オーフスはデンマーク第二の都市である。とはいえ、人口はわずか29万人。このオーフスの都心にオーフス川が流れている。このオーフス川、1930年代に増加し始めた自動車交通に対応するために暗渠化をして、その上にオー通りという幹線道路を整備した。その後、月日が経つ。1962年には首都コペンハーゲンの都心部から自動車を排除して、歩行者空間ストロイエをつくったことの成功などを経験し、デンマークの都市は全国的に、都心部は自動車ではなくて歩行者を主人公とした都市づくりをしようというトレンド、というか理念が形成されていく。
そのような流れの中で、1972年にオーフスもオーフス駅と大聖堂広場とをつなぐソンナーガーデが歩行者専用となる。そして、1992年には、オー大通りの路面を取り払って、オーフス川の暗渠を外す地方計画が採択される。さらには、1994年には中心市街地は原則として、歩行者そして自転車のものとする交通計画が策定された。
これまで交通機能や経済性が優先されてきた都心部において、大きな政策的な転換、そして空間的な転換が行われたのである。そして、1996年、オーフス川の一部が開渠化される。それまで、自動車が行き来するだけの道路、店舗は立地していても、歩いて楽しくなるような道路ではなかったのが、いきなりウォーターフロントの落ち着きのあるアメニティの豊かな空間へと変貌したのである。住民達が喜んだことはいうまでもない。
川沿いの土地利用も転換し、レストラン、バー、カフェなどが開店し、多くの市民が集い楽しむ場所へと変化していった。1998年にはさらに開渠化は進み、2014年8月現在、上流区間は暗渠化されていた部分はすべて開渠化、下流の港との繋がる部分はまだ工事中であったが、近いうちに暗渠化されていた部分はすべてまた人々の前に姿を現すであろう。
(参考文献:伊藤香織「Sustainable Site Design 100 Cases」pp.360-361)
035 オーフス川開渠化事業とプロムナード整備(デンマーク王国)
オーフスはデンマーク第二の都市である。とはいえ、人口はわずか29万人。このオーフスの都心にオーフス川が流れている。このオーフス川、1930年代に増加し始めた自動車交通に対応するために暗渠化をして、その上にオー通りという幹線道路を整備した。その後、月日が経つ。1962年には首都コペンハーゲンの都心部から自動車を排除して、歩行者空間ストロイエをつくったことの成功などを経験し、デンマークの都市は全国的に、都心部は自動車ではなくて歩行者を主人公とした都市づくりをしようというトレンド、というか理念が形成されていく。
オーフス川開渠化事業とプロムナード整備の基本情報
- 国/地域
- デンマーク王国
- 州/県
- 中央ユラン地域
- 市町村
- オーフス市
- 事業主体
- オーフス市
- 事業主体の分類
- 自治体
- デザイナー、プランナー
- フローデ・ビルク・ニールセン
- 開業年
- 1996
ストーリー
地図
都市の鍼治療としてのポイント
個人的な意見ではあるが、オーフス市は都市としての魅力がそれほどない印象を受ける。港町ではあるが、あまり個性が感じられない。街並みも凡庸であり、とりたて興味を惹かない。歴史もある都市の筈だが、その歴史をうまく都市空間にてわかりやすく表現するような工夫がなされていないように思われる。アルネ・ヤコブソン設計の市庁舎は人目を惹くが、この都市にふさわしいデザインなのかどうかは疑問を抱かせる。短い滞在でこんな感想を述べるのは失礼千万ではあるが、どこか凡庸な都市という印象を覚えるのは私だけはないだろう。
そのような都市において、オーフス川を開渠化し、さらにはプロムナードを整備したことの効果は絶大なものがあると思われる。それは、まず都心部に人々がそこで時間を過ごしたい、その空間を体験したいという機会を提供することに成功した。それまで、蓋がされていたオーフス川は、自動車がひっきりなしに走っていたのである。自動車が排除され、自動車の代わりに緩やかに流れる川という豊かなアメニティ、さらにはそのアメニティを眺めて楽しめるカフェやレストラン、そして、その賑わいの空間を散策するプロムナードが整備されたのである。オーフスの都市の格が一段も二段もレベルアップしたプロジェクトであるといっても過言ではないだろう。
何より、オーフス川を開渠化したことは、都心部に欠落していたセンス・オブ・プレイスを発露させることになった。それは、個性が弱いオーフスの新たな「顔」となったのである。オーフスの観光ガイドの最初のページに、このオーフス川とプロムナードの写真が載っているが、まさにオーフスという都市が誇るべき都心部の空間、いや都市のアイデンティティを、このプロジェクトは創り出したのである。
このプロジェクトに関して、追記したいのは、この事業がオーフス市役所で働く建築家によって考案され、彼の情熱によって具体化したということである。市役所の職員が、自分が働く都市をよくしたいという思いが、このような都市を大変貌させるプロジェクトを実現させたという事実は、公務員のポテンシャルの高さを改めて認識させる。
このプロジェクトは1996年にデンマーク都市計画賞、1998年に欧州都市地域計画賞を受賞する。都市のアイデンティティを創りだし、都市の将来像でさえ変貌させる可能性をもたらした素晴らしい「都市の鍼治療」事例である。
そのような都市において、オーフス川を開渠化し、さらにはプロムナードを整備したことの効果は絶大なものがあると思われる。それは、まず都心部に人々がそこで時間を過ごしたい、その空間を体験したいという機会を提供することに成功した。それまで、蓋がされていたオーフス川は、自動車がひっきりなしに走っていたのである。自動車が排除され、自動車の代わりに緩やかに流れる川という豊かなアメニティ、さらにはそのアメニティを眺めて楽しめるカフェやレストラン、そして、その賑わいの空間を散策するプロムナードが整備されたのである。オーフスの都市の格が一段も二段もレベルアップしたプロジェクトであるといっても過言ではないだろう。
何より、オーフス川を開渠化したことは、都心部に欠落していたセンス・オブ・プレイスを発露させることになった。それは、個性が弱いオーフスの新たな「顔」となったのである。オーフスの観光ガイドの最初のページに、このオーフス川とプロムナードの写真が載っているが、まさにオーフスという都市が誇るべき都心部の空間、いや都市のアイデンティティを、このプロジェクトは創り出したのである。
このプロジェクトに関して、追記したいのは、この事業がオーフス市役所で働く建築家によって考案され、彼の情熱によって具体化したということである。市役所の職員が、自分が働く都市をよくしたいという思いが、このような都市を大変貌させるプロジェクトを実現させたという事実は、公務員のポテンシャルの高さを改めて認識させる。
このプロジェクトは1996年にデンマーク都市計画賞、1998年に欧州都市地域計画賞を受賞する。都市のアイデンティティを創りだし、都市の将来像でさえ変貌させる可能性をもたらした素晴らしい「都市の鍼治療」事例である。
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