クリチバのジャイメ・レルネル元市長は、都市が抱える問題を手っ取り早く解決するべき方法論として「都市の鍼治療」を提唱しています。
多くの課題に直面する都市は、さながら病人のようです。そして、都市の鍼治療とは、その都市の病を根本的に治すことは難しいけれども、効果的に「鍼療法のように治す」ことは可能であるという考え方にもとづいた方法論です。
本データベースは、このレルネル元市長の「都市の鍼治療」という考えにのっとり、内外の「都市の鍼治療」事例をシリーズで紹介していきます。
106 国立映画博物館
博物館の収蔵品は200万点以上。インターラクティブな展示が特徴で、映画発明以前の視覚装置やら、映画製作のしくみの展示、ポスターギャラリーなどがある。博物館のコンテンツでも十分、集客が図れるだろうが、モーレ・アントネッリアーナというトリノでも最も目立つランドマークにて開設したことで、その魅力をさらに向上させることに成功した。そして、それが一人の情熱的な女性によって具体化されたところが素晴らしい。
107 御堂筋イルミネーション
大阪の南北の都市軸である御堂筋。この梅田からなんばへと至る全長4キロメートルの街路には年末から年始にかけて、煌びやかなイルミネーションが施される。構想時の理念は、これをイベントで終わらせないで、都市を魅力化させるトリガーとして位置づけるというものであった。単に道路空間だけでなく沿道の建物や寺社、またはランドマーク等もライトアップすることで、御堂筋という回廊全体の夜間景観を見事に演出している。
108 オルヴィエートのスローシティ運動
オルヴィエートは人口が2万人とはとても思えないほど個店が多く存在し、それで生活を回していくことができている。そして、このスローシティの街づくりをすることで、ほとんどお金はいらない。それは、グローバリゼーション下で、自らが置かれた立ち位置の解釈を変えただけのことである。今、オルヴィエートはスローシティとして、安らぎと美味しいワインを求めた観光客を集めるようになっている。
109 オスカー・ニーマイヤー博物館
ここは更地に新しくつくった訳ではない。人々から忘れ去られていたニーマイヤーの建築物をも新たに再生するという意義も有していたのである。計画当時、パラナ州には美術系の博物館がなかった。その中で、クリチバでは唯一のオスカー・ニーマイヤー設計の建物が候補に挙がり、隣接して新たに強烈なランドマークとしての建物を設計してもらえるようオスカー・ニーマイヤー本人に依頼をした。巨大な目玉のような建物は、つくられた瞬間にクリチバのランドマークになるものであった。
110 バリグイ公園
計画当時、市長であったジャイメ・レルネルは、河川沿いの土地を市役所が買い取って公園にしてしまおう、と考えた。しかし、70年代初め頃のブラジルにはいわゆる公園という概念がなかった。公園の概念がない、ということは公園を整備するための予算もないということである。そこで、レルネルは洪水という災害を防止するための緑地整備ということで、連邦政府の防災予算を引き出し、それで土地を獲得して公園を整備し始めた。
取材・構成
服部圭郎 明治学院大学経済学部教授
制作・配信
公益財団法人ハイライフ研究所
■都市の鍼治療 データベース
http://www.hilife.or.jp/cities
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