針金オペラ座(Ópera de Arame)

針金オペラ座(Ópera de Arame)1

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キーワード:

ブラジル, ランドスケープ, 景観デザイン

鍼レベル:

ストーリー:

 針金オペラ座はブラジルのパラナ州クリチバ市にあるオペラハウスである。クリチバ市の都心から10キロメートルぐらい離れた北側の丘陵地帯にある。そこは、クリチバ市が所有していた石切場の跡地で、以前はダイナマイトを使って採石していた。しかし、市街地が発達してきたため、ダイナマイトが使用できなくなり、放置されたままになった。そして、そこは麻薬の取引がされたり、泥棒の隠れ家として使われたりするような場所になってしまった。また、わき水が出ていたのだが、周辺の住宅地などにも水が漏れるようになっていた。ある意味で、クリチバ市でも最も汚いようなところであった。ここを再生しようとしても崖があるので工場もできないし、住宅もつくれない。放っておくしかない、というようなところであった。
 1992年にブラジル中の劇関係者を集めた全国大会をクリチバ市が開催しなくてはならなくなった。そのような規模のイベントを開催できる劇場は、クリチバ市には花通りの終点のそばにあるガイラ劇場しかなかったのだが、これは州の劇場であった。そして、当時の州知事は市役所と犬猿の仲であったために、市役所のこの行事にガイラ劇場を貸さないと言い出したのだ。しかし、代わりとなる劇場はなかった。そのために、もう市で劇場をつくるしかない、という話になり、その場所を探しているなか、この石切場が候補地として白羽の矢が立ったのである。
 石によって空間が囲まれている、というのはある意味で劇場のようなものである。しかも、湧き水があったので、それによって池をつくることにし、池を渡って劇場にアプローチするというドラマチックな空間を演出できる。ここをガイラ劇場の代替地にすることにクリチバ市は決めた。
 通常の工事では入札の関係でとてもではないがイベントまでにつくることは間に合わない。したがって、入札を3つだけに分類した。モノを買う入札、土台をつくる入札、屋根関係をつくる入札である。その結果、3ヶ月でつくってしまった。オペラ座劇場は周囲の空間を見渡せるように総ガラス張りにしたため、音響効果はお世辞にもいいものではない。収容人数も2400人程度。劇場としては三流。しかし、総ガラス張りにしたことで夜間、このオペラ座に光を灯すと、その光が周囲に洩れて、巨大な電球のような幻想的な景観を創り出すことになった。このような空間の演出によって、このオペラ座はクリチバを代表するランドマークとなった。

ロケーション:


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都市の鍼治療としてのポイント:

 レルネル氏が「都市の鍼治療」として、重要視する考えの一つとしてスピードがある。急いては事をし損じる、と日本では言うが、レルネル氏が訴える「都市の鍼治療」は、急がば急げ。そのような事例は、他にも「花通り」、「パサウナ公園」などが挙げられるが、都市の鍼治療はツボをみつけたら、さっと刺して、さっと引く。ぐずぐずしていたら治せるものも治らなくなってしまう。もちろん、このスピードにこだわる背景として、その時点でやらなければ政治的に出来なくなってしまうという状況があったが、効果的な鍼治療はタイミングも重要なのである。そういう点でも、人の治療と都市の治療とは共通する。
 このオペラ座は「針金オペラ座」とニックネームがつけられていることから分かるように、鉄骨とガラスなどの建設材料からなる即興でつくりあげた安普請の建物だ。音響効果は当然、決してよくない。しかし、このオペラ座の横にある岩壁に打ち付けられている銘板には、ボサノバの父とよばれるアントニオ・カールス・ジョビンの名前やビートルズのメンバーであったポール・マッカートニーの名前が刻まれている。パリのような豪華なオペラ座はクリチバにはない。しかし、カールス・ジョビンによるイパネマの娘やポール・マッカートニーによるイエスタディを聴く機会をクリチバ市民は与えられている。
 「名より実」を優先させてきたクリチバ市の、その政策理念を象徴するかのような「都市の鍼治療」の好例である。

事業主体:

クリチバ市

事業主体の分類:

自治体

デザイナー、プランナー:

Domingos Bongestabs(建築)、中村ひとし(ランドスケープ)

開業年:

1992年

類似事例:

110 バリグイ公園(ブラジル)
069 花通り、クリチバ(ブラジル)
・パサウナ公園、クリチバ(ブラジル)
・植物園、クリチバ(ブラジル)
・オペラ・ハウス、シドニー(オーストラリア)
・ガルニエ宮、パリ(フランス)
・アマゾナス劇場、マナウス(ブラジル)

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国:ブラジル
州・県:パラナ州(Paraná)
市町村:クリチバ市