表参道

表参道地図
地図をクリックすると拡大しますをクリックすると写真が開きます
フィールドワーク
川上 正倫
 
写真の英数字は地図の位置を示しています。地図をクリックして確認できます。

●表参道の景観的まとまり

 
〈E-1〉地図をクリック   〈E-2〉

表参道の特徴は、参道沿いの大型建物とその裏の住宅地の小型建物が唐突に隣り合っているというところである。
今回は、特にその境界線に目を向け、表参道が評価している空間のまとまりを探ってみた。

視点:それぞれの建築において前述のギャップをどのように評価した関係性をつくりだしているのか。

まとまりのタイポロジー
よくも悪くも建築家カタログの街といえる表参道。その大型建物の影響は大きい。
ならば、今回は主として大型建物の態度として次の4タイプを切り口としてみようと思う。
1. 意味的連続
2. 意味的独立
3. 配置的連続
4. 配置的独立

総括:参道からの商業地域ラインが薄いことによってかなり特徴的な断面をもつ街並である。
4つのタイプのクオリティの高さとバランスのよさが演出する「かっこ良くて、でもなんか昔からあるような」気分が最大の魅力なのでは?
参道をひとつのピークとした広い裾野によって建物の密度感を感じる地域。粒度の違いを行き来することで都市と郊外?の往来を一瞬で楽しめる。
そこが表参道に住む、そして店をもつ双方の価値を高める構図になっているのではないかと思う。

 

●全体総観

  246側から表参道にアプローチ。
246に面する昔からの建物や交番などと徐々に立ち始めた表参道沿いの大きなビルがかなり対比的。
結果的にもはや森となることはないであろう参道にある種の軸を作っているようにも見える?道路から断面的にケヤキ、大型建物、低層建物と高さのボキャブラリーが豊富な地帯であることがわかる。〈E-3〉
  ちょっと一本はいると小型の店が並ぶ。参道東側は、少し長細い形状の建物が多い。斜線で北側が確認できて迷子にならない。〈E-4〉
  ちょっと行くと住宅地の雰囲気が強くなる。大きな家が多く、閑静かつ高級な感じだが決して排他的な感じではないのがこのあたりの特徴。単に塀がないからかな。〈E-5〉
  西側は東側に比べてより低層な建物が並ぶ。渋谷までずっとこの調子。隠れ家的お店なんていうが探索すると意外なところにお店があってうれしい。同潤会なき今、かつての表参道ショッピングの気分はこちらで。〈E-6〉
  看板がなければ住宅かお店かわからない。そんな垣根の低さが生活と密接した地域の「意味」をつくっている。参道沿いのお客さん目当ての「意味」とは明らかに異なる。〈E-7〉
  日本の住宅地のひとつの特徴は緑が豊かなこと。この地域の楽しさは住宅の密度を維持することによってまだまだ緑が多いこと。緑があるとごちゃごちゃしている関係性もなんなくどうでもよくなる。〈B-8〉
  このあたりも全体的に住宅地の雰囲気。ちょうど表参道への抜け道にあたる路地は車通りが多いのが残念。〈E-9〉

 

●タイプ1 意味的連続

表参道における意味=商店(大規模建物)、住宅(小規模建物)の建築的要素の用途差による材料、意匠の差である。

参道沿いの大型店舗は、いずれも世界的ブランドによる様々な意味で一流の建築である。
その一歩うしろは、通常の住宅地のものといっても差し支えない、普通の住宅が並んでいる。

住宅地側の意匠を住宅スケールで考える。
それが、住宅地側の店舗も「表参道の店」として意識させる景観となっているのでは?

  こちらの巨匠の建物は表と裏とでデザインの密度が違う。住宅地の密度、商業地域の密度が視覚化されている。〈E-10〉
  参道沿いのケヤキが建物の立面の主要な部分を隠す。建築家カタログのように世界的な巨匠の建築がそれぞれ主張しあい林立しているがケヤキ並木で軸性が保たれている。〈B-11〉
  写真じゃわかりにくいのですが、周辺環境との関係を意識的に扱っている建物。表参道というよりも、この辺りの住居型店舗のひとつの形式を示す。この建物によって表参道エリアの住宅地内店舗をどう理解するかが見える気がする。〈F-12〉

 

●タイプ2 意味的独立

表参道における意味=商店(大規模建物)、住宅(小規模建物)の建築的要素の用途差による材料、意匠の差である。

タイプ1とは、反対にそのギャップをモロに意識するないし、無視するタイプ。
そもそものデザインにそのような差が問題ないような設定とする。
むしろこのタイプは、参道沿いの意味的連続を作り出しているともいえる。
タイプ1があって、タイプ2がある。参道側の意味的連続を作り出しながら、ほどよく住宅地にその意味を流出させている?

  昔から不思議な位置にあった交番裏の神社と住宅が表参道ONEによってその不思議さを視覚化されました。ONEもその断絶を意識的に見ているのか壁面は非常にシンプル。ブランドビルの裏側の対応にみるタイポロジーもこの地域独特の楽しみかも。〈E-13〉
  これまた世界の巨匠のブランドビルとその手前にある中華?和風なファサードをもつ建物。昔からあったこの中華ビルは、和っぽいものを売っている外人むけ?ショップだがセジマによってかえって落ち着いて見える。中国もそうだが伝統的な形状と現代建築の取り合いは街並としてのひとつの課題だが、この程度の大きさであれば認識として個々の建物として扱えそう。また全体としてばらばらな感じがしないのはケヤキ並木のおかげか。そう考えるとヒルズ側が素っ気ないのは統一感がありすぎるからかも。〈E-14〉

 

●タイプ3 配置的連続

意味よりもより建築的な決定による配置的な関係性。周囲の状況が変わってくると配置関係の位置づけも変わってくる。
周囲の状況とあわせてつくられる複合的な関係性であるといえる。

視線的なつながり、動線的なつながりによって、参道から直交方向へ、住宅地側から参道方向へそれぞれ連続性をつくることで街並として、ひとつのまとまりを演じる。

  表参道に垂直方向を向いているカフェ。ヨーロッパだと大通りに垂直な小道側にこのようなカフェがあるのは常套であるが、ここの文脈からするとちょっと変。テナントの形状を逆手にとったこのカフェが参道を歩いてくる人を側面からみるのではなく真正面で見るというあまり無い視点が独特。むりやりRue de Anniversaireと名付けられたこのビルへの横道も隣のビルが意識してくれたらもっと面白い展開も期待できるのに。〈E-15〉
  ヒルズ向かいの別の世界的巨匠の建物。ケヤキより上と下で雰囲気が違う。相変わらずの円柱で作家性を主張しているものの知らなければ気づかないくらい溶け込んだ建物。表参道のひとつの特徴として建物の逆側からケヤキ越しにその建物を見るという視点がある。建物側から見てもケヤキに蹴られのと近すぎるのとで建物が見えない。足下のバランスが建物と道路、歩行者との関係を位置づけ、ケヤキより上が建物の立面的な印象を決める。参道入り口にある師匠の建物もそうだがすっきりしていて時代すれしなさそうな建築。面白く無さはヒルズと張るが建築の流行と「新しさ」ってなんなのか考えさせられます。〈E-16〉

 

●タイプ4 配置的独立

意味よりもより建築的な決定による配置的な関係性。周囲の状況が変わってくると配置関係の位置づけも変わってくる。
周囲の状況とあわせてつくられる複合的な関係性であるといえる。

タイプ3と比較すると周囲との連続意識が低く孤高の存在を演出するもの。これも参道の軸性を作り出す為には必要な存在?
周囲の状況の変化に伴って連続の関係性に転化するかもしれない。

  排他的でない住宅地からちょっと北側にいったとても排他的な壁。安藤しか目に入らない気持ち悪い一帯。〈E-18〉
  道を曲がっても安藤しか目に入らない。ちらりと見える緑と昔の同潤会アパートを保存した一角が救い。早く参道に戻りたい。そんな気にさせる、さすが世界の巨匠安藤の建物の力。〈E-19〉
  ある意味微妙な残しかた。なんでこれが保存できて他が。。。トイレは確かにきれいになりました。他のブランドビルと比較してこの腐っても安藤の建物が腐敗臭ばりばりなのは、森ビルのせいなのか。明らかに参道側に閉じている態度のでかさと他との参道沿いの建物とのリズムを逸している一体的になった横長のボリュームが完全に表参道を新しいものにしている。〈E-20〉
  長い。まだ続くのか。ずっと同じファサードが続くので一旦入る気がしないと延々入る気がしなくて気持ちがどんどん離れていく。別に建物自体悪くないと思うけど、表参道に?って感じ。最近仙川にもこれのクローンが出現。そちらもなぜ仙川に表参道?って感じなのでいずれにしても「?」なのだろうか。〈E-21〉
  こちらの巨匠も参道側よりも裏側のほうがよくわかる。こちらも表と裏で表現はかわらないけど、全体の密度との関係で印象が変わるのがおもしろい。〈E-22〉

●表参道とその街並 建築家カタログの街

 建物を見る立場、建物がつくる景観としての表参道の街並の特徴は、参道際を急勾配のピークとした六本木方面、渋谷方面へとそれぞれ平坦に続く裾野を構成するその断面にある。
 参道沿いにケヤキ並木がつくられており軸性の強いまさに参道を形成している。しかしながら、参道入口(表参道交差点付近)では参道の雰囲気が作られているのに、目的地(明治神宮)に近づくにつれその軸性が弱まっているのが面白い。天皇は電車で参拝され、安全上、駅から神宮との関係を重視したとなれば参道が軽んじられたのもしかたなかったのもしれない。結局、行き先不明瞭の参道は、明治通り、さらに原宿駅前の通り(名前不明)のさらに強い軸によって街並としては分断されており、ケヤキ並木の連続によってかろうじて参道の痕跡を残している。そのケヤキだが、もともと年々領域を増やして森にしようという意図があったようだが、今では両サイドにブランドビルが立ち並び、それはそれで特徴ある華やかな通りとなっている。それらのブランドビルの設計者もまた世界に名だたる巨匠ばかり。丹下健三、黒川紀章、安藤忠雄、伊東豊雄、青木淳、妹島和世、隈研吾などなど。ただいまオランダの建築家グループMVRDVもビルを建設中である。一度に計画され開発される地域と違い、古くから成長してきた街並は建築による連歌のようなものである。質が高い歌が続くと全体もよくなる。個性的な建物が続けば街並もばらばらになる気もするが、適度なボリューム感とケヤキ並木の統一感が優しく押し流してくれている。今は、よいスパイラルに乗っているが、逆に質の低い建物が立てば、悪いスパイラルも起こりうる。ケヤキの維持も問題化している上、今後この地域が永久にブランド街として活気づけばよいが、次なる方向性を見据えての空間の質作りが重要である。参道に平行する表層の街区のみが商業地域で、その後ろはばっさり住居地域となる用途地域が切り替わる。一応参道沿いも30mの高さ制限があるようだが、やはり住居とのボリューム感の差は歴然である。商業ム住居の密度差は、商業側のビル裏側のデザインとして表れる。有名建築家の手によるこれらのビルは周囲との対応という意味でもよく検討されており、用途地域の差そのものが景観として視覚化されている。機能的に裏だからといって住宅地の背景に立つわけだからある意味景観的には顔のようなもの。表からも裏かも建築家たちの環境との対話を眺めるのもおもしろい。住居地域の方はというと一転していわゆる日本の住宅地が広がっている。電線はクモの巣のように張り巡らされ、道路も細い。でもこれはこれでいいんじゃないかという気がする。こういう雰囲気を残すというのも街並の質の向上であるという価値観があってもいいんじゃないか。
 密集する住居地域もまた、北川原温、妹島和世、坂本一成らの住宅スケールの建築が散在している。デザインされた建築が決して街並から浮いていない地域である。これらの建物の設計主旨を読んで改めて見学すると、何か街が違うように見えてくる。お店探し同様、casaBrutusとかその他諸々の雑誌に掲載されたヒルズ記念の建築mapを片手に蘊蓄を語りながら建築を巡ると表参道の新たな価値が見いだせるのではないだろうか。


景観から都市の価値を探るということで、建物単体とその周辺環境とのおさまりやまとまりから評価してみました。表参道については、「配置的」な観点からも「意味的」な観点からも周辺環境に連続させようとする場合も独立させようという場合も良好な関係が気づけていたと思います。それは、もともとが複雑で要素が適度に混合された街並であり、デザイン性の高い建物を受け入れうる土壌ができているのだと感じます。全体としてひとつのデザインの優れた商品を集めた「カタログ」のようで、それらひとつひとつを別個に見て楽しむというそんな景観ができているように思います。