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038 サイクルスランゲン

(デンマーク王国)

サイクルスランゲンは235メートルの長さの歩行者そして自転車専用の橋である。それは、同じく歩行者そして自転車専用のブリエーブロ橋と国道2号線とを結ぶことになる。この橋は190メートルの長さで4メートルの幅を有している。
 コペンハーゲン港の東西を結ぶ200メートルのブリエーブロ橋が完成したのが2006年。これは、自転車移動時間を大幅に短縮させ、また自転車利用を増加させたことで3300万デンマーク・クローネの社会的便益をもたらした事業として評価された。しかし、コペンハーゲンの都心部側(西側)へと橋を渡った後には、目の前にある国道2号線とは高低差があり、せっかく橋を渡っても遠回りをしなくてはならなかった。そのボトルネックを、このサイクルスランゲンは解消することになった。これによって、ブリエーブロ橋の使い勝手が大きく改善され、都心部へのアクセスも向上することになったのである。

039 サイクル・スーパーハイウェイ

(デンマーク王国)

サイクル・スーパーハイウェイは、コペンハーゲンを中心とした20の自治体の協働作業によって整備されることになった。その目的は、コペンハーゲンを中心とする首都地域が、国内でも最も自転車に乗りやすい地域にすることと同時に、環境に優しく、サステイナブルな交通手段である自転車をより普及させていくことにあった。

122 サンタ・ジュスタのエレベーター

(ポルトガル)

リスボンのサンタジュスタのエレベーターは、おそらく世界で最も有名なエレベーターなのではないだろうか。リスボンの低地バイシャ地区と丘のシアード地区とを結ぶサンタジュスタのエレベーターは観光資源となっており、しかもランドマークとしても強烈な存在感を放つ建築物である。

163 サントスの珈琲博物館

(ブラジル連邦共和国)

港町サントスは、珈琲の出荷港として20世紀前半には大変栄えていた。1922年にそこにつくられた珈琲取引所の建物はサントス市内でも、最も華美な建物として捉えられていた。この珈琲取引所を珈琲博物館にしたことで、サントス市は由緒ある歴史的建築物を有効に活用することに成功した。

129 サン・ホップ公園

(カナダ)

アイスクリーム屋が1980年代に閉店した後、この空間は18番街を右折するためのレーンが設置されていた。このレーンの空間を市役所が潰すと判断したことで、この豊かな公共空間が生まれた。

059 サード・ストリート・プロムナード

(アメリカ合衆国)

自動車社会・ロスアンジェルス。その都市圏の中でも数少ないヒューマン・スケールの都市デザイン・プロジェクト。自動車排除のコンセプトをあえて曖昧にしたことがポイントとなり、リデザインに成功。昼も夜も多くの人が行き交う人気の街歩きスポットに。

160 ザリネ34

(ドイツ連邦共和国)

人口縮小は地域に大きなダメージを与える。まず、活力が削がれていき、状況を変更させるエネルギーとなる投資をしてくれる人もいなくなる。そして、空き家が増え、街並みはさらに寂れた感じになり、縮小を加速化させていくといったマイナスのサイクルが繰り返されていく。ザリネ34は、このマイナスのサイクルの回転を止めるために空き家に注目した。

184 ザンド広場の再生

(ベルギー)

歴史的地区が世界遺産に指定されているブルージュにおいて、新たに都市を改造する機会はほとんどない。そのような状況下では、歴史的地区の縁に存在するヘト・ザンド広場のリ・デザインは、ブルージュにとって多くの課題を解消させる千載一遇の機会であった。

127 下北沢カレーフェスティバル

(日本)

まず、その始めたきっかけがいい。思いつきで仲間内でやってみたら楽しかったので、街レベルでやってしまおうという、「街を自らが楽しもう」という街の人の意識。さらには、それにIT技術を活用しようという、新しいものに挑戦する創造性。そして、そのような企画に乗っかる店舗群の腰の軽さ。

097 シュテルヴェルク60

(ドイツ連邦共和国)

ドイツではこの5年ぐらいで、カーフリー住宅(オートフライ・ヴォーヌング)という新しいライフスタイルが注目されている。広く知られているのはフライブルクの郊外につくられたファウバーンであるが、ここシュテルヴェルク60の方が、コンセプト的には徹底した街づくりが為されている。

065 シュピネライ

(ドイツ連邦共和国)

ドイツ再統一後、競争力の無さから閉鎖され、放置された広大な工場跡地がアーティストたちの活動の場として復活。ライプチッヒ市でも若者にも人気のある文化ゾーンへと変容した。何か創造したくなるような気分にさせられる刺激的な場所。

067 シュヴェリーンの連邦庭園博覧会

(ドイツ連邦共和国)

シュヴェリーン市は、湖畔へのアクセスや城周辺の公園の整備、そして道路ネットワークの再編成といった都市計画的に重要な課題を、庭園博覧会という「鍼治療」で一挙に遂行した。

218 松應寺横丁にぎわいプロジェクト

(日本)

松應寺横丁には、戦後の闇市発祥の商店街と木造のアーケード、狭隘な路地が残っており、それらが昭和30年代のレトロな雰囲気を醸しだし、訪れる人々に強烈な郷愁を誘う。しかし、同プロジェクトが開始される前は、ここはもはや崩れかける寸前のような状態であった。それを、地元のNPOが住民と丁寧なコミュニケーションを重ねることで、その問題をテキスト化し、人々に共通した問題意識を持たせることに成功した。

213 シラー・パーク

(ドイツ連邦共和国)

ドイツ・ルール地方に1970年代に建てられた社会賃貸住宅団地。空き家率の増加に直面した市と住宅公社は、大胆な減築を実行し、戸数を減らして団地全体のリニューアルに成功した。地区のイメージは改善されつつあり、改修の5年後には4年待ちのウェイティング・リストができるほどの人気となっている。

070 白金台のどんぐり児童遊園

(日本)

目黒通り沿いに広がる自然豊かな「どんぐり児童遊園」。港区最大の児童公園である。平成26年港区が行った利用実態調査では平日594 人、休日374人という利用者がおり、これは54ある同区の児童遊園の中でもそれぞれ1位、2位である。

156 新栄テラス

(日本)

新栄テラスは福井市の福井駅西側の中心市街地にある商業集積地区における暫定的な駐車場活用広場である。来訪者のアンケート調査では新栄テラスによって「まちなかのイメージがよくなった」と回答した人が86%あったことや、それまでこの地区に来なかったような若い世代の人達が多く来るようになったことも分かった。

162 シンガポール中心市街地照明マスタープラン

(シンガポール共和国)

都市の格が急上昇しているシンガポールであるが、世界都市としての歴史が浅いため、そのアイデンティティが確立できていないことが、そのアキレス腱ともなっている。そこで、夜間照明のデザインのマスタープランを策定することで、シンガポールの新しい都市像を創造することが企画された。

033 ジェノサイド・メモリアル

(ルワンダ共和国)

ルワンダのおぞましい歴史として、1994年に起きた国民同士が殺しあう大虐殺がある。これは、以前の宗主国であるベルギー人が、支配をしやすくするために、ルワンダ人をフツ族とツチ族に分けて、ツチ族にフツ族を支配させる構造をつくりあげたことによって生じた悲劇である。

088 ジズコフ駅の再生プロジェクト

(チェコ共和国)

無骨で巨大な産業建築の中に、お洒落なお花畑やバーなどがある。私が訪れた時は、ランドスケープの展示がされていたが、それを眺めながらゆったりと産業遺産の巨大な構造物の中でビールを飲むのは、なかなかの空間体験である。

076 自転車ステーション ミュンスター

(ドイツ連邦共和国)

そこは単なる駐輪場ではなく、修理などもできる自転車のクリニックのようであり、また、いろいろな関連部品も購入できる。それだけでなく、レンタサイクルのサービスまでもが提供される。まるで自転車の総合商社のようなビルなのである。

204 16番ストリート・モール

(アメリカ合衆国)

16番ストリート・モールは、デンバーの都心部にある2キロメートルほどの長さのトランジット・モールである。その設計コンセプトは屋外広場であり、多くの人々が集い、交歓する場として機能している。多くのイベントが開催され、チェスをしたりする設備なども備えられている。「フリー・モールライド(Free
Mall Ride)」という無料バスはこの16番街モールを楽しむための快適なアクセスを提供しており、それによってデンバーという都市の魅力が一層開花していると考えられている。

161 ジュビリー橋

(シンガポール共和国)

シンガポールのシンボルであるマーライオンがあるシンガポール川の河口は、エスプラネード橋でマーライオン公園と対岸のエスプラネード劇場とが結ばれていた。そこに、新たにこの橋と平行するように2015年につくられたのが歩行者専用橋であるジュビリー橋である。

169 ジュビリー・ウォーク

(シンガポール共和国)

ジュビリー・ウォークは、シンガポールの建国50周年を祝して整備された延長8キロメートルの歩道である。この歩道は、フォート・カニングの丘、シンガポール川、行政地区、マリーナ・ベイといったシンガポールの過去、現在、将来の物語を象徴するような23のランドマークを結んでおり、ここを歩くことでシンガポールという都市国家を形成した人々やコミュニティの営みが理解でき、その都市形成の歴史を学習できるように意図されている。

079 自由が丘の九品仏川緑道のベンチ

(日本)

日本の行政は、それまで公共空間で座るという発想すらなかった。そのような状況を、ベンチを置いたことで大きく変え、そして自由が丘という街を、人々が住みたくなり、また買い物等で行きたくなるような街へと変貌させたのである。面白い街だと人が思うところは、頑張っている人たちがいるということをも知らしめる素場らしい「都市の鍼治療」事例である。

131 スティーフン・アヴェニュー

(カナダ)

都心から自動車を排除して、歩行者専用の空間にするのは「都市の鍼治療」としては、極めて汎用的であり、外さない方法論である。しかし、北米の都市ではうまく行かない場合が少なくない。そのような課題を解決し、しかも歩行者専用空間を都市に維持させるうえで、カルガリー市がスティーフン・アヴェニューにて実践した対策は極めて効果的であった。

155 ストックホルム市立図書館

(スウェーデン王国)

インターネットの普及によって、図書館には人々が集まり、交流する、より広場的な機能が求められているように思われる。ストックホルム市立図書館は、まさに人が来たくなるような空間的魅力に溢れている。

154 ストックホルムの地下鉄ホームのアート事業

(スウェーデン王国)

ストックホルムの冬の夜は長い。そのような中、地下鉄といったそうでなくても日が差さない陰鬱な空間において芸術作品を展示をすることで、そこを創造的・刺激的な空間へと変容させることにした逆転の発想は、まさに「都市の鍼治療」的な事例であると考えられる。

060 ストラスブールのトラム

(フランス共和国)

世界遺産の街並みを誇るストラスブール。しかし道路が狭く、慢性的な渋滞に悩んでいた。その都心部の再生を促すために導入されたのがライトレール。脱自動車化をすすめ、都市空間をヒューマン・スケールへとリデザインすることに成功した。

062 ストリッシュコフ駅

(チェコ共和国)

味気ない郊外住宅地に現れた宇宙船のような地下鉄駅。地域アイデンティティの薄い地域に強烈なランドマークをつくりだすと同時に、交通移動のハブとしての象徴性をも見事に表現することに成功した。

037 スーパーキレン

(デンマーク王国)

スーペーキレンは、コペンハーゲン市の西部にあるノーブロ地区につくられた公園。その面積は3ヘクタールに及び、3つのエリアから構成される。赤の広場、黒の市場、緑の公園である。赤の広場は近代的な公園の機能を持たせており、カフェや音楽、スポーツ活動が行える施設・空間が配置されている。黒の市場は、伝統的な広場であり、噴水やベンチが置かれている。そして、緑の公園はピクニック、スポーツ、犬の散歩などに使われている。

159 聖母教会の再建

(ドイツ連邦共和国)

聖母教会は「バロックの真珠」と形容される素晴らしいバロックの建築群の中でも、その優雅で華やかなシルエットは一際目立っている。復元された聖母教会は、その優雅さを湛えつつも、オリジナルの瓦礫である暗い石と、新たに使われた明るい砂岩の石との対比は、歴史の傷跡を観る者に強烈に訴えかける圧倒的な存在感を纏っている。

086 セオドア・シュトローム通りの減築プロジェクト

(ドイツ連邦共和国)

ザクセンドルフ・マドローには、これまで3度訪れている。2006年に訪れた時は、通り沿いの高層棟の撤去を行っていた。大きなクレーンで建物を壊していく様子は凄まじい迫力であった。しかし、その後、訪れるたびにザクセンドルフ・マドローのまちはよくなっていると感じる。

200 世田谷美術館

(日本)

既存の美術館の硬直性を、設計という創造的行為によって解放させようとした内井昭蔵と建築設計事務所のスタッフの熱意が、生活美術館、オープン美術館、公園美術館という斬新な視座をもたらし、それを「健康な建築」という大きな理念で包み込むことに成功した。

144 センター・フォア・アルタナティブ・テクノロジー

(ウェールズ)

センター・フォア・アルタナティブ・テクノロジー(C.A.T.)の特筆すべきところは、代替技術の新しいアイデアを湧き水のように次から次へと生み出しているという点である。このような創造的な組織へと成長した要因は、「人を惹きつける純粋さ」と「自己革新を伴う進化プロセスを内包していること」だと考察される。

187 セーヌ河岸のパリ・プラージュ

(フランス共和国)

パリのセーヌ河岸、ルーブル美術館側は多くの自動車が行き来する自動車専用道路であったが、2016年、自動車が閉め出され、歩行者専用空間として6ヶ月間試行的に使われるようになった。アンヌ・イダルゴ市長はその後、永久に自動車をこの道路から追放すると発表。

インタビュー

ジャイメ・レルネル氏インタビュー

(建築家・元クリチバ市長)

「よりよい都市を目指すには、スピードが重要です。なぜなら、創造は「始める」ということだからです。我々はプロジェクトが完了したり、すべての答えが準備されたりするまで待つ必要はないのです。時には、ただ始めた方がいい場合もあるのです。そして、そのアイデアに人々がどのように反応するかをみればいいのです。」(ジャイメ・レルネル)

鳴海邦碩氏インタビュー

(大阪大学名誉教授)

1970年代から長年にわたり日本の都市計画・都市デザインの研究をリードしてきた鳴海先生。ひとびとが生き生きと暮らせる都市をめざすにはどういう視点が大事なのか。
これまでの研究と実践活動の歩みを具体的に振り返りながら語っていただきました。

中村ひとし氏インタビュー

(クリチバ市元環境局長)

シリーズ「都市の鍼治療」。今回は「クリチバの奇跡」と呼ばれる都市計画の実行にたずさわったクリチバ市元環境局長の中村ひとしさんをゲストに迎え、お話をお聞きします。

対談 福田知弘 × 服部圭郎

(大阪大学サイバーメディアコモンズにて収録)

お金がなくても知恵を活かせば都市は元気になる。ヴァーチャルリアリティの専門家でもある福田先生に、国内・海外の「都市の鍼治療」事例をたくさんご紹介いただきました。聞き手は「都市の鍼治療」伝道師でもある、服部圭郎 明治学院大学経済学部教授です。

対談 阿部大輔 × 服部圭郎

(龍谷大学政策学部にて収録)

「市街地に孔を開けることで、都市は元気になる。」(阿部大輔 龍谷大学准教授)
データベース「都市の鍼治療」。今回はスペシャル版として、京都・龍谷大学より、対談形式の録画番組をお届けします。お話をうかがうのは、都市デザインがご専門の阿部大輔 龍谷大学政策学部政策学科准教授です。スペイン・バルセロナの都市再生に詳しい阿部先生に、バルセロナ流の「都市の鍼治療」について解説していただきました。

岡部明子氏インタビュー

(建築家・東京大学教授)

「本当に現実に向き合うと、(統計データとは)違ったものが見えてきます。この塩見という土地で、わたしたちが、大学、学生という立場を活かして何かをすることが、一種のツボ押しになり、新しい経済活動がそのまわりに生まれてくる。新たなものがまわりに出てくることが大切で、そういうことが鍼治療なのだと思います。」(岡部明子)

今回は、建築家で東京大学教授の岡部明子氏へのインタビューをお送りします。

土肥真人氏インタビュー

(東京工業大学准教授)

今回の「都市の鍼治療インタビュー」は、東京工業大学准教授の土肥真人氏へのインタビューをお送りします。土肥先生は「エコロジカル・デモクラシー」をキーワードに、人間と都市を生態系の中に位置づけなおす研究に取り組み、市民と共に新しいまちづくりを実践されています。