ハイライフ研究所メールマガジン 第35号

2009年11月27日配信  発行責任 財団法人ハイライフ研究所 事務局

「子ども手当」で損得勘定するまえに

今年の流行語になった感のある「仕分け」。
その仕分け作業の一方で議論となっているのが「子ども手当」の創設だ。家族に中学生以下の子どもがいる場合、1人につき毎月2万6000円を全世帯に支給するというもの。
この「子ども手当」の実現には初年度2.7兆円の財源が必要となる。
そしてこれを賄(まかな)うために計画されているのが「配偶者控除」と「扶養控除」の廃止だ。
「手当」を支給する一方で、「控除」を廃止する。明暗が分かれるのは、当然のことながら我々自身の家族構成ということになる。
大雑把な計算だが、一番得をしそうなのは、中学生以下の子どもがたくさんいる共働き夫婦の家庭。
反対に、最も損をしそうなのは、中学生以上の子どもを抱えしかも妻が専業主婦の家庭となりそう。

少子化への対応として、子育て中の家庭を支援する意図は理解されるが、疑問符のつきそうなのが高校生・大学生のいる家庭をどう考えるか、というところだろう。
「公立高校授業料の無料化」という公約がそれに対応するのかもしれないが、なんとなく対処療法の感もいなめない。

一方で、「配偶者控除」と「扶養控除」の廃止は、女性の就労を促進させたいという狙いもあるだろう。現制度では、妻の給与収入が年間103万円を超えると夫が配偶者控除を受けられなくなる。そのために奥さんがなんとなくパート・アルバイトの状態にとどまり続けているということが少なくない。控除が廃止されれば、いわゆる「103万円の壁」にこだわる必要はなくなるわけで、働きたい妻のポテンシャルを活かせるという効果が期待される。
「手当」の支給や、「控除」の廃止によって、家族のありかたや働き方が変化する。結局のところどんな家族像やライフスタイルを市民に期待するのか。議論すべきはまずその点ではないだろうか。(HH)


<今号の内容>

1. 立澤芳男の「High-Life 生活・社会総括レポート21」
2. 富裕層のライフスタイル研究
3. 縮小する都市 ―ドイツの先進事例を訪ねる―
4. 「東京圏都市研究プロジェクト」調査レポート(2005年)

5. 新刊書のおしらせ 『環境首都コンテスト 地域から日本を変える7つの提案』



1.立澤芳男のHigh-Life 生活・社会総括レポート21

第7回 サービス産業社会

サービス社会を主導する日本のニューサービス業

消費者市場を取り巻く環境は、少子化・高齢化、女性の社会進出、環境問題の深刻化と経済のグローバル化、サービスの多様化や情報化の急速な進展、規制改革、などにより大きく変化している。
こうした環境の変化を背景に消費者・生活者はサービスに関し多様な選択ができる時代となった。
一方で、企業不祥事、価格変動、金融リスクの増大、デフレ不況など様々な問題が発生している。
そこで、本レポートは、日本が工業社会からサービス社会に転換したといわれ始めた1980年代からすでに半世紀を経過している現在、サービス社会といわれる状況とその社会を主導するサービス業がどこまで進んでいるのか、またどのような課題を抱えているのか、そして今後どのように変化してゆくのかを見てみたい。

この平成の20年で成長し変貌する」サービス業の成長の背景とその実際を探る。

「立澤芳男のHigh-Life 生活・社会総括レポート21」は以下のURLをご覧ください。
http://www.hilife.or.jp/wordpress/?p=2719


2. 富裕層のライフスタイル研究

総額1400兆円といわれる個人金融資産の高額保有者、あるいは伸長する高額商品や海外ラグジュアリー・ブランドの購入層として「富裕層」という用語がメディアに度々登場する様になってきた。又、「個人金融資産1億円以上保有者131万人(メルリリンチ日本証券)」という報道もあり、実体としての「富裕 層」も注目されるようになってきた。 戦後40年、一億総中流社会(階級・階層の境界が不明確)を築いた日本であるが、ここにきていくつかの特性をもった「富裕層」に分岐しつつあることが想定 される。

研究の第一段階は、社会階層、ライフスタイルや個人金融資産などの複数の市場セグメントの視点から、多様な「富裕層」を仮説し、特性別に量的な実態を検証することである。第二段階は、それぞれが社会(政策)、個人(消費者、生活者)そして企業(産業)とどのような側面で係り、どのような意義を持ちうるのかを整理・考察していく。その上で、「富裕層」をキーワードにした将来を先取りするニーズ抽出、あるいは幾つかの「富裕層」の意識・消費行動・特性などのライフスタイルの実像を把握し、「富裕層」を対象としたマーケティングが受容される条件などを明らかにする。

「日本版富裕層」を先行指標として、成熟期を迎えた日本社会・経済・生活の活力維持を生み出すマーケティングのあり方の提言を最終目標とする。

講師画像

発表:
ハイライフ研究所主任研究員・中山事務所主宰 中山 進

詳しくは以下のURLをご覧ください。
http://www.hilife.or.jp/wordpress/?p=447


3. 縮小する都市 ―ドイツの先進事例を訪ねる―

第1回 縮小する都市 状況の整理

縮小する都市 ―ドイツの先進事例を訪ねる―

高齢化、少子化などにより人口や都市活動が小さくなっていく地方都市。
縮小都市は日本だけの特殊な問題ではない。
東西統一から20年を経たドイツ。旧東ドイツ地域の人口が大きく減少し、都市の経営は危機的な状況を迎えている。
「縮小する都市」。いち早くこのテーマに取り組んでいるドイツの事例を訪ねる。
服部圭郎 ドルトムント工科大学客員教授によるドイツからのレポート。

映像報告・講義
服部圭郎 ドルトムント工科大学客員教授

編集・配信
財団法人ハイライフ研究所

詳しくは以下のURLをご覧ください。
http://www.hilife.or.jp/wordpress/?p=2721


4.「東京圏都市研究プロジェクト」調査レポート(2005年)

目次
プロローグ/東京の都市変貌を読み解く
―東京で今、何が起こっているのか?
都市再生の鍵を握る東京ライフスタイル
―東京で、何が起こるのか!?
都心回帰で、街がメディアを動かす時代がやってきた
Ⅰ・都市研究/変貌する東京(東京圏の人口構成と都市化)
―戦後60年、21世紀を迎えた東京―拡大・縮小から再集中・高密度化へ―
第一部 東京圏/変化する東京の姿・かたち
Ⅰ・首都圏における都市動向
Ⅱ・東京(圏)の都市動向
Ⅲ・東京の現状と求められる都市機能の変化
第二部 東京の都市化と人口の変遷
Ⅰ・東京圏の都市化と人口の推移
Ⅱ・東京都の人口増加地域の変遷とその特徴
Ⅲ・東京隣接県/神奈川県/埼玉県/千葉県の人口増加地域の変遷とその特徴
第三部 東京の都市開発と都市計画
Ⅰ・東京の都市開発プロジェクトの変遷
Ⅱ・東京の都市計画の変遷
Ⅲ・東京改造の系譜
Ⅱ・都市研究/東京の新しいライフスタイルを探る
―ゆりかごから墓場まで生活の場の検証―
第一部 東京の都市化の変遷と生活
Ⅰ・東京の交通インフラの変遷と生活スタイル
Ⅱ・戦後60年の東京の「商業立地」の変遷
第二部 変化する今後の東京のライフスタイル
東京の将来人口と経済
エピローグ/まとめと今後の東京の都市空間
1.東京の都市化について
2.今後の東京の都市開発について
3.これからの東京―ライフスタイルが都市シーンを生み出す
4.「都市研究」の今後の展開
資料① 東京圏の大型民間都市開発プロジェクトの実際
資料② 住宅スタイルの変遷

研究体制:
立澤芳男 マーケット・プレイス・オフィス代表
株式会社読売広告社 都市生活研究局
財団法人 ハイライフ研究所

(敬称略・肩書は当時のもの)

詳しくは以下のURLをご覧ください。
http://www.hilife.or.jp/wordpress/?p=710#01


5. 新刊書のおしらせ

環境首都コンテスト
地域から日本を変える7つの提案

環境首都コンテスト

書籍名 『環境首都コンテスト 地域から日本を変える7つの提案』
出版社 学芸出版社 
価格 2,200円+消費税

本書は2001年から実施されている「環境首都コンテスト」の活動を通じて蓄積された、持続可能な地域社会づくりを実践している自治体の先進事例をもとに、「持続可能な社会をつくる7つの提案」をまとめたもの。

※環境首都コンテストについて詳しくは
http://www.kankyoshimin.org/jp/mission/ecocity/ecocap/index.html

持続可能な社会をつくる7つのポイント

1 人を活かす、創る
2 地域の将来像を描く
3 戦略的に事業を組み立てる
4 環境、経済、社会を合わせる
5 パートナーシップを深める
6 行政を統合化する
7 率先例をつくりだす

詳細については、是非書店でお求めいただき「地域から持続可能な社会づくり」のテキストとしてお使いいただければ幸いです。どうぞよろしくお願いします。


編集後記

貸金業法改正と総量規制の弊害

通称「サラ金」、「マチ金」と呼ばれる貸金業者。
その業界に大きな影響を及ぼしているのが2008年12月に実施された改正貸金業法というもの。
これは「貸金業者の業務の適正化を図る」という目的で実施された。
なかでもいわゆるグレーゾーン金利の撤廃は多くの独立系貸金業者の経営に影響を及ぼしている。

このことはほとんどの読者には無関係と思われるかもしれないが、実はそうでもない。
この関連で2010年6月から施行される、「総量規制」の実施というのをご存じだろうか。
これは「返済能力を超える借入れ」を抑制するという目的で導入されるもので、多重債務につながる貸し付けを制限しようとするものだ。
だが、これにより資金繰りに悪影響を受ける個人事業者や中小企業の経営者が少なくないと言われている。

公的金融機関や銀行からの融資が受けられるのならいいが、そうではない場合や、貸し渋りに遭うと、やむを得ず、貸金業者から個人で運転資金の借り入れを行なうことがある。

総量規制が実施されると50万円以上の融資で、契約時に給与明細や源泉徴収票などの提出が必要になる。また消費者金融やクレジット会社は、他業者からの借入件数やその金額、借りる人の家族の構成や勤務先、借りたお金の使いみちなどを尋ねることがルール化されるという。

また全国で200万人を超えると言われる多重債務者の生活にも混乱が予想されるほか、最悪の場合には、法外な金利で貸し付ける「ヤミ金」が跋扈する事態に陥るのではないかとも懸念されている。悪徳な金融業者から市民を守るための法律が、逆に作用してしまうのではないかという問題だ。

ここにきて国民新党の亀井大臣の提案から、モラトリアム(金融機関への返済の延期等)法案がまとめられつつある。このことは来年施行される総量規制とのかかわりからするとプラス要因かもしれない。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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