動を継続して観察し、生活者や市場の変化を追い有益な洞察をご提供していきたいと考えております。