【データベース】 都市の鍼治療 No.116~No.120

「都市の鍼治療」データベース

 クリチバのジャイメ・レルネル元市長は、都市が抱える問題を手っ取り早く解決するべき方法論として「都市の鍼治療」を提唱しています。

 多くの課題に直面する都市は、さながら病人のようです。そして、都市の鍼治療とは、その都市の病を根本的に治すことは難しいけれども、効果的に「鍼療法のように治す」ことは可能であるという考え方にもとづいた方法論です。

 本データベースは、このレルネル元市長の「都市の鍼治療」という考えにのっとり、内外の「都市の鍼治療」事例をシリーズで紹介していきます。

鍼アイコン116 ポルト・マラビーリャ
116 ポルト・マラビーリャ

リオの市長は「都市のためにオリンピックがあるのだ。オリンピックのために都市がある訳ではない」と頻繁に市民に伝えていたそうである。オリンピック自体がある意味で、極太の都市の鍼治療であるともいえよう。リオデジャネイロは、見事、このオリンピックを用いてオリンピック会場以外であったポルト・マラビーリャをも「治療」し、再生させてしまった。

鍼アイコン117 街中がせせらぎ事業
117 街中がせせらぎ事業

湧き水が出るスポットは都市の中心に多くある。中心市街地が碁盤の目ではないというのは、自動車にとっては不便だが、歩行者にとっては歩きやすい。この歩きやすい環境を活かして、湧き水を再生させ、管理し、それらをめぐる散策路を整備すれば街の活性化に繋がるのではないかという考えのもと、三島市では1996年から「街中がせせらぎ事業」を展開することにした。

鍼アイコン118 黒壁スクエア
118 黒壁スクエア

黒壁スクエアのユニークなところは、地元産業ではないガラスを街づくりのテーマにしたことである。通常、街づくりを考えるうえでは、地元の歴史などそのアイデンティティを活かすことが有効であり、王道であると捉えられている。そのような「法則」を無視した黒壁スクエアのアプローチであったが結果的には大成功であったということが興味深い。ただ、まったくアイデンティティと関係性がなかった訳ではない。ガラスという集客性のあるテーマと、歴史的建築物との見事な組み合わせ。これが、非常に奏功した。

鍼アイコン119 テネシー水族館
119 テネシー水族館

淡水水族館として世界級のテネシー水族館は、チャタヌーガ市の再生を象徴するランドマーク。上の階から下へと降りていくと、あたかもテネシー川の上流から下流へ向かう流れに沿ったように、その場所ごとの生態系が展示され、毎年全米でトップ10の水族館としてランクインされている。計画当初、税金の無駄遣いであるとの批判を受けたことから、税金は周辺の空間を整備するためだけに使われ、水族館は民間の寄付金によって建設された。これが人々の水族館への強い愛着をもたらしたのである。

鍼アイコン120 ひまわり号
120 ひまわり号

鳥取県の江府町、日野町。1996年から2015年にかけての人口減少率はそれぞれ29%と31%。この20年間で3割ほどの人口を失っている。多くの過疎集落を抱え、買物難民が生まれるような条件をほぼ満たしている地域である。しかし、ここではそのような問題は深刻化していない。なぜなら、安達商事という一民間企業が「ひまわり号」という移動販売を提供しているからだ。

 

取材・構成
服部圭郎 明治学院大学経済学部教授

制作・配信
公益財団法人ハイライフ研究所

■都市の鍼治療 データベース
http://www.hilife.or.jp/cities

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