ハイライフ研究所メールマガジン 第25号

2009年6月26日配信  発行責任 財団法人ハイライフ研究所 事務局

古典(GREAT BOOKS)が今おもしろい!

このところ静かなブームとして進行している古典・名著への関心。6月27日号の『東洋経済』誌でも、「古典が今おもしろい!」という特集を組んでいる。

今回の古典ブームには、比較的読みやすい新訳が次々に出版されているという背景もあるようだ。30年ぶりの新訳『カラマーゾフの兄弟』(光文社古典新訳文庫)が、全5冊で発行部数100万部を超えたことが話題になった。

『東洋経済』の特集記事でも、アダム・スミス『国富論』(日本経済新聞出版社)の新訳がどれだけ読みやすくなったか、従来の翻訳と比較していて面白い。

佐藤 優氏(文筆家、起訴休職外務事務官)は、「一滴の会」という任意団体で毎月1回勉強会を開いているそうで、昨年は『太平記』をとりあげたという。彼曰く、古典をどの場所で読むかということも非常に重要である、と。なるほど、古典を読む「場」によってテキストの印象が変わることがある。またどんな仲間と読むかによっても得られるものが違うだろう。

名著・古典に取り組むセミナーと言えば、日本アスペン研究所のエグゼクティブ・セミナーが有名。古典の読解と自由な対話を通じて人間的価値の本質を考えるリーダー向けのセミナーだが、昨年からはジュニア向けのセミナーも開始されたそうだ。

「新訳ブーム」でより近づきやすくなった古典・名著だが、ひとりで読むだけでなく、対話を通じて互いに考えを深め、それぞれが自分の言葉に変換していく「場」があればもっといい。(HH)


<今号の内容>

1. 伝説のマーケッター立澤芳男の「High-Life 生活・社会総括レポート21」
2. 日本の環境首都コンテスト 映像で見る先進事例集
3. 新トーク番組「写真家・富山治夫 世界の旅」
4. 少子高齢化社会における地方社会の行方研究[講演・取材録](2007年度研究)

5. 新刊書のおしらせ 『環境首都コンテスト 地域から日本を変える7つの提案』
6. NPO法人 環境市民からの意見表明




今日の日本の人口構造は、「多産少死から少産多死」へ、「自然人口増から自然人口減」へと向かっている。この劇的な変化は、団塊世代が青年から中高年に加齢するプロセス、すなわち、平成元年から平成20年の20年間にかけ生まれた。戦後昭和の時代より経済活動が明らかに停滞した平成20年間に日本の人口構造はどう変化したのか、平成時代の20年間の人口社会データの推移を見ながら、劇的に変化した日本の社会を見てみる。本レポート第一回では、平成時代20年間の社会状況全般の変化を確認したが、今回の第二回は、日本の人口構造の変化から社会の変化を読み取る。

「立澤芳男のHigh-Life 生活・社会総括レポート21」は以下のURLをご覧ください。

2. 日本の環境首都コンテスト 映像で見る先進事例集

環境首都コンテスト全国ネットワークでは、「持続可能な地域社会をつくる日本の環境首都コンテストを2001年度より、毎年実施し、参加市区町村の環境施策について、多角的に調査、研究を行っています。

先進的な事例情報をより多くの自治体にわかりやすく提供するために、昨年度から実施した「映像版 日本の環境首都コンテスト 先進事例集」は、自治体に好評を博し、研修や視察者への説明等に用いられています。





情報公開と住民参画のまち ~ニセコ町~

世界の環境都市を目指して ~北九州市~

持続可能な都市(まち)をつくる ~多治見市 ~

市民参画で「新しい公共」を創造 ~大和市~

エコポリス板橋・地域ぐるみの地球温暖化防止をめざして ~板橋区~

もやい直し そして環境首都への挑戦 ~水俣市~

パートナーシップで環境基本計画を推進 ~津山市~

環境のまちづくりをパートナーシップで ~熊本市~

人と風土を活かして 持続可能な地域社会づくりのトップランナーをめざす ~飯田市~

小さな町の大きな取組み~住民とともにすすめ・ひろげる地球温暖化防止~ ~高畠町~

詳しくは以下のURLをご覧ください。
http://www.hilife.or.jp/kankyo_map/


森本哲郎さんがドイツの街角で見かけたポスターがきっかけとなり、1969年、二人で灼熱のサハラ砂漠をさまようことに。

危機的な状況を通じて直面した「自分とはなにか」という問い。自然に対する畏敬。深まる友情。砂漠でみつけた「旅と人生のかかわり」をテーマに、お話をうかがいます。

お話:
富山治夫

聞き手:
熊倉次郎 (リベラルアーツ総合研究所)
萩原宏人 (財団法人ハイライフ研究所)

制作・配信:財団法人ハイライフ研究所

詳しくは以下のURLをご覧ください。

4. 少子高齢化社会における地方社会の行方研究[講演・取材録](2007年度研究)

少子高齢化社会における地方社会の行方研究[講演・取材録] 目次

アベンヌ温泉水とその臨床効果
ヨーロッパの温泉成功ストーリー.
「地場産業×クリエイター」による商品開発― 静岡ランデヴープロジェクトの実践を通じて
ホスピタリティマネジメントに関する考察~事業者・顧客アンケート調査より~
キープ協会における環境・健康教育とスタッフ養成
群馬県における地域医療・福祉の現状と課題.
ウェルネスとストレスマネジメント
東京圏外周部における人口流動と地域づくりの課題―群馬からの観測
少子高齢化の地方社会における地域スポーツのあり方・可能性・プロモーションの方策
国民保養温泉地の健康サービスの動向
富士山麓ファルマバレープロジェクトとは

研究体制:
財団法人 ハイライフ研究所
「少子高齢化社会における地方の行方研究」研究会

研究協力:
桐谷 敏行 ピエール・ファーブル・ジャポン社 社長
山本 紀久雄 有限会社山本
倉林 啓士郎 株式会社イミオ代表取締役
板倉 勝敏 株式会社イミオ営業部マネージャー
奥 直子 日本政策投資銀行 地方開発部
伊藤 賢治 日本政策投資銀行 地方開発部
増田 直広 財団法人・キープ協会 事業課長
岡野 昭 医療法人社団千栄会昭和病院/社会福祉法人夢 特別養護老人ホームふるさと
ケアハウス夢の庵 理事長
北 博之 BTU ストレスマネジメント研究所(BSMI)副所長・主任研究員
熊倉 浩靖 NPOぐんま代表理事
佐伯 年詩雄 平成国際大学教授/筑波大学名誉教授
井上 昌知 社団法人 におい・かおり環境協会 顧問
西野 勝明 静岡県立大学経営情報学部教授

(敬称略・肩書は当時のもの)

詳しくは以下のURLをご覧ください。
http://www.hilife.or.jp/pdf/pdf_index2.php?pdf_id=200705


5. 新刊書のおしらせ

環境首都コンテスト
地域から日本を変える7つの提案

環境首都コンテスト

書籍名 『環境首都コンテスト 地域から日本を変える7つの提案』
出版社 学芸出版社 
価格 2,200円+消費税

本書は2001年から実施されている「環境首都コンテスト」の活動を通じて蓄積された、持続可能な地域社会づくりを実践している自治体の先進事例をもとに、「持続可能な社会をつくる7つの提案」をまとめたもの。

※環境首都コンテストについて詳しくは
http://www.kankyoshimin.org/jp/mission/ecocity/ecocap/index.html

持続可能な社会をつくる7つのポイント

1 人を活かす、創る
2 地域の将来像を描く
3 戦略的に事業を組み立てる
4 環境、経済、社会を合わせる
5 パートナーシップを深める
6 行政を統合化する
7 率先例をつくりだす

詳細については、是非書店でお求めいただき「地域から持続可能な社会づくり」のテキストとしてお使いいただければ幸いです。どうぞよろしくお願いします。


6. NPO法人 環境市民からの意見表明

日本政府の温室効果ガス削減中期目標への意見表明

NPO法人 環境市民 理事会
(代表理事 杦本育生)

「日はまた沈む」
~中期目標05年比15%減では日本も、世界もダメになる~

15%減は見かけ倒し
麻生首相は10日、2020年までの日本の温室効果ガスの排出量、05年比で15%減とする中期目標を発表した。記者会見で「野心的な目標」「低炭素革命で世界をリードする」「欧米を上回る目標」と首相は胸を張ったが、残念ながらそのような歴史的意味あるものではなく、むしろ非常に後退した目標としか言いようがない。
まず問題は基準年を日本に都合のいいように05年としたことだ。京都議定書の主な基準年である1990年から日本は大きく温室効果ガス排出量が増加した。その増加した05年を基準にすることによって、削減率を大きく見せようという姑息な手段である。逆に1990年から排出量を削減していたEUは05年を基準にすると不利になる。EUが現在提案している中期目標は、05年度比にすると13%減になってしまう。しかし、1990年を基準にするとEUの中期目標は20%減、日本の中期目標は8%減になる。
麻生首相は、なぜ1990年を基準にしないで05年にしたのかというマス・メディアの質問に対して、アメリカ、カナダ、オーストラリアも1990年を基準にしていない、新しい基準年を設けたほうがわかりやすく公平だというような回答をしたが、これは非常に問題ある発言である。
日本の古都の名前がついた京都議定書は、まさに低炭素社会、持続可能な社会へのスタートになる歴史的な存在である。05年度を基準年にすることは、その京都議定書で90年比6%減という約束をしながら、抜本的な温暖化防止政策をとらず年々排出量を増加させてしまった日本の責任を放棄するものであり、国際的な信用失墜につながるものである。
また、EUが出している90年比20%減は固定した数字ではない。他の国々が同調すればEUは30%減を出す用意があるとも述べている。05年比で15%減とする中期目標は、国際的になんら評価されるものではない。地球温暖防止の国際的議論に参加しているNGOの連合は早速、日本政府に「特別化石賞」(国際交渉に後ろ向きな国)を贈った。

長期目標にもつながらない
さらに重要なことは、麻生首相も今回の発表の中で強調していた「2050年で、全世界で半減しなければならない。」という内容だ。この数字の科学的な基準は05年排出量ではなく、1990年の排出量である。麻生首相は、中期目標を05年比で15%減にすることは2050年に70%減を達成することにつなげられる目標だとも言っている。しかし、これは90年比では63%減に過ぎない。
2050年で、全世界で半減するということを、人口一人当たりの排出量を公平にすると2050年までに日本が達成すべき削減率は90年比80%減になる。このような中間目標では到底、それは達成されない。

経済界寄りの作為的議論
今回の中期目標の議論は、政府の中期目標検討委員会が示した6つ目標値のどれを選ぶかという方法で行われたが、そもそもその前提が意図的であった。この目標づくりの経済的な指標として用いられたのは、経産省の総合エネルギー調査会の需要部会が算出したデータ。その多くのメンバーがエネルギー関連業界である。鉄鋼やセメントの生産量、省エネの削減量がなどを業界が求める数字で計算されたものであり、削減率に応じたGDPの伸び率、家計負担額もこれをもとに計算している。
重厚長大の保守的産業が強い影響力をもつこのような部会は、産業構造の大きな変革を望まないため、これらの数字も現在の産業構造があまり変わらないことを前提として出されたものである。そのため15%削減案でも家庭部門、運輸(マイカーを含む)部門、業務(オフィス・商店等)部門は大きな削減量となるが、産業(工業)部門は全体の5%以下しか求められないという不公平なものになっている。
しかし、今後産業のあり方、経済システムは大きく変わることが求められている。ひとつはサブプライムローンに端を発する世界同時不況の反省から、行き過ぎた経済自由主義かにの脱却、そして地球温暖化を始めとする地球規模の環境問題への対応、さらに発展途上国の経済発展、そして南北・貧富の格差拡大とそれによる世界的な不安定・戦争の危機を回避するための対応、などその要因はいくらでもある。地球温暖化への対応だけをとってみても第二の産業革命といわれているぐらいである。
現在の産業構造を前提とした議論そのものが砂上の楼閣に過ぎない。むしろこのような課題に積極的に対応した戦略的な政策、活動が必要になっており、産業構造をイノベーションし、新たな産業・雇用を積極的に創りだしていかないと、日本経済、日本社会は落ち込む一方であろう。まして経団連やそれと一体となった労働組合が支持した、90年比4%増案など斉藤環境大臣が言ったとおり「世界の笑いもの」にしかならない。
経団連に加入している企業個々に問いたい。日本の中期目標がこのような低レベルで(それに応じた対策しかとられない国で)、あなたの企業は、はたして世界の中で生き残っていけるのだろうか。

家計への影響を強調
今回の6つの目標値を巡る議論の中で、もうひとつ作為的なものがあった。それは、削減率が高くなると家計の負担(可処分所得を下げ光熱水費が上がる)が増すというものだ。これも先の前提をもとにした数字である。まず、あえてこの数字に従ったとしても「可処分所得を下げる」ということになるのだろうか。今回麻生首相が発表した05年比15%減(90年比8%減)に最も近い6つの案の第3案(90年比7%減を見るとGDPの伸びを計20.8~20.9%伸びるとなっている。すると当然可処分所得も相当程度伸びる。政府の言うように年4万3千円減可処分所得が減ったとしても純減になるのであろうか。もちろん物価がどの程度上がっているか分からないとはっきりしない。しかし政府は意図的に、現在の可処分所得より4万3千円減になるというように国民が誤ってとるように仕向けているように感じる。
さらに、省エネ機器、自然エネルギー利用、エコ住宅、エコカーは電気料金、ガソリン代の大きな軽減につながる。はたしてこれがきちんと計算された上での家庭の負担増と言っているのであろうか。疑問である。

日本の省エネはトップではない
国民に誤った情報を与えるものがまだある。麻生首相は発表で日本の省エネは世界一と繰り返して述べた。これは経団連等の経済団体がいつも主張していることであり、だから産業界にこれ以上の省エネを求めることは乾いた雑巾を絞るものだという、主張につながる。たしかに1980年代、石油危機に対応して日本の省エネ技術は大きく進歩した。またそれが日本の経済に大きなメリットをもたらした。産業界はGDP比の二酸化炭素排出量と、産業(工業)のエネルギー効率も世界最高であることをその最大の根拠としている。しかし産業(工業)のエネルギー効率はEU内の先進国とすでに同レベルであり、GDP比の二酸化炭素排出量も、購買力平価(通貨の実質的な価値を表す)を使って比較するとフランス、イギリスの方が日本より優れておりEU全体とも変わらない(WWWFジャパンの研究より)。もはや日本は世界のトップではない。

地球温暖化による影響は膨大
2050年で、1990年比全世界で半減しなければならない、という数字は、今世紀末の気温上昇を地球平均で2度以内に抑えないと、地球温暖化で大きな被害が起こるという、IPCCのレポートをもとにしている。中期目標はこの科学的要請に応えるものでなくてはならない。
被害が出始めるのは2050年でもなければ今世紀末でもない。すでに世界は、大洪水、干ばつ、台風の大型化、雨季乾季の変化などの異常気象や海水温の異常により大きな被害を受けている。手をこまねけばこまねくほど、その被害は拡大する。環境省の試算によるとこのままでは今世紀末に毎年17兆円の被害を日本は受けるという。しかし、これまでの地球温暖化がその科学的予測を上回るスピードで進んでいることを考えるとおそらくその被害はもっと大きなものになるであろう。

技術、自主行動頼りではなく社会的な取り組みを
政府の言う「低炭素革命」を起こすには、日本の方法は技術と個々の自発的努力に頼り過ぎている。技術は重要である。個々人、個々の企業の努力も必要である。しかしそれ以上に必要なのは社会そのものの変革である。個々人、個々の企業が行動しやすくなるような、また行動することを促すような社会的な仕組み、経済的な仕組みを作り上げていくことである。日本政府はこれを怠ってきた。そのため世界銀行によって地球温暖化対策の進捗度の先進国中ワースト1にあげられた。
日本がまだ手をつけられていない社会的な政策はいくつもある、大きなものでも環境税(炭素税) の導入、キャップ付きの排出量取引制度、限定的部分的でない自然エネルギーの買い取り保証制度なのだ。EUの主要国はすでにこれらの政策に取り組み実績をあげている。さらに自動車交通に依存しない、新たな交通システムの構築やグリーン購入の全面的な展開など温室効果ガス排出削減に大きな効果がある社会的な変革メニューは数多くある。
これらと技術的な革新、個々の努力が組み合わされば中期目標として25%~40減(90年比)も決して不可能ではない。

90年比25%以上削減目標は私たちの生存のために必要
地球温暖化は、生命の問題である。私たち、私たちの子や孫、世界の人々、そして世界の多様な生き物たちの生存の問題なのである。日本的な政治的妥協の目標では将来、私たちが自らの首を絞めることになる。

NPO法人 環境市民
http://www.kankyoshimin.org/
Eメール: life@kankyoshimin.org


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