カール・ハイネ運河の再生事業

カール・ハイネ運河の再生事業1

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カール・ハイネ運河の再生事業7


キーワード:

アイデンティティ, 環境保全, ウォーターフロント, 河川, ドイツ

鍼レベル:

ストーリー:

 カール・ハイネ運河はライプツィヒの西部に位置するプラグヴィッツ地区にある3300メートルに及ぶ運河である。この区間には15の橋が架けられており、冬以外の季節は、この運河は小さな船で航行することが可能である。
 カール・ハイネ運河は1856年に、ライプツィヒの弁護士で実業家でもあるカール・ハイネ氏によってライプツィヒとハンブルグを結ぶことを構想してつくられた。ハンブルグまでは繋がることはなかったが、白エルスター川とザール川を結ぶ航路は1890年に開通し、その結果、プラグヴィッツ地区には多くの工場が立地することになる。同地区は第二次世界大戦にはあまり被害を受けなかったのだが、旧東ドイツ時代は古い工場群の生産性の悪さから投資をされることはなく、さらに東西ドイツが再統一された後は、同地区の90%の工場は市場経済下の競争にはまったく太刀打ちすることができなかった。
 カール・ハイネ運河は旧東ドイツ時代には下水道として使われ、その環境汚染は凄まじいものがあった。しかし、東西ドイツ統一後は、工業的な利用をするニーズが消失したこともあり、この環境汚染を解決させ、新たに人々が憩えるようなウォーターフロント環境へと再生する計画が策定された。
 まず手がけられたのは、運河沿いに歩道・自転車道を整備したことである。さらに、運河を小舟が航行できるよう船着き場なども整備した。さらには、運河沿いの歴史的建物を改修することにした。建物だけでなく運河に架けられた13の橋はすべて保全され、改修された。さらに1990年以降に2つの新しい橋が架けられた。このようにカール・ハイネ運河の再生が計画された背景には、同運河はプラグヴィッツ地区のアイデンティティを体現する重要なランドマークであると認識されたからである。
 このような再生事業は1993年9月から開始された。ザールフェルダーとルッツナー通りの西側の区間における再自然化は1994年2月に完成、1996年9月には運河沿いの3.2キロメートルに及ぶ歩道・自転車道が完成した。さらに、市議会はこの運河の延長について提案し、2012年7月に市議会は運河をリンデナウ港まで延長することを決定した。リンデナウ港は1938年に建設が始まったが、外部の水系と繋がることがなく、孤立した港という非常に使い道がない施設として放置されてきた。このどことも接続されていないリンデナウ港とカール・ハイネ運河を結ぶことで、リンデナウ港は宿願の水系ネットワークと結ばれることとなったのである。2015年までにこのプロジェクトには1800万ユーロが投入された。そのうちの380万ユーロはライプツィヒ市が負担し、760万ユーロはPlautstraßeの土地の売却額によって、残りはEUなどの補助金によって賄った。
 そして、2015年7月2日にカール・ハイネ運河の改修事業の最終段階でもあるリンデナウ港との接続が完成した。リンデナウ港周辺のランドスケーピングや栽植なども行われ、周辺の環境は見違えるように変わった。
 これを契機としてリンデナウ港周辺を住宅開発をする動きがみられ始めている。これは、カール・ハイネ運河沿いの歩道と結ばれたことと、ランドスケープ等の再生事業が成されたことで、ここが忘れられた工業港からウォーターフロント沿いの良好な生活環境へと変貌できたためである。現時点(2019.03)では400の住戸が建設中であり、さらに新しくレストランやオフィスなどもここにつくられる計画がある。

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

 ライプツィヒ市は絶対数でいえば、東西ドイツが統一した後、最も人口が減少した都市である。しかし、その後、人口が減少しているという事実を真っ正面から受け止め、それに対しての現実的な政策を次々と打ち出したところ、人口の減少が止まり、現在ではドイツの中でも最も人口増加率が高くなっており、見事、人口減少から人口増加へとV字回復に成功した都市である。
 このような成功を導いた要因は幾つかあるが、都市の課題に取り組み、それを「問題」から「資源」へと転換させることを意図したプロジェクトを積極的に展開したことも大きな理由である。この事例では、カール・ハイネ運河という人々が忌避していた汚水まみれの運河を再生させ、ウォーターフロントの魅力的な空間へと転換したことや、リンデナウ港という無用の長物を、カール・ハイネ運河と結ぶことで再生したことなどである。
 ジャイメ・レルネル氏は「問題は解決である(Problem is a solution)」ということを頻繁に言っているが、まさに、ライプツィヒのこの取り組みは「カール・ハイネ運河」と「リンデナウ港」という問題を見事、都市の魅力を向上させるための解決手段として活用した。ドイツの都市計画的な知性を感じさせる素晴らしい都市の鍼治療事例であると考えられる。

【参考資料】ライプツィヒ市役所のホームページ(https://english.leipzig.de/detailansicht-news/news/link-between-karl-heine-canal-and-lindenau-harbour-is-officially-opened/)

事業主体:

ライプチッヒ市

事業主体の分類:

自治体

デザイナー、プランナー:

N/A

開業年:

2015

類似事例:

・ リージェント・カナル、ロンドン(イギリス)

街中がせせらぎ事業、三島市(静岡県)
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・ ストロベリー・クリークの再生事業、バークレー(カリフォルニア州、アメリカ合衆国)
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・ リージェント・カナル再生事業、ロンドン(イギリス)

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国:ドイツ
州・県:ザクセン州
市町村:ライプチッヒ市