食ライフスタイル変化/トピックス

「食ライフスタイル変化のこれまでとこれから」に関して、注目されるトピックを3つ紹介します。

[1] 下がり続ける日本の食料自給率

 日本の米が中国に輸出され、現地米の25倍もする値段なのに、人気があるという。日本の食品が安全に配慮し、品質がよいことから、このような値段の格差があるにも拘わらず売れているというのは、誇れることだといえる。これは米だけでなく、リンゴなどの果物も定評がある。

 しかし、食料全体となるとそうはいかない。農林水産省の発表に拠れば、06 年の日本の食料自給率は39%に落ち込んでいる。食料自給率は、いうまでもなく日本人が食べている食料を国内で賄える割合で、一般的にはカロリーベースで計算される。図は世界の先進国の自給率を示したものだが、米国やフランスは100%を超し、本格的な輸出を行っている。イギリス、ドイツ、イタリアでも60%以上に達し、日本が先進国の中ではきわめて低い水準にある。

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 その原因はいろいろあるが、最大の要因は、日本人の食事スタイルが欧米化された点にある。たとえば、米はかつて侍の働きを示す尺度であったほど日本人に馴染み深いが、国民一人あたりの消費量は60年度が114キロだったのに対し、06年度には約その半分にまで落ち込んでいる。パンや肉食が増え、日本人の健康管理にも影響を及ぼしている。

 共働きが一般化し、食事に余り時間が掛けられなくなってきた現在、手軽に食べられるレトルトなど、海外からの輸入に頼る食材も少なくない。食糧確保の安全保障、食の安全、そして日本人の健康管理も含め、自給率の向上と、食生活の中身について、真剣に考えければならない状況に来ている。


資料:日本以外のその他の国についてはFAQ”Food Balance Sheers”等を基に農林水産省で試算。ただし、韓国については、韓国農村経済研究院”Korean Food Balance Sheet2001″による(1990,1980,1990及び1995,2001年)

[2]男の料理

 男性が厨房にはいることは珍しくなくなっている。NHKで『男の料理教室』が放映され始めたのは、1983年である。NHKが定期的に行っている「日本人の意識調査」の中に、男性の家事への参加・協力を尋ねた項目がある。「男性も手伝うべきだ」を指示する割合は、73年次が53%だったのに対し、『男の料理教室』が始まった83年には、67%、そして03年には86%に達している。

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 また、東京ガス都市生活研究所の生活定点調査に拠れば、首都圏に住む20歳以上の男性で、料理を実際行っている割合は、90年が40%程度だったが、05年には55%を超え、上昇の傾向にある。2人に一人は何らかの形態で家庭において料理をしていることになる。

 01年末に、ベターホームが料理教室に通っている20~49歳の男性を対象に調査を行っている。そこでも興味深いいくつかの知見が得られている。まず、料理を習おうとしたきっかけは、「家族、友人にすすめられて」、「料理にチャレンジしたかった」、「趣味のレベルアップ」の順になっているが「生活上必要に迫られて」は既婚者が6.8%なのに対し、未婚者では14.0%と、倍以上になっているのは興味深い。また、「料理を習うようになって良かったことは」の問に対し、「料理の楽しさを知った」、「食全般に関心を持つようになった」、「気分転換の場ができた」などの項目が指示されているが、やはり、既婚者と未婚者の間で、見解が異なって興味深いのは、「普段から料理をするようになった」(既婚者:19.7%、未婚者:10.0%)、「外食が減った」が(既婚者:5.1%、未婚者:11.0%)、となり、「学習効果」が読み取れる。

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 男性の料理はいままで趣味の域を超えていなかったが、以上の調査結果からも読み取れるように、生活を営む上で必要な行為になろうとしている。その背景には、未婚男性の増加や夫婦共働きの一般化など社会的状況を反映しているのだろう。

資料:ベターホーム調査:http://www.betterhome.jp/anq/dansei/dansei.php

[3]単身者の食ライフスタイル

世帯構成の変化をみると、単独世帯つまり一人住まいの割合が年々高まり、今後も増える傾向にある。人口問題研究所の予測では、2025年にはほぼ3分の1に達する。

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それでは、一人暮らしの食生活はどのようになっているのだろうか。
東京ガス都市生活研究所が04年に行った『20~50代単身者の食生活とその意識』調査はそこにスポットを当てている。




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平日、朝食は家で食べる割合が多いが、若い世代は抜く傾向にある。食べるものは半数がパン、3分の1がお握りなどご飯となり、若い世代ではおかずなし(46%強)という殺風景なイメージが出てくる。50代は自分で調理して食べる割合が増えてくる。
・ 平日の夕食は、男女差が大きく、自宅派は男性で52.4%、女性で70.5%に達し、外食派は、男性で35.1%、女性で15.4%になっている。やはり女性は自宅派が多く、調理も市販の食品を暖めたりする程度のものから、素材を購入していわゆる料理する割合が高まっている。男女とも休日は家で食べる割合が高まっており(56.1%)、素材から料理する割合大きい。休みの日は、せめて料理らしい料理をするということなのだろうか。

(資料:『20~50代単身者の食生活とその意識』 東京ガス 都市生活研究所)


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中食についての質問では、半数以上が週に1度は既成の総菜や弁当を利用し、コンビニの利用が多い。特に、男性にその傾向が強いという。食材や総菜の宅配サービスは65.5%が利用しないとしている。


(資料:『20~50代単身者の食生活とその意識』 東京ガス 都市生活研究所)

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・ 総じていえば、単身者は手間暇掛けず、手軽に食べられるコンビニ、デパ地下などで弁当や総菜を購入し、自ら素材を買ってきて料理をする割合は高くないといえるだろう。

(資料:『20~50代単身者の食生活とその意識』 東京ガス 都市生活研究所)

[長谷川文雄]

編集後記

編集スタッフ
[発行] (財)ハイライフ研究所

[発行人] 高津春樹
[スタッフ]
プロデューサー 長谷川文雄
エディター 小山田裕彦
サブ・エディター 萩原宏人
WEBデザイナー 熊倉次郎(ISLA) 吉野博満(ISLA)
エグゼクティブ・アドバイザー 加藤信介

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