テリトーリオ

vol.3

ケニアPJ調査報告
②黒綿土ブロックWS

前回に引き続き、ケニアプロジェクト調査報告と考察を行っていきます。

今回は黒綿土(こくめんど)

7/1 - 8/4にかけて行った調査はジョモケニヤッタ農工大学にて、現地の教授や坂田さんに教えていただきながら、黒綿土を使った建材づくりの実験を行いました。問題土壌となっている黒綿土を活用する、環境的にも社会的にも意義の大きいプロジェクトとなっています。

黒綿土ブロックについて

アフリカの土壌の中でも「暴れ土」として知られる黒綿土は、粘土質で水分や養分を保持しやすいため農地としては優れています。しかし、建物や道路の下にあると、雨季には膨張して基礎や路盤を破損させ、乾季には大きな亀裂を生むため、建築・土木分野では典型的な「問題土壌」とされています。その結果、多くの現場で黒綿土は除去・廃棄され、別の土や砕石が持ち込まれています。
しかし、地球が長い時間をかけてつくった貴重な土壌を廃棄するのはもったいないだけでなく、土の移動に伴うコストやCO₂排出も無視できません。もし黒綿土を建材や路盤材として活用できれば、土の持ち出し・持ち込みを減らし、セメント代替による脱セメント化や骨材不足の解消にも大きく寄与すると考えられます。

黒綿土ワークショップについて

今回のケニアプロジェクトの主要テーマの一つである「黒綿土ブロックワークショップ」では、従来は除去・廃棄されてきた黒綿土を建材として再生させることを目指し、既存の黒綿土ブロックのレシピを基に材料や配合を調整しながら試作を行いました。ワークショップは主に8月1日と4日の2日間に分けて実施し、それぞれ異なる材料や配合でブロックづくりに取り組みました。

1回目の黒綿土ブロックの試作では、黒綿土ブロック制作で主に使われる、黒綿土、マラム(赤土)、消石灰、食塩水、サイザル麻繊維に加え、ローマンコンクリートにならい火山灰を硬化に用いることとなりました。黒綿土、マラム、消石灰、食塩水、サイザル麻繊維に異なる比率の火山灰を混入し、その効果をみるものです。

まずはジョモケニヤッタ農工大学建築学科の会議室でミーティングを行い、「黒綿土」に関する基礎知識を教えていただきました。

黒綿土ブロックの試作①


材料を混ぜ合わせる

黒綿土ブロックのワークショップでは、材料に直に触れながら作りました。手で混ぜるときの重みや乾き具合の変化など、黒綿土が持っている性質を身体で感じ取れたことは、現地での学びをより実感のあるものにしてくれました。


食塩水を加えて混ぜ合わせる

黒綿土の粒子表面は負電荷を帯びており、そこに含まれるナトリウムやカルシウムなどの陽イオンが層間のバランスを支えています。ここに塩水(主成分はNa+とCl-)を加えると、液中のナトリウムイオンが黒綿土の層間に入り込み、粒子同士の電気的な反発が弱まり、土が締まりやすい状態になります。さらに、消石灰(Ca(OH)₂)と水分が反応して形成されるカルシウムイオンが、粒子同士を架橋するように働き、全体がより強固に固まっていきます。
実際に作業をすると、食塩水を加えた瞬間に 材料がわずかに重くまとまるような手触りの変化 を感じます。粒子同士が再配置を始め、固化に向けて動き出す初期反応のサインです。机上だけでは捉えにくい、素材が“生きて反応する”感触を手で確かめられることは、このワークショップならではの貴重な体験でした。


型に流し込む

まずは型枠へと材料を流し込む工程に移る。食塩水によって土の粒子がわずかに締まりはじめ、全体がまとまりやすくなるため、この段階からすでに手触りの変化を感じ取ることができました。型に流し込む際は、空気を含ませないよう丁寧に均一に広げることが重要で、手とスコップを使いながら、材料の密度が偏らないよう慎重に整えていきます。


圧縮ブロック機を使って押し固める

流し込んだ材料は、圧縮ブロック機と呼ばれる器具を用いて手動でプレスします。この機器はレバーを引き下ろすことで内部の型に大きな圧力をかけ、黒綿土の粒子同士を強制的に密着させる仕組みになっていて、実際に操作してみると、そのレバーは簡単には下りず、体重をかけながら何度も力を加える必要があります。押し固める動作のたびに、内部の材料が締まり、徐々にブロックとしての形を帯びていくのが分かりました。この圧縮作業は、黒綿土が固化反応を起こすための密度をつくり出す重要な工程であり、見た目以上に体力を要します。力を込めてプレスしながら、素材が「土」から「建材」へと変わっていく過程を実感することができました。


乾燥させる

圧縮ブロック機で成形した黒綿土ブロックは、その後の乾燥工程によって強度を高めます。しかし現段階では、乾燥させると黒綿土が収縮し、表面にひび割れが生じてしまいました。これは黒綿土が本来持つ膨潤・収縮特性によるものだと考えられ、安定した建材として利用するためには、さらなる改良が不可欠です。 今回のワークショップでは、この問題点を確認するところまでとなり、次回8/4のワークショップでは土とセメントの専門家を招き、新たな配合や固化方法を検討しながら、より実用的なブロックの開発を進めていきます。

ケニア2日目

2回目の黒綿土ブロックの試作では、前回と同様に、黒綿土、マラム(赤土)、消石灰、食塩水、サイザル麻繊維に加え、セメントを用いることとなりました。配合を変えた約30個の黒綿土ブロックと、圧縮試験用の試供体を作製した。固化材としては消石灰とセメントをベースに、ポゾラン反応による強度向上を狙い、火山灰、籾殻灰、籾殻炭をそれぞれ異なる配合率で加えて検証を行った。

まずは3日前の実験とは、何が異なるのか、どうすればより良い黒綿土ブロックがつくれるのか、ミーティングを行いました。

黒綿土ブロックの試作②

この日のワークショップでは、ソイル・セメントの専門家の方をお招きし、これまで混合してきた黒綿土に少量のセメントと水を加えて「一次改質」を行う工程が紹介されました。この一次改質は、黒綿土を安定した建材へと転換するための重要なステップであり、今回の作業の中でも特に核心となる部分です。

黒綿土はそのままでは膨潤や収縮を繰り返すため、圧縮しただけでは十分に固まらない場合があります。その課題に対し、一次改質では新たにセメントを加えることで土粒子を互いに結びつけ、団粒化させることを目指します。これにより、黒綿土自体の性質を「固まる土」へと変え、後の成形や圧縮工程がより効果的に働くようになります。

二次改質の工程を現地で確認する前に帰国することとなり、作業の全貌を最後まで見ることはできませんでした。しかし、その後に坂田さんからお話を伺ったところ、今回の一連の実験を通じて、黒綿土ブロックの実現性については「確信に近い手応えを得ている」とのコメントをいただきました。
黒綿土という課題の多い土壌が、建材として新たな価値を持つ可能性が見えてきたことは、ケニアのまちづくりにとって大きな意義を持つ取り組みだと感じています。今後ブロックの開発がさらに進み、地域の環境や暮らしがより豊かになっていくことを願いたいと思います。

黒綿土ブロックワークショップのまとめと展望

黒綿土は建築・土木分野では問題土壌とされていますが、その特性を活かして建材へと転用することを目指す、環境的にも社会的にも意義の大きいプロジェクトが進められています。その初期段階を現地で体験できたことは、非常に貴重な経験となりました。
坂田先生方は、セメントの量を減らし、その土地で入手しやすく環境にも負荷の少ない素材でいかに固めるかを追求していました。これは、その地でつくること、そして使われなくなった後のことを考えるという、真にテリトーリオの持続的な循環を意識した姿勢です。ケニアでも中国的な都市開発が進む中で、この土地の素材で、この土地が持つ問題を解決しながら建材をつくることができたなら、これほど素敵なことはありません。

テリトーリオ的視点との接続の可能性

講義で教えていただいた、土の成分から地球を描くスケールの話までが一体となった坂田先生の思考から、私たちは建築が網羅する分野の広さを改めて考えさせられました。
「黒綿土が建材として活用され、ケニアで新たなサイクルが生まれる可能性」は、現在のケニアの格差社会や建材不足などの社会問題の解決にも繋がるものです。

今回の調査で、私たちは建築の力が社会問題を解決し、テリトーリオそのものをより良く変えていく可能性を肌で感じることができました。

次回は日本のテリトーリオ調査として福井プロジェクトについての記事を掲載する予定です。今回のケニヤプロジェクトを踏まえ、日本とケニヤの違いについて探っていきたいと思います。

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