ハイライフ研究所メールマガジン 第6号

2008年9月12日配信  発行責任 財団法人ハイライフ研究所 事務局

日本は資源国だった!「海」と「再生可能資源」を大切にしよう

先日、日経新聞で「海底資源調査 金や銅…70兆円分」という記事をみた。

どうやら日本近海に眠る金属資源のことらしい。学術的には「海底熱水鉱床」と呼ばれ、
水深800m~3000mの海底から噴出した熱水中にとけている金属成分が海水に冷やされて
沈殿した鉱床のことである。

火山活動の多い所に鉱床は多く、日本近海で数多く見つかっているらしい。
鉱床の金属は、金・銅などが豊富で、ニッケル・コバルトといった希少金属も存在するとのこと。
資源のない日本においては喜ぶべき報告である。現状では、伊豆・小笠原諸島付近、沖縄近海などで鉱床が見つかっている。

メタンハイドレートということばもしばしば耳にするのではないだろうか。
(編者は、今から5年ほど前、サラリーマン金太郎マネーウオーズ編でその存在を知ったのだが。)

「経済産業省は資源価格の高騰を受け、天然ガスの代替エネルギーとして期待される
『メタンハイドレート』の日本近海の海底での産出試験に平成21年度から着手する。
同省によると日本近海には国内の天然ガス消費量の100年分に相当する大量のメタンハイドレートが
存在するとしており、成功すれば日本のエネルギー政策に大きな 影響を与えそうだ。
19日に開催する同省『メタンハイドレート開発実施検討会』で試験計画の内容を説明し、
了承を得たい考えだ。計画では30年度までの商業生産を目指す。
メタンハイドレートは、
天然ガスの主成分であるメタンを含んだ水の化合物。
1立方メートルの メタンハイドレートを分解すると、
約160~170立方メートルのメタンガスを
発生させることが可能という。
経産省は、日本近海に1.1兆立方メートルに上るメタンハイドレートが存在すると試算しており、
天然ガスの9割以上を輸入に頼る日本にとっては『夢のエネルギー』だ。
ただ、低温か高圧の環境にのみ存在するメタンハイドレートは採掘が困難な水深500メートル以下の
海底に分布しているうえ、固体のため井戸を掘っても自噴してこないなど、技術的な課題が多い。」
(MSN産経ニュース 2008.8.19)

代替エネルギーのバイオエタノールも、海藻から400万トンの生産が可能との構想が発表されている。

「水産関係の調査研究などをしている財団法人東京水産振興会は、地球温暖化対策の 一つとして注目されているバイオエタノールを海藻から大量に生産する構想を発表している。 すでにバイオエタノールの原料になっている穀物と違い、食料との競合を避けられるのが特徴で、 世界6位の面積を持つ日本の排他的経済水域を活用すれば、年に1億5000万トンの海藻を 養殖し400万トンのバイオエタノール生産が可能と説明している。構想は、酒匂(さこう)敏次・東海大名誉教授を座長とする同振興会の調査研究委員会が まとめ、海面に浮かべた網でアカモク(ホンダワラ科)などの海藻を養殖し、洋上に造る 工場などでバイオエタノールを生産する。原料価格が穀物に比べて安く、新たに必要な技術 開発が少ないため、2013年ごろに実証事業を始められるとしている。漁業者や民間企業が 事業主体になることを想定している。」 (毎日新聞 2007年5月9日)

中国と折り合いをつけないといけない尖閣諸島周辺海域の油田・天然ガス田に関しても、イラク油田(原油推定埋蔵量1,125億バレル)に匹敵すると言われている。
(尖閣諸島周辺海域の原油推定埋蔵量は、 1969年・1970年の日本側調査で1,095億バレル、1980年代初めの中国側の調査では700億~1,600億バレルと推定されている。) 
金額に直すと約1,080兆円以上(2008年換算・1USD=108円 1バレル100ドルとして)にもなる。

「日本の都市鉱山」埋蔵量、世界有数の資源国に匹敵

他方、日本には世界有数の資源国に匹敵する金属資源が埋もれているという。 「都市鉱山」(アーバン・マイニング)と呼ばれる金属資源だ。

日本国内に蓄積されているリサイクル対象の金属量を算定すると、日本の都市鉱山は世界有数の資源国に匹敵する規模になっているらしい。

世界的な資源需要の増大や、イノベーションを支える高機能物質への資源需要は非常に高い。特に、レアメタルやレアアースなど、多様な機能を発揮する金属元素は完全な売り手市場になっている。すべてリサイクル資源だ。

「(物質・材料研究機構元素戦略クラスターの原田幸明ラボ長は)今回、20種類の金属について、備蓄量としての都市鉱山の規模を推定した。金は、約6,800トンと世界の現有埋蔵量4万2000トンの約16%、銀は6万トンと22%におよび、他にもインジウム61%、アンチモン19%、錫11%、タンタル10%と世界の埋蔵量の1割を超える金属が多数あることがわかった。また、他の金属でも国別埋蔵量保有量と比較すると白金などベスト5に入る金属も多数ある。日本の都市鉱山で、多くの金属について、世界の2~3年相当の消費量に匹敵する備蓄が日本の都市鉱山にあるという。また、リチウムについては約7年半、プラチナについては約6年の量が備蓄されているという。」(科学、1月18日号2面)

資源小国とあきらめていた日本が、この可能性をどう技術開発し、実験・実用化・事業化を乗り越えるか、大きな試練である。しかし、単純すぎるかもしれないが、希望もまた大きい。


<今号の内容>

1. 東京生活ジャーナル
2. ホスピタリティ研究 研究報告[動画版]

3. スローフードの国 イタリアの食育
4. 「食と家族に関する研究調査~食卓ニケーションの復活~」




東京生活ジャーナル

1. 東京生活ジャーナル

都市空間・都市生活の価値について、生活者の視点からユニークな意見を述べます。

世界から見た東京

広場を形作るファサード
建物の正面のことをフランス語でファサードと言う。最近は英語でも日本語でも使われるようになったが、元をたどれば、ラテン語の「顔」を意味するfacies、つまりフェイスに通じる。ヨーロッパの美しい街路景観を生み出しているのは、一つ一つの建物の表向きの顔であるファサードである…

都市に住まうということ

居住地を選ぶ視点 1
「住む」ということを考えるとき、私は、私たちがあまりにも「住宅の確保」と「住まう」ことを同一視してきたことが悲しくなる。それは、戦後、いやもしかしたら明治以来の人口移動において、都市に住宅を確保することが困難だった歴史がもたらしたものなのだけれど、いまやその違いはかなりの言葉を尽くさなければ理解されない…

東京シティウォッチング

北千住はどこに向かうのか
先日、久しぶりに北千住を訪れた。駅前は見違えるほど整備され、良く言えば画期的に利便性が向上し、悪く言えば地方の中核都市の「駅前に良くある風景」となっていた。しかし、平日の午前中に訪れたにも関わらず、街には活気があり…

都市と花火大会
今年も早や9月となった。まだまだ残暑が厳しいとは言え、季節は確実に秋へと向かっていく。ところで、過ぎ去りし夏の日の思い出と言えば、花火大会を挙げる人も多いのではないだろうか。今回はこの「花火大会」というものを通して都市の地理や景観について考察してみたい…

東京生活ジャーナルはポッドキャストでも研究報告お届けしています。
詳しくは以下のURLをご覧ください。
http://www.hilife.or.jp/journal2/


2. /?p=1256″>/?p=1256


/?cat=30″>/?cat=30


4. ハイライフ研究所の研究報告書より 
「食と家族に関する研究調査報告書 ─食卓ニケーションの復活─」

近年の食事形態の変遷/現在の食卓を囲む食事形態の現状/居住空間から見た食卓/地域社会と食卓ニケーション/食卓における新たなコミュニケーションの変化/食卓ニケーション活性化に向けて/食卓ニケーションに向けたマーケティング

研究体制:
企画推進 
長谷川文雄 東北芸術工科大学大学院長

研究協力 
檜槇  貢 作新学院大学教授
山畑 信博 東北芸術工科大学助教授
小山田裕彦 シンク・コミュニケーションズ

桑原 才介 桑原経営研究所代表取締役
伊藤 洋子 東海大学教授
成田 重行 東北福祉大学特任教授
小泉 和子 京都女子大学教授
財団法人ハイライフ研究所

(※上記の職名は研究当時のもの)

PDF形式の研究報告書は以下のURLよりご覧いただけます。
http://www.hilife.or.jp/pdf/cnt.php?url=200503


編集後記

先日朝8時台に都心の地下鉄で女性専用車両に乗ってしまった。

その時の女性車両は朝のラッシュでほぼ満員。
編者(男性)はまわりの女性に「すいません」を連呼しながら2両目の一般車両へとすべりこんだ。
初めて乗った女性専用車両。編者としては、誤って女性トイレに入ってしまった感じで、とにかく立ち去ることを考えつつ行動を起こしたわけだが、「お詫びの態度」を示しつつ、怖いもの見たさで結構冷静に周りを見て感じたことがあった。彼女たちは、基本的には編者には無関心で、それぞれ「自分の世界」に入り、我関せずという印象。これは女性だけの空間という心地よさ故か? 

余談だが、編者が女性車両に紛れこんだ時、実はちゃっかり編者の後方に同じような3人のおじさんが行列でついてきていたことを発見した。わびしさが込み上げてきた瞬間であった。
この体験から、今回は少し女性専用車両について、簡単にその成り立ちと、女性車両について聞いた感想などを少しご紹介する。

まずはその歴史について、フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』からまとめてみよう。

女性専用車両の始まりは、1912年(明治45年)東京の中央線で朝夕の通勤・通学ラッシュ時間帯に登場した「婦人専用電車」が最初とされているそうだ。この「婦人専用電車」は、道徳上男女が一緒の車両に乗るのは好ましくないという国民性を反映して導入されたとのこと。

関西地方でもほぼ同時期、大戦景気の余韻を買って神戸市電が買い物客を誘致する為「御婦人専用電車」を運行した事があるそうだ。

1947年(昭和22年)になって中央線で「婦人子供専用車」が登場し、同年京浜東北線に採用された。当時の存在理由は「婦人子供専用車」は、乗車率が300%という、殺人的通勤ラッシュから子供と労働女性を守る目的、ラブレターの受け渡し禁止の目的も合わせて導入された、京浜東北線の「婦人子供専用車」は短期間で廃止され、中央線では朝の通勤・通学ラッシュ時間帯での運行が継続されたが、1973年(昭和48年)9月15日導入の「シルバーシート」にとって代わられたそうである。 

そして現代、車内における迷惑行為や痴漢行為が社会問題として大きく取り上げられ、明瞭な犯罪として意識される状況を背景に、女性が安心して乗車できることを目的として女性専用を謳った車両が導入され始めることになる。

2000年平成12年、京王電鉄京王線で平日深夜帯に新宿駅を発車する下りの臨時列車(急行・通勤快速)の最後部の車両に「女性専用車両」の名で試験的に導入したことは当時から東京居住していた編者にも記憶に新しい。

その後導入に対し肯定的な意見が多かったため、次々に「女性専用車両」の導入は進む。 導入に関しては様々な地区での調査が年度か行われているようだが、基本は女性賛成多数、男性反対多数というのがほとんどの調査の結果である。「女性専用車両」の導入に関しても「利便性」や「混雑度」についてもメンタル・フィジカル面のハンディーキャッパーや運行上での問題も様々な苦闘があるようだ。 
          

一部の女性に「女性専用車両」の感想を聞いてみた。とにかく圧倒的に女性たちは専用車両に賛同しているようだ。

「いやらしいおじさんよけのために絶対必要」「おじさん臭がしないのでよい」「安心できる」「自分の世界に入れる」「全体的にすいているので心地よい」「治外法権みたいで気持ちいい」「安全地帯」「フルタイムでお願いします」「さわやか」という具合になんとも言えないくらい賛美する人が多かった。調査でも80%近い支持率をほこる。

それに対してこんな意見もあった。

A子さん「たしかに痴漢の心配はないけど 車内は香水とシャンプーとファンデーションの臭いで 凄いことになっている 気分が悪くなって途中で降りたくなることもある」

B子さん「女性だけの空間は、女子学校や女子更衣室と同じで男性の目を気にしなくて済むので本性が明確に出る。たとえば女性同士が擦れちがい様にぶつかったりするとすぐに手が出たり場合によっては、殴り合いになることもあった」

C子さん「電車が揺れると ハイヒールを履いた女性は 踏ん張りが利かないから 皆がドドドーッと ゆれる方向に引っ張られる。男が何人かいると、つっかい棒代わりになり便利で、揺れてもそれほど体が倒れないし怪我の率が減る」

D子さん「いやらしいおやじの目がないのは良いが、イケ面の男との出会いがないのでつまらない」

聞けば聞くほど興味深い。男性からは逆差別云々で女性専用車両に反対する意見出ていたけれど、実際の話は興味深い。

こんな苦情も聞いた。

E子さんによると、「帰りに女性専用車両に乗ったところ、女性専用車なのにざっと見て7人もオヤジが乗っていた。渋谷から堂々と乗ってきた禿オヤジもいれば、中目黒で先頭きって乗った柄シャツもいる。途中で乗ってきたおばさんに『ここ女性車両だから乗っちゃいけないんだよ』と言われてもそ知らぬ顔して菊名で降りていきました」

最後に「女性専用車両」限定の広告展開の紹介。
小田急電鉄では女性専用車両ドア限定のステッカー広告を募集。 女性だけにターゲットを絞って効果的に展開するという。また、大阪市営地下鉄・御堂筋線では、女性専用車両でラッピング広告や座席シート広告を展開中。さらにJR東日本首都圏エリアの 女性専用車両で、中吊り広告を1社独占で販売しているそうだ。

さて女性専用車両の話題、簡単に総括はできないが、問題の根源には、現代人の「モラル(道徳心)」の低下があるのではないか。とすれば、行くつくところは、世代・家庭・教育の問題となるのであろうか。

当研究所では、「ホスピタリティ社会」をテーマに、「思いやる心」「心地よさ・快さ」について2年間にわたり研究を行ない、その研究成果をホームページで公表している。興味のある方はご覧いただきたい。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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