都市の鍼治療

ブラジルの都市クリチバの市長を3期務め、さらにクリチバ市が州都であるパラナ州の知事を2期務めたジャイメ・レルネル氏。クリチバという「いじけた」都市を20年間という短期間にて、世界的に著名な人間都市へと変身させた彼の手法は「都市の鍼療法」と表現されるようなものでした。

 それは、都市が抱える問題を手っ取り早く解決するべき方法論です。多くの課題に直面する都市は、さながら病人のようです。そして、その都市の病を根本的に治すことは難しいですが、効果的に鍼療法のように治すことは可能であるという考えにもとづいた方法論です。

 政治の世界から退いた後、レルネル氏が最初に出版したのが、この彼の方法論をまとめた「都市の鍼治療」という本でした。これは徒然草のような形態をとりつつ、都市をいかにすれば改善できるか、という鍼療法的な39通りの処方箋そして一編の詩から構成されたエッセイのような本でした。私はこの本を2005年に、レルネル氏の朋友でもある中村ひとしさんと一緒に日本語に翻訳して出版するという大変、貴重な機会をいただきました。この本が出版された時から、これらの事例を動画で紹介する企画などがレルネル氏のいるブラジルなどでは企画されてきましたが、なかなか世に出てきません。

 そこで、今回は、僭越ではありますが、レルネル氏の薫陶を身分不相応ではありますが受けることができた私が、国内・海外の「都市の鍼治療」のデータベース化を公益法人ハイライフ研究所のホームページというプラットフォームを活用させていただき、公表させてもらうことにしました。

 二ヶ月に一回の更新頻度で、一回当たり5つの事例をアップしていこうと考えています。このペースだと一年で30回ですが、出来る限り、長く続けて充実したデータベースを構築させてもらえればと考えております。また、特に重要で資するところが大きい事例に関しては動画紹介をすることも計画しております。

 基本的には、レルネル氏の「都市の鍼治療」で紹介された事例などをも含め、レルネル氏がいうところの「都市の鍼治療」的な事例を中心に整理していこうと考えていますが、鍼治療にしてはお金がかかっても、その効果が大きい、つまり費用対効果が大きかった事例に関しても紹介していきたいと思います。

 私は現在でも、レルネル氏、中村ひとし氏とは年に1度はお会いさせていただいております。このデータベースは非公式という形にはなりますが、彼らにご意見をいただき、適宜、必要に応じて修正等を図っていきたいと考えます。

 また、読者の方で、こんな「都市の鍼治療」事例を知っているよ、というお方がいらっしゃったらハイライフ研究所にまでご連絡していただければと存じます。少しでも、我々の都市生活空間が快適で素晴らしいものになるためのプラットフォームとして、このデータベースが活用していただければ幸いです。


取材・構成
服部圭郎 龍谷大学政策学部教授

制作・配信
公益財団法人ハイライフ研究所



『都市の鍼治療―元クリチバ市長の都市再生術』

参考書籍:『都市の鍼治療―元クリチバ市長の都市再生術』

ジャイメ・レルネル 著
中村 ひとし、服部 圭郎 訳
丸善株式会社 2005

都市の鍼治療(はりちりょう)とは?

クリチバのジャイメ・レルネル元市長は、都市が抱える問題を手っ取り早く解決するべき方法論として「都市の鍼治療」を提唱している。多くの課題に直面する都市は、さながら病人のようである。「都市の鍼治療」とは、その都市の病を根本的に治すことは難しいが、効果的に鍼療法のように治すことが可能であるという考え方にもとづいた方法論である。レルネル元市長は、このアイデアを幾つかの事例を通じて「都市の鍼治療(Urban Acupuncture)」という著書で紹介した。
本データベースは、このレルネル元市長の「都市の鍼治療」という考えに則り、内外の「都市の鍼治療」事例を紹介する。

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